英語を学んでいると、文法書では教えてくれない微妙なニュアンスの違いに悩むことがありますよね。その典型例が「that」の省略問題です。
「I think (that) she is right.」のように、場合によってはthatを入れても省略しても良いことがありますが、いつ省略できて、いつ省略できないのか、そしてどのようなニュアンスの違いがあるのかを理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。
本記事では、英語初学者の方にもわかりやすく「that」の省略ルールとニュアンスの違いについて徹底解説します。この知識を身につけることで、より自然で流暢な英語表現ができるようになるでしょう。
「that」の基本的な役割と種類

「that」は英語において非常に多機能な単語で、いくつかの異なる役割を持っています。省略のルールを理解するためには、まずその種類を把握する必要があります。
「that」には主に以下の4つの役割があります。
接続詞としての「that」:「~ということ」という意味で、文と文をつなぐ役割
- I know that he is honest.(彼が正直者だということを知っている)
関係代名詞としての「that」:名詞を修飾する節を導入する役割
- The book that I bought is interesting.(私が買った本は面白い)
形容詞としての「that」:「あの、その」という意味
- That car is expensive.(あの車は高価だ)
副詞としての「that」:「それほど、そんなに」という意味
- The movie wasn’t that good.(その映画はそれほど良くなかった)
本記事では主に1と2の用法、つまり接続詞と関係代名詞としての「that」の省略についてフォーカスします。
形容詞や副詞としての「that」は基本的に省略できないため、省略に関する議論の対象外です。
「that」が省略できる場合
「that」には省略できるケースとできないケースがあります。まずは省略できる主なパターンを見ていきましょう。
動詞の後の目的語としての「that」節
最も一般的な「that」の省略パターンは、特定の動詞の後に目的語として「that」節が続く場合です。
特に「ブリッジ動詞(bridge verbs)」と呼ばれる、日常的によく使う思考や発言を表す動詞の後では、「that」を省略することが多いです。
主なブリッジ動詞
- think(思う)
- say(言う)
- know(知っている)
- believe(信じる)
- hear(聞く)
- claim(主張する)
- suppose(~だと思う)
- feel(感じる)
例文
- I think (that) she is right.(彼女は正しいと思う)
- She says (that) she needs more time.(彼女はもっと時間が必要だと言っている)
- I know (that) you’re busy.(あなたが忙しいということを知っている)
- They believe (that) we should start now.(彼らは今始めるべきだと信じている)
これらの動詞の後では、特に会話や非公式な文章では「that」を省略するのが一般的です。省略しても文の意味は変わらず、むしろより自然な英語表現になることが多いです。
関係代名詞としての「that」(目的格の場合)
関係代名詞の「that」が関係節内で目的語の役割を果たしている場合、省略することができます。
例文
- This is the book (that) I bought yesterday.(これは私が昨日買った本です)
- The man (that) you met is my father.(あなたが会った男性は私の父です)
- The movie (that) we watched was interesting.(私たちが見た映画は面白かった)
これらの例では、関係代名詞の「that」は関係節内の動詞(bought, met, watched)の目的語になっています。
このような場合、「that」は省略しても文の明確さが損なわれることはありません。
形容詞の後の「that」
いくつかの一般的な形容詞の後に「that」節が来る場合も、省略が可能です。
例文
- I’m glad (that) you came.(あなたが来てくれて嬉しい)
- It’s funny (that) he said that.(彼がそんなことを言うなんておかしい)
- I’m sure (that) everything will be fine.(すべてうまくいくと確信している)
- I was surprised (that) she won the prize.(彼女が賞を取ったことに驚いた)
これらの表現は口語でよく使われ、通常「that」は省略されることが多いです。
二語接続詞の「that」
一部の二語接続詞に含まれる「that」も、カジュアルな文脈では省略できることがあります。
例文
- Speak clearly so (that) everyone can hear you.(みんなに聞こえるようにはっきりと話してください)
- Now (that) we’re all here, let’s begin.(全員揃ったので、始めましょう)
- Provided (that) you study hard, you’ll pass the exam.(しっかり勉強すれば、試験に合格するでしょう)
「that」が省略できない場合
続いて、「that」を省略できないパターンを見ていきましょう。これらは特に英語初学者にとって重要なポイントです。
主語としての「that」節
「that」節が文の主語として機能している場合、「that」を省略することはできません。
例文
- That he failed the exam surprised everyone.(彼が試験に失敗したことは皆を驚かせた)
- That she quit her job was unexpected.(彼女が仕事を辞めたことは予想外だった)
これらの例では、「That he failed the exam」「That she quit her job」という「that」節全体が文の主語になっています。この場合の「that」は決して省略できません。
ただし、英語ではこのような長い主語は避ける傾向があり、以下のように形式主語「it」を使った構文に書き換えられることが多いです。
例文
- It surprised everyone that he failed the exam.
- It was unexpected that she quit her job.
関係代名詞としての「that」(主格の場合)
関係代名詞の「that」が関係節内で主語として機能している場合も、省略することはできません。
例文
- The person that lives next door is very friendly.(隣に住んでいる人はとても親切だ)
- Cars that break down on highways cause traffic jams.(高速道路で故障する車は渋滞を引き起こす)
- The book that changed my life was written in the 1950s.(私の人生を変えた本は1950年代に書かれた)
これらの例では、「that」を省略すると文の構造が不明確になるため、省略することはできません。
特定の動詞の後の「that」
「ノンブリッジ動詞(non-bridge verbs)」と呼ばれる特定の動詞の後では、「that」を省略すると不自然になります。これらの動詞は、単に「言う」「思う」という意味以上の特別なニュアンスを持つことが多いです。
主なノンブリッジ動詞
- reply(返答する)
- shout(叫ぶ)
- whisper(囁く)
- assert(断言する)
- declare(宣言する)
- contend(主張する)
- estimate(推定する)
- clarify(明確にする)
- propose(提案する)
例文
- She replied that she wasn’t interested.(彼女は興味がないと返答した)
- He shouted that he was coming.(彼は来ると叫んだ)
- The CEO declared that the company would increase wages.(CEOは会社が賃金を上げると宣言した)
これらの動詞の後では「that」を省略すると不自然に聞こえるため、通常省略しません。
名詞の後の「that」
名詞の後に続く「that」節も通常省略できません。
例文
- The fact that he won surprised everyone.(彼が勝ったという事実は皆を驚かせた)
- The news that she got married spread quickly.(彼女が結婚したというニュースはすぐに広まった)
- His claim that he was innocent was not believable.(彼が無実だという主張は信じられなかった)
これらの例では、「that」節が前の名詞(fact, news, claim)を説明しています。この場合の「that」を省略すると文が不明瞭になるため、省略すべきではありません。
時間要素が介在する場合
動詞と「that」節の間に時間を表す要素(yesterday, last week など)がある場合も、「that」を省略すべきではありません。
例文
- The teacher said yesterday that we would have a test.(先生は昨日、テストがあると言った)
- She mentioned last week that she was planning to move.(彼女は先週、引っ越す予定だと言及した)
このような場合、「that」を入れることで文の構造がより明確になります。
「that」の省略によるニュアンスの違い
「that」を省略するかしないかによって、どのようなニュアンスの違いが生まれるのでしょうか?
フォーマル vs カジュアル
一般的に、フォーマルな文書(ビジネス文書、学術論文など)では「that」を省略せず、カジュアルな会話やブログ記事などでは「that」を省略することが多いです。
フォーマルな表現
- I believe that the proposal should be accepted.(その提案は受け入れられるべきだと思います)
- The committee decided that the project would continue.(委員会はそのプロジェクトを継続することを決定した)
カジュアルな表現
- I think you’re right.(あなたは正しいと思う)
- She said she’d be late.(彼女は遅れると言った)
文の流れとリズム
「that」の省略は文の流れやリズムにも影響します。「that」を入れることで文が明確になる一方、省略することで文が簡潔になります。
例えば、「I’m glad that you came.」よりも「I’m glad you came.」の方がリズム的に滑らかに聞こえる場合があります。
逆に、複雑な構造の文では「that」を入れた方が文の構造が明確になり、理解しやすくなることもあります。
文の長さと複雑さ
短くてシンプルな文では「that」を省略することがよくありますが、長くて複雑な文では「that」を入れることで文の構造がより明確になります。
シンプルな文(省略可能)
- I know you can do it.(あなたならできると知っている)
複雑な文(省略しない方が良い)
- I know that despite all the challenges and obstacles you’ve faced in the past few months, you can still achieve your goals if you stay focused and determined.
(過去数か月間にあなたが直面したあらゆる課題や障害にもかかわらず、集中力と決意を持ち続ければあなたは目標を達成できると知っている)
「that」の省略のよくある間違いと注意点
「that」の省略に関して、英語学習者がよく陥りがちな間違いと注意すべきポイントをご紹介します。
曖昧さを避けるために「that」を使う
「that」を省略することで文が曖昧になる場合があります。特に、従属節の主語が動詞の目的語と誤解される可能性がある場合は、「that」を入れる方が良いでしょう。
誤解を招く可能性のある例
- She announced the test scores would be posted tomorrow.
(「the test scores」が「announced」の目的語と一時的に誤解される可能性がある)
より明確な表現
- She announced that the test scores would be posted tomorrow.
(「that」があることで、文構造が明確になる)
必要以上に「that」を使いすぎない
一方で、必要のない場所で「that」を過剰に使うと、文が重くなったり冗長になったりする可能性があります。特に日常会話でよく使われる表現では、「that」を省略した方が自然な場合が多いです。
冗長な例
- I think that you are right that we should start that project now.
より自然な表現
- I think you’re right we should start the project now.
日本語の「~ということ」との関連に注意
日本語では「~ということ」と訳される場合に「that」が対応することが多いですが、英語では必ずしも「that」が必要というわけではありません。
特にブリッジ動詞の後では「that」が省略されることが多いことを覚えておきましょう。
例文
- 彼が来るということを知っています。
→ I know (that) he is coming.(「that」は省略可能) - 彼が来たという事実は驚きでした。
→ The fact that he came was surprising.(この「that」は省略不可)
学術文書やビジネス文書では「that」を省略しない傾向
学術論文やビジネス文書などのフォーマルな文書では、明確さを重視して「that」を省略しない傾向があります。
これは、フォーマルな文書では曖昧さを避け、文の構造を明確にすることが重要だからです。
フォーマルな文書の例
- The researchers concluded that the treatment was effective.(研究者たちはその治療が効果的だと結論づけた)
- The company announced that dividends would increase by 5%.(その会社は配当が5%増加すると発表した)
「that」の省略のパターン一覧表
以下の表は、「that」の省略可能性をまとめたものです。これを参考に「that」を省略するかどうか判断してみてください。
| 「that」のパターン | 省略可能? | 例文 |
|---|---|---|
| ブリッジ動詞の後 | ○ | I think (that) she is right. |
| 関係代名詞(目的格) | ○ | The book (that) I bought is good. |
| 形容詞の後 | ○ | I’m glad (that) you came. |
| 二語接続詞の一部 | ○ | Speak clearly so (that) we can hear you. |
| 主語としての「that」節 | × | That he failed surprised everyone. |
| 関係代名詞(主格) | × | The person that lives next door is friendly. |
| ノンブリッジ動詞の後 | × | She replied that she wasn’t interested. |
| 名詞の後 | × | The fact that he won was surprising. |
| 時間要素が介在する場合 | × | She said yesterday that she would come. |
会話で使える「that」省略の例文集
ここでは、日常会話でよく使われる「that」を省略した表現をいくつか紹介します。これらを覚えておくと、より自然な英会話ができるようになるでしょう。
例文
- I think you’re right.(あなたは正しいと思います)
- She says she’s coming tomorrow.(彼女は明日来ると言っています)
- I know he’s busy.(彼が忙しいのは知っています)
- I hope you understand.(あなたが理解してくれることを願っています)
- I wish I could help you.(あなたを助けられればと思います)
- She believes he’s innocent.(彼女は彼が無実だと信じています)
- I’m glad you enjoyed the party.(あなたがパーティーを楽しんでくれて嬉しいです)
- I’m sure you’ll succeed.(あなたは成功すると確信しています)
- The movie you recommended was great.(あなたがお勧めした映画は素晴らしかった)
- This is the book I was looking for.(これは私が探していた本です)
これらの表現は全て、「that」を省略しても完全に自然な英語です。日常会話では、このように「that」を省略するのが一般的です。
「that」省略のルールを身につけるためのトレーニング法
「that」の省略ルールを実際に身につけるために、以下のトレーニング法を試してみましょう。
シャドーイング法
英語の映画やドラマ、ポッドキャストなどを聞きながら、同時に話者の言葉を真似て発音する練習をします。
この際、特に「that」が省略されている部分に注目してみましょう。
書き換え練習
「that」を含む文を見て、省略可能かどうか判断し、省略できる場合は書き換える練習をします。
例文
- I believe that she is innocent. → I believe she is innocent.
- The car that is parked outside is mine. → (省略不可:関係代名詞が主格のため)
音読練習
「that」を含む文と省略した文の両方を音読し、どちらが自然に聞こえるかを比較します。
これにより、「that」の省略によるリズムの違いを体感できます。
ライティング添削
自分で英文を書き、「that」の使用・省略が適切かどうかを英語のネイティブスピーカーや先生に確認してもらいます。
オンライン添削サービスなども活用すると良いでしょう。
「that」に関するよくある質問
英語学習者からよく寄せられる「that」に関する質問にお答えします。
- 「ブリッジ動詞」と「ノンブリッジ動詞」の違いは何ですか?
-
ブリッジ動詞(bridge verbs)は、思考や発言を表す一般的な動詞で、「that」を省略しても自然な文になるものです。say, think, know, believe, hearなどが典型的な例です。
一方、ノンブリッジ動詞(non-bridge verbs)は、単に「言う」「思う」という意味以上の特別なニュアンスを持つ動詞で、「that」を省略すると不自然になるものです。reply, shout, whisper, assert, declareなどが該当します。
- 関係代名詞の「that」と接続詞の「that」はどう見分けるのですか?
-
関係代名詞の「that」は名詞を修飾する節(形容詞節)を導入し、その節の中で主語または目的語の役割を果たします。
例:The book that I bought(私が買った本)- 「that」は「I bought」の目的語接続詞の「that」は文と文をつなぎ、「~ということ」という意味を持ちます。
例:I know that he is honest(彼が正直だということを知っている)- 「that he is honest」は「know」の目的語見分け方の一つは、関係代名詞の「that」は必ず先行する名詞を修飾するのに対し、接続詞の「that」は通常、動詞や形容詞の後に来るという点です。
- 「that」を省略するとフォーマル度が下がりますか?
-
一般的には、「that」を省略するとカジュアルな印象になり、省略しないとフォーマルな印象になる傾向があります。特にビジネス文書や学術論文などのフォーマルな文脈では「that」を省略しないことが多いです。ただし、これは絶対的なルールではなく、文の全体的なトーンや他の要素も文体のフォーマル度に影響します。
- 「that」の省略は英語圏のどの地域でも同じですか?
-
「that」の省略に関するルールは基本的にはアメリカ英語でもイギリス英語でも同じですが、使用頻度には若干の違いがあります。一般的に、アメリカ英語の方がイギリス英語よりも「that」を省略する傾向があると言われています。ただし、これはあくまで傾向であり、個人差や状況による違いもあります。
- 「that」の省略は文法的に正しいのですか?
-
はい、適切な文脈での「that」の省略は完全に文法的に正しいものです。特に、ブリッジ動詞の後や関係代名詞が目的格の場合など、特定の状況では「that」の省略は一般的であり、むしろ自然な英語表現と言えます。ただし、前述したように省略できないケースもあるので、それぞれのケースに応じた判断が必要です。
まとめ

この記事では、英語の「that」の省略ルールとニュアンスについて詳しく解説しました。「that」の省略は完全に固定されたルールというよりは、いくつかの傾向とパターンがあることが分かりました。
以下が本記事の主なポイントです。
- 「that」は接続詞、関係代名詞、形容詞、副詞など様々な役割で使われる
- ブリッジ動詞(think, say, knowなど)の後の「that」は省略可能
- 関係代名詞の「that」が目的格の場合は省略可能
- 形容詞の後の「that」も多くの場合省略可能
- 主語としての「that」節は省略不可
- 関係代名詞の「that」が主格の場合は省略不可
- ノンブリッジ動詞(reply, shoutなど)の後の「that」は通常省略しない
- 名詞の後の「that」も省略しない傾向がある
- フォーマルな文脈では「that」を省略しないことが多い
- カジュアルな会話では「that」を省略することが多い
適切な場面で「that」を省略することで、より自然で流暢な英語表現が可能になります。逆に、省略すべきでない場面で「that」を省略すると、文が曖昧になったり不自然になったりする可能性があります。
英語学習において、「that」の省略は一見細かいポイントのように思えるかもしれませんが、実際にはネイティブらしい英語を話す上で重要な要素です。
この記事で紹介した原則を参考に、様々な文脈での「that」の使い方を意識してみてください。そうすることで、より自然で豊かな英語表現ができるようになるでしょう。

