「by and large」は英語でよく使われる表現の一つで、日本語では主に「概して」「全般的に見て」「おおむね」「大体において」などと訳されます。シンプルな表現ながら、実は航海に由来する興味深い歴史を持ち、日常会話からビジネスシーンまで幅広く使われる便利なフレーズです。
この記事では「by and large」の基本的な意味から歴史的背景、実際の使い方まで、例文を交えながら詳しく解説していきます。
「by and large」の基本的な意味
「by and large」の基本的な意味は「概して」「全般的に見て」「おおむね」です。何かについて一般的な見解や評価を述べる際によく使われる表現で、特に文の冒頭に置かれることが多いです。
完全に100%そうであるというわけではなく、「細かい例外はあるかもしれないが、全体としては」というニュアンスを含みます。
例文
- By and large, the new online reservation system has been a success.
(概して、新しいオンライン予約システムは成功しています。) - The students were, by and large, satisfied with the curriculum changes.
(学生たちは、概して、カリキュラムの変更に満足していました。) - By and large, living in Tokyo is more expensive than living in other Japanese cities.
(概して、東京での生活は他の日本の都市での生活より高価です。)
「by and large」の語源と歴史
「by and large」という表現は意外にも航海用語に由来しています。17世紀の航海において、「by」は「風に向かって帆走する」(風上に向かって航行する)ことを意味し、「large」は「風を後ろから受けて帆走する」ことを意味していました。
船が「by and large」に優れているというのは、風上に向かっても風下に向かっても上手く操船できる、つまりあらゆる状況でうまく対応できるという意味でした。この船の「全体的な性能」を表す表現が、時間とともに一般化され、現在の「概して」「全般的に見て」という意味に発展しました。
最も古い「by and large」の記録は1669年のSamuel Sturmyの海事に関する著作に見られます。そこでは「Thus you see the ship handled in fair weather and foul, by and learge.」(このように、船は晴天時も荒天時も、あらゆる状況で操船されるのだ)という形で使われています。
「by and large」の文法と使い方
「by and large」は副詞句として機能し、文中での位置は主に以下の3つのパターンがあります。
文頭
最も一般的な使い方で、文の冒頭に置かれ、続く文全体に対して「概して」という意味を与えます。
この場合、通常コンマが後に続きます。
例文
- By and large, the conference was a great success.
(概して、その会議は大成功でした。) - By and large, people are satisfied with the service we provide.
(概して、人々は私たちが提供するサービスに満足しています。)
文中
「by and large」は文の中間に挿入されることもあります。この場合、通常前後にコンマが置かれます。
例文
- The restaurant is, by and large, well-managed.
(そのレストランは、概して、よく管理されています。) - The new policy has, by and large, been welcomed by the employees.
(新しい方針は、概して、従業員に歓迎されています。)
文末
時には文の最後に置かれることもありますが、これは比較的まれです。
例文
- The project was successful by and large.(そのプロジェクトは概して成功していました。)
- We enjoyed our vacation by and large.(私たちは概して休暇を楽しみました。)
「by and large」と共に使われる時制
「by and large」はあらゆる時制と共に使うことができます。
例文(現在形)
- By and large, I enjoy working with this team.
(概して、私はこのチームでの仕事を楽しんでいます。)
例文(過去形)
- By and large, the event went smoothly.
(概して、そのイベントは順調に進みました。)
例文(未来形)
- By and large, the new system will improve efficiency.
(概して、新しいシステムは効率を向上させるでしょう。)
例文(現在完了形)
- By and large, the economy has recovered from the recession.
(概して、経済は不況から回復しています。)
「by and large」を使った様々な表現
「by and large」は様々な状況で使うことができます。
以下にいくつかの典型的な使用例を見てみましょう。
評価や印象を述べる場合
何かの全体的な評価や印象を述べる際によく使われます。
例文
- By and large, the film received positive reviews from critics.
(概して、その映画は批評家から好意的な評価を受けました。) - The new restaurant is, by and large, better than the previous one.
(新しいレストランは、概して、以前のものより良いです。) - By and large, my experience with online shopping has been positive.
(概して、私のオンラインショッピングの経験は良いものでした。)
傾向や一般的な状況を述べる場合
社会的傾向や一般的な状況を述べる際にも使われます。
例文
- By and large, young people prefer digital communication to face-to-face interaction.
(概して、若者は対面での交流よりもデジタルコミュニケーションを好みます。) - The city is, by and large, safe even at night.
(その都市は、概して、夜でも安全です。) - By and large, Japanese students study English for at least six years.
(概して、日本の学生は少なくとも6年間英語を勉強します。)
例外があることを認めつつ一般化する場合
完全に当てはまるわけではないが、全体としてはそうだという場合に使われます。
例文
- By and large, the staff is friendly, although there are one or two who could improve their customer service skills.
(一人か二人は接客スキルを改善できる人もいますが、概して、スタッフは親切です。) - The software works well by and large, with only minor bugs.
(そのソフトウェアは、軽微なバグはあるものの、概して良く機能します。)
「by and large」と類似表現の違い
「by and large」と似た表現はいくつかありますが、それぞれニュアンスや使い方が少し異なります。
「in general」(一般的に)
「in general」も「一般的に」という意味ですが、「by and large」よりも範囲が広く、より普遍的な真実や一般的な事実を述べる際に使われることが多いです。
例文
- By and large, the meeting was productive.
(概して、その会議は生産的でした。)- 特定の会議について - In general, meetings are a good way to share information.
(一般的に、会議は情報を共有するのに良い方法です。)- 会議という概念について一般的に
「generally speaking」(一般的に言えば)
「generally speaking」も「一般論として」という意味ですが、話し手の意見であることがより強調されます。
例文
- By and large, the hotel services were satisfactory.
(概して、ホテルのサービスは満足のいくものでした。)- より客観的な評価 - Generally speaking, I prefer hotels with good breakfast options.
(一般的に言えば、私は良い朝食オプションのあるホテルを好みます。)- より個人的な好み
「for the most part」(大部分において)
「for the most part」は「ほとんどの場合」という意味で、例外がより少ないことを示唆します。
例文
- By and large, the students were attentive.
(概して、学生たちは注意深く聞いていました。)- 全体的な傾向 - For the most part, the students completed their assignments on time.
(ほとんどの場合、学生たちは時間通りに課題を完成させました。)- より高い割合を示唆
「by and large」に関する誤解と注意点
「on accident」との混同
英語では「by and large」が正式な表現ですが、「by large」という間違った表現を使ってしまう人もいます。
これは「on purpose」(わざと)と「by accident」(偶然に)の対比から「on accident」という非公式な表現が生まれたのと似た混同です。
正しい表現
- By and large, the project was a success.
(概して、そのプロジェクトは成功でした)
誤った表現
- By large, the project was a success.(✗)
過度の一般化に注意
「by and large」は例外があることを認めつつも全体的な傾向を述べる表現なので、絶対的な真実を述べる場合には不適切です。
例文(不適切)
- By and large, the sun rises in the east.
(概して、太陽は東から昇ります。)- 「概して」ではなく常に真実なので不適切
例文(適切)
- By and large, Japanese summers are hot and humid.
(概して、日本の夏は暑く湿度が高いです。)- 地域差や年による違いがあるので適切
「by and large」を使った会話例
会話例1:仕事の評価について
例文
- A: 新しいプロジェクトの進捗はどうですか?
(How is the progress on the new project?) - B: By and large, it’s going well. We’ve had some minor setbacks with the timeline, but overall we’re on track.
(概して、順調です。スケジュールに関して若干の遅れはありましたが、全体的には予定通り進んでいます。) - A: それは良かったです。具体的な成果は何かありますか?
(That’s good to hear. Are there any specific achievements?) - B: Yes, the development team has, by and large, completed the core functions ahead of schedule.
(はい、開発チームは概して予定より早く主要機能を完成させています。)
会話例2:旅行の感想について
例文
- A: タイへの旅行はどうでしたか?
(How was your trip to Thailand?) - B: By and large, it was amazing! The food was delicious, and the people were very friendly.
(概して、素晴らしかったです!食べ物はおいしく、人々はとても親切でした。) - A: 問題はありませんでしたか?
(Did you have any problems?) - B: Well, there was one day when it rained heavily, but by and large, the weather was perfect.
(そうですね、一日だけ大雨の日がありましたが、概して、天気は完璧でした。)
まとめ:「by and large」の使い方のポイント

「by and large」は英語で「概して」「全般的に見て」という意味を持つ便利な表現です。
この表現の主なポイントをまとめると、
- 元々は17世紀の航海用語で、風上に向かっても風下に向かっても船が良く操船できることを意味していました。
- 現代では「概して」「全般的に見て」「おおむね」という意味で使われます。
- 文の冒頭、中間、末尾のどこにも置くことができますが、特に文頭での使用が一般的です。
- 「in general」「generally speaking」「for the most part」など類似表現とはわずかにニュアンスが異なります。
- 全体的な傾向や一般的な評価を述べる際に使われ、100%そうであるというわけではないことを示唆します。
「by and large」をマスターすれば、英語での表現の幅が広がります。
日常会話からビジネスシーンまで幅広く活用できる表現なので、ぜひ使ってみてください。