英検の結果を受け取ったとき、成績表にはCEFRレベルやCSEスコアという言葉が記載されていることに気づいたことはありませんか?これらは単なる数値や記号ではなく、あなたの英語力を国際基準で測る重要な指標です。
本記事では、CEFRとCSEスコアの基本概念から各レベルの詳細、そして英検との関連性まで、初学者にもわかりやすく徹底解説します。これらを理解することで、自分の英語力を客観的に把握し、効果的な学習計画を立てることができるようになります。
CEFRとは?外国語能力を測る国際的な基準

CEFRは「Common European Framework of Reference for Languages(ヨーロッパ言語共通参照枠)」の略称で、日本語では一般的に「セファール」または「シーイーエフアール」と読みます。これは外国語の習熟度を評価するための国際的な指標であり、2001年に欧州評議会によって正式に発表されました。
CEFRの最大の特徴は、「その言語を使って具体的に何ができるか」という観点から言語能力を評価する点にあります。単なる文法知識や語彙の量ではなく、実際のコミュニケーション能力に焦点を当てた実用的な指標となっています。また、CEFRは英語だけでなく40以上の言語に適用できる共通の基準となっており、日本語や中国語、ドイツ語などの習熟度評価にも使われています。
日本では2004年にCEFRの日本語版が導入され、2018年には補遺版が発表されました。現在では大学入試や企業の採用、海外留学など様々な場面で活用されており、国際的に通用する語学力の指標としてその重要性が高まっています。
CEFRの歴史と背景
CEFRは単なる言語テストの基準ではなく、欧州における多言語・多文化共生の理念から生まれました。欧州評議会は、ヨーロッパ内の言語教育の質を高め、異なる言語を学ぶ人々の間で共通の基準を設けることで、言語学習の促進と相互理解を深めることを目指しました。
開発は1990年代に始まり、約10年の研究と検証を経て、2001年に正式版が発表されました。当初はヨーロッパ圏内での活用が中心でしたが、その実用性と客観性が評価され、アジアや北米など世界各国に広がっていきました。
現在では、単なる語学力の評価基準としてだけでなく、言語教育のカリキュラム設計や教材開発、そして自己学習の指針としても活用されています。その背景には、グローバル化する社会において、国や地域を超えた共通の言語能力指標の必要性があったと言えるでしょう。
CEFRの6段階レベル区分
CEFRでは、言語能力を「A1」「A2」「B1」「B2」「C1」「C2」の6段階に分類しています。これらは大きく3つのカテゴリーに分けられます。
- 基礎段階の言語使用者(Basic User):A1、A2
- 自立した言語使用者(Independent User):B1、B2
- 熟達した言語使用者(Proficient User):C1、C2
各レベルの概要は以下の通りです。
- A1:日常的な基本的な挨拶や自己紹介ができる初級レベル
- A2:日常生活の簡単なコミュニケーションができる初中級レベル
- B1:日常的な話題について会話ができる中級レベル
- B2:幅広い話題について流暢に会話ができる中上級レベル
- C1:複雑な内容を理解し詳細に表現できる上級レベル
- C2:ネイティブに近い最上級レベル
この6段階区分により、学習者は自分の現在の言語レベルと目標を明確に把握し、効果的な学習計画を立てることができます。
CSEスコアとは?英検で採用されている評価システム
CSEスコアは「Common Scale for English(英語共通スケール)」の略で、日本英語検定協会が2016年度から導入した英語力を測るための統一的な評価指標です。これは英検(実用英語技能検定)の各級において、受験者の英語力をより詳細かつ客観的に評価するために使われています。
従来、英検では各級に合格か不合格かという二元的な判定しかありませんでしたが、CSEスコアの導入により、「どの程度合格したのか」「不合格でも合格ラインにどれだけ近かったのか」を数値で知ることができるようになりました。また、技能別(リーディング、リスニング、ライティング、スピーキング)のスコアも表示されるため、自分の強みや弱みを具体的に把握することが可能になりました。
さらに重要なのは、CSEスコアがCEFRに対応していることです。これにより、英検の結果から国際的な英語力の指標であるCEFRレベルを知ることができ、世界基準で自分の英語力を理解することができるようになりました。
CSEスコアの仕組みと特徴
CSEスコアには3つの主要な特長があります。
- 今の英語力や伸長度がひと目でわかる:技能別にスコア化されるため、自分の強みや弱み、学習の重点を置くべき分野を客観的に把握できます。
- 合格までの距離がわかる:点数評価のため、合格ラインにどれだけ近いか(または遠いか)を具体的に知ることができ、次の目標設定が容易になります。
- 自分の実力が世界基準でわかる:CEFR対応のため、国際的な英語力の基準で自分のレベルを理解でき、他の英語資格との比較も可能です。
CSEスコアは各級の合否判定にも使用されており、各級には合格基準スコアが設定されています。このスコアを上回れば合格、下回れば不合格と判定されます。
また、英検の成績表には「英検バンド」も表示されます。これは合格基準スコアを基準に、自分のスコアがどの位置にあるかを25点刻みで視覚的に表したものです。
例えば「G2 +3」という表示は、2級の合格基準から3バンド上の位置にいることを示しています。
CSEスコアと英検級の関係
英検の各級には、それぞれCSEスコアの満点と合格基準スコアが設定されています。以下が各級のCSEスコア満点と合格基準スコアです。
級 | 満点 | 合格基準スコア |
---|---|---|
1級 | 3400点 | 2630点 |
準1級 | 3000点 | 2304点 |
2級 | 2600点 | 1980点 |
準2級プラス | 2400点 | 1402点 |
準2級 | 2400点 | 1728点 |
3級 | 2200点 | 1456点 |
4級 | 1000点 | 622点 |
5級 | 850点 | 419点 |
注意すべき点として、1級〜3級は4技能(リーディング、リスニング、ライティング、スピーキング)を測定しますが、4級と5級はリーディングとリスニングの2技能のみが測定されます。さらに4級・5級ではスピーキングテストがオプションとなっています。
各級の合格基準スコアはほぼ満点の6〜7割程度に設定されており、英検協会によると1級と準1級は各技能での正答率が7割程度、2級以下は6割程度の正答率で合格するとされています。
CEFRレベルの詳細解説:A1からC2まで
CEFRの6段階のレベルは、言語を使って何ができるかという観点から定義されています。単なる言語知識だけでなく、実際のコミュニケーション能力に重点を置いているのがCEFRの大きな特徴です。
ここでは各レベルについて、「何ができるか」という観点から詳しく解説します。
A1レベル:基礎的な言語使用者(初級)
A1は最も基礎的なレベルで、「生存レベル」とも呼ばれています。このレベルでは、日常生活で頻繁に使われる基本的な表現や簡単なフレーズを理解し、使うことができます。
A1レベルでできることの例
- 自分の名前や住所、国籍などの基本的な個人情報を伝えることができる
- 簡単な挨拶や自己紹介ができる
- ゆっくり明瞭に話してもらえれば、簡単な質問に答えることができる
- 数字や日付、価格などの基本的な情報を理解できる
- 「トイレはどこですか」「お水をください」など、基本的な要求を伝えられる
このレベルの英語学習者は、約500〜600語程度の基礎的な語彙と、現在形や簡単な過去形などの基本的な文法構造を理解しています。
英検で言えば、おおよそ3級レベルに相当します。英検CSEスコアでは、1400〜1699点の範囲がA1レベルとされています。
A2レベル:基礎的な言語使用者(初中級)
A2レベルは、A1の次の段階で、「初歩レベル」とも呼ばれています。このレベルでは、日常的によく使われる表現や文を理解し、身近な話題について簡単なやりとりができるようになります。
A2レベルでできることの例
- 自分自身や家族、趣味、仕事などについて簡単に説明できる
- 買い物や外食など、日常的な場面で必要な情報をやりとりできる
- 短い社交的なやりとりを行うことができる
- 予定や計画について簡単に話すことができる
- 簡単な指示を理解し、道案内などの基本的な情報を伝えられる
このレベルの学習者は、約1,000〜1,500語程度の語彙と、現在形、過去形、未来形などの基本的な時制や、比較級・最上級などのより幅広い文法構造を理解しています。
英検で言えば、おおよそ準2級レベルに相当します。英検CSEスコアでは、1700〜1949点の範囲がA2レベルとされています。
B1レベル:自立した言語使用者(中級)
B1レベルからは「自立した言語使用者」のカテゴリーに入ります。このレベルでは、仕事、学校、余暇など、身近な話題について理解し、自分の意見や計画を説明できるようになります。
B1レベルでできることの例
- 旅行中の多くの状況に対処することができる
- 身近な話題について、準備なしで会話に参加できる
- 経験、出来事、夢、希望、目標について説明できる
- 意見や計画の理由や説明を簡潔に述べることができる
- 物語を語ったり、本や映画のあらすじを述べたりできる
このレベルの学習者は、約2,000〜2,500語程度の語彙と、より複雑な文法構造(現在完了形、仮定法など)を理解し、使うことができます。
英検で言えば、おおよそ2級レベルに相当します。英検CSEスコアでは、1950〜2299点の範囲がB1レベルとされています。
B2レベル:自立した言語使用者(中上級)
B2レベルは、より高度な「自立した言語使用者」のレベルです。このレベルでは、自分の専門分野における技術的な議論を含め、複雑な文章の主要な内容を理解し、流暢かつ自然に会話ができるようになります。
B2レベルでできることの例
- 自分の専門分野の技術的な議論を理解し、参加できる
- 時事問題について自分の視点を明確に表現できる
- 様々な話題について詳細な情報を提供できる
- 母語話者と普通に会話ができ、お互いにストレスを感じることなくやりとりできる
- 自分の意見の長所と短所を説明しながら、議論に貢献できる
このレベルの学習者は、約3,500〜4,000語程度の語彙と、複雑な文法構造を理解し、正確に使うことができます。
英検で言えば、おおよそ準1級レベルに相当します。英検CSEスコアでは、2300〜2599点の範囲がB2レベルとされています。
C1レベル:熟達した言語使用者(上級)
C1レベルからは「熟達した言語使用者」のカテゴリーに入ります。このレベルでは、複雑な文章を理解し、社会的、学問的、職業的な目的に応じて、流暢かつ自然に自己表現ができるようになります。
C1レベルでできることの例
- 長くて複雑な文章を理解し、隠れた意味も把握できる
- 複雑な話題について明確で構成の整った文章を作成できる
- 言葉を探しているという印象を与えずに、流暢に自己表現できる
- 社会生活、学問、職業上の目的で柔軟かつ効果的に言葉を使える
- 複雑な情報や意見を自信を持って提示し、議論できる
このレベルの学習者は、約6,000〜8,000語程度の豊富な語彙と、複雑で高度な文法構造を習得しています。
英検で言えば、おおよそ1級レベルに相当します。英検CSEスコアでは、2600〜3299点の範囲がC1レベルとされています。
C2レベル:熟達した言語使用者(最上級)
C2は最高レベルで、「完全なマスター」または「ネイティブに近いレベル」とも呼ばれています。
このレベルでは、読んだり聞いたりしたほぼすべてのものを容易に理解し、異なるソースからの情報を要約し、一貫した形で再構成することができます。
C2レベルでできることの例
- 非常に複雑な文章でも、細かいニュアンスまで理解できる
- 抽象的で複雑な話題についても、明確かつ流暢に表現できる
- 自然で、社会的、学問的、職業的に適切な言語を使い分けられる
- 複雑な話題について、聞き手が重要な点を認識できるよう、柔軟に発言を構成できる
- 微妙なニュアンスを伝えるために、広範なイディオムや口語表現を適切に使える
このレベルの学習者は、約10,000語以上の非常に豊富な語彙と、あらゆる文法構造を習得しています。
現在、英検ではC2レベルに相当する級は設定されていません。英検1級はC1レベルに相当し、C2は英検1級よりもさらに高度な英語力とされています。
英検とCEFRの対応関係
英検(実用英語技能検定)とCEFRのレベルは密接に対応しています。英検の各級は、CEFRの6段階のレベルに対応づけられており、英検を受験することで、世界基準の英語力であるCEFRレベルを知ることができます。
この対応関係は、受験者にとって大きなメリットとなります。例えば、海外留学や就職活動などで英語力を証明する必要がある場合、「英検2級合格」という日本国内での資格を、国際的に通用する「CEFRのB1レベル相当」として示すことができます。
英検では2016年度からCSEスコアを導入し、さらに2020年度からは合格証明書などの証明書類にCEFRレベルを記載するようになりました。さらに2022年度からは、1級〜3級の成績表に技能別CEFRレベルも表示されるようになり、より詳細に自分の英語力を把握できるようになりました。
英検1級から5級までのCEFRレベル
英検の各級は、CEFRの特定のレベルに対応しています。以下が、その対応関係です。
英検 | CEFRレベル | 英検CSEスコア範囲 |
---|---|---|
1級 | C1 | 2600〜3299点 |
準1級 | B2 | 2300〜2599点 |
2級 | B1 | 1950〜2299点 |
準2級 | A2 | 1700〜1949点 |
3級 | A1 | 1400〜1699点 |
4級・5級 | A1未満 | CEFRレベル設定なし |
ただし、これらの対応関係は厳密な一対一の関係ではなく、ある程度の重なりがあります。例えば、英検2級の上位合格者は準1級の下位合格者と同等のB2レベルと判定されることもあります。
また、英検CSEスコアを基にCEFRレベルを算出する際には、いくつかの条件があります。
- 受験級ごとにCEFR算出範囲が定められており、この範囲内のスコアでないとCEFRは算出されません。
- CEFR算出範囲を下回った場合は、CEFRレベルは表示されません。
- CEFR算出範囲を上回った場合は、各級の上限CEFRで判定されます。
- CEFRを算出できるのは3級以上で、4級と5級はCEFR算出範囲外です。
- 英検で算出できるCEFRはC1までで、C2の判定はできません。
各級の特徴とできること
英検の各級とCEFRレベルに応じて、英語でできることは異なります。ここでは、各級・レベルでできることの具体例を紹介します。
英検1級(C1レベル)でできること
- 複雑な学術的または専門的な文章を理解できる
- 社会的、学問的、職業的な場面で、流暢かつ自然に自己表現ができる
- 複雑な話題についても、明確で構成の整った文章を作成できる
- 高度な議論や討論に積極的に参加し、自分の意見を説得力をもって述べられる
- ビジネスや学術の場面で、専門的な内容についても適切にコミュニケーションできる
英検準1級(B2レベル)でできること
- 自分の専門分野の技術的な議論を含め、複雑な文章の主要な内容を理解できる
- 母語話者と自然な対話ができる
- 幅広い話題について明確で詳細な表現ができる
- ある程度専門的な内容でも理解し、意見を述べることができる
- 留学や海外でのビジネスなど、実践的な場面で英語を活用できる
英検2級(B1レベル)でできること
- 仕事、学校、余暇などの身近な話題について理解できる
- 旅行中に遭遇する可能性のある多くの状況に対処できる
- 自分の興味のある話題について、シンプルな方法で意見を述べられる
- 経験、夢、希望、目標について説明し、計画や考えの根拠を短く述べられる
- 日常的な英語によるコミュニケーションを比較的スムーズに行える
英検準2級(A2レベル)でできること
- 日常的な事柄について、直接的な情報交換を必要とする簡単なやりとりができる
- 自分の背景や身の回りの状況、直接的な環境について基本的なことを伝えられる
- 買い物や道案内など、基本的な状況でコミュニケーションを取ることができる
- 過去の活動や個人的な経験を簡単に描写できる
- 簡単な英語で書かれた文章や通知、広告などを理解できる
英検3級(A1レベル)でできること
- 基本的な挨拶や自己紹介ができる
- 自分や他人についての簡単な質問に答えることができる
- 日常的な状況で使われる基本的な表現を理解し、使うことができる
- 場所や時間など、具体的でシンプルな情報を伝えられる
- 単純な指示を理解し、フォームに基本情報を記入できる
英検4級・5級(A1未満)でできること
- 非常に基本的な英語表現を理解できる
- 簡単な挨拶や自己紹介の一部を行うことができる
- アルファベットや数字、色、形などの基本的な語彙を理解できる
- 単純な絵や図と英語の単語を結びつけることができる
- ごく簡単な英語の歌やチャンツを理解し、真似することができる
CSEスコアの活用方法
英検CSEスコアは、単に合否を判定するだけのものではありません。このスコアを効果的に活用することで、より戦略的かつ効率的に英語学習を進めることができます。
CSEスコアの最大の利点は、合否だけでなく「どの程度」の英語力があるかを客観的に示してくれることです。これにより、自分の現在の英語力を正確に把握し、弱点を特定して効果的な学習計画を立てることができます。また、時間をかけて学習を続けた際の成長度合いを数値で確認できるため、モチベーション維持にも役立ちます。
さらに、CSEスコアはCEFRに対応しているため、国際的な基準で自分の英語力を理解することができ、海外の教育機関への留学や就職活動などにも活用できます。
英語学習の目標設定に役立てる
CSEスコアを活用した効果的な目標設定は、英語学習を成功させるための重要な要素です。具体的には、以下のような目標設定の方法があります。
- 短期目標と長期目標の設定: 現在のCSEスコアを基準に、次の試験では各技能で何点アップを目指すかという短期目標と、最終的に達成したい級やCEFRレベルという長期目標を設定します。
- 技能別の目標設定: CSEスコアは技能ごとに表示されるため、自分の弱い技能(例:スピーキングのスコアが低い)を特定し、その技能に特化した目標を設定できます。
- 段階的な目標設定: 例えば、現在英検3級(A1)であれば、まずは準2級(A2)を目指し、その後2級(B1)というように、段階的に目標を設定することができます。
- 数値化された目標設定: 「英語力を上げる」という曖昧な目標ではなく、「次回の英検で総合CSEスコアを100点アップさせる」という具体的な数値目標を設定することで、達成度を明確に評価できます。
- CEFRレベルに基づく目標設定: 「B1レベルに到達する」という目標を設定することで、国際的な基準に沿った英語力向上を目指すことができます。
これらの目標設定方法を組み合わせることで、自分にとって最適な学習計画を立てることができます。
例えば、「6ヶ月後に英検2級を受験し、リスニングのCSEスコアを現在より50点アップさせて、総合でB1レベルに到達する」というように、具体的で測定可能な目標を設定することが効果的です。
弱点分析と学習計画への応用
CSEスコアを活用した弱点分析と学習計画の立て方について、ステップバイステップで説明します。
まず、英検の成績表に記載されている技能別のCSEスコア(リーディング、リスニング、ライティング、スピーキング)を確認します。どの技能のスコアが低いか、あるいは合格基準に対してどの技能が足りていないかを特定します。
技能別スコアから弱点を特定したら、さらに具体的にどのような問題や場面で苦手意識があるかを分析します。例えば、リーディングが弱い場合、長文読解、語彙力、速読のどの部分に問題があるのかを特定します。
特定した弱点の中から、最も改善が必要なものや、改善することで全体的なスコアアップに最も貢献しそうなものを優先的に取り組むべき項目として設定します。
優先順位に基づいて、具体的な学習計画を立てます。例えば、
- リスニングが弱い場合:毎日15分間、英語のポッドキャストを聴く
- 語彙力が不足している場合:毎日10個の新出単語を学習する
- スピーキングが苦手な場合:週に2回、オンライン英会話レッスンを受ける
定期的に模擬試験やミニテストを行い、弱点の改善状況を確認します。必要に応じて学習計画を調整し、より効果的な方法を取り入れます。
「弱点分析→学習計画立案→学習実行→進捗確認→計画調整」というサイクルを繰り返すことで、継続的な英語力の向上を図ります。
この方法により、「闇雲に英語を勉強する」のではなく、「自分に必要な英語力を効率的に身につける」ための戦略的な学習が可能になります。
CEFRと他の英語試験の対応関係
CEFRは国際的な言語能力の評価基準として、英検だけでなく多くの英語試験と対応関係があります。これらの対応関係を理解することで、自分の英語力を様々な試験の基準で把握することができ、目的に応じた試験選択や学習計画の立案に役立ちます。
CEFRと他の試験の対応関係は、完全に一致するものではなく、あくまで目安として理解することが重要です。同じCEFRレベルに対応する他試験のスコアでも、測定方法や重視する技能が異なるため、若干の差異があります。
TOEIC、TOEFL、IELTSとの比較
以下の表は、CEFR、英検、TOEIC、TOEFL iBT、IELTSの対応関係を示したものです。
CEFR | 英検 | TOEIC (L&R) | TOEFL iBT | IELTS |
---|---|---|---|---|
C2 | – | – | 102-120 | 8.5-9.0 |
C1 | 1級 | 945-990 | 95-101 | 7.0-8.0 |
B2 | 準1級 | 785-944 | 72-94 | 5.5-6.5 |
B1 | 2級 | 550-784 | 42-71 | 4.0-5.0 |
A2 | 準2級 | 225-549 | – | – |
A1 | 3級 | 120-224 | – | – |
注意点として、TOEICのスコアからCEFRへの換算は「TOEIC L&R」と「TOEIC S&W」の両方のスコアを考慮する必要があります。「TOEIC S&W」のスコアは2.5倍して計算し、「TOEIC L&R」のスコアと合算した値でCEFRレベルを判断します。つまり、4技能総合的な習得状況で評価されるため、「TOEIC L&R」だけのスコアでCEFRレベルを正確に判断することはできません。
また、IELTSやTOEFL iBTでは、CEFRのA1やA2レベルに相当するスコア設定がないことも特徴です。これらのテストは主に大学留学などを目的とした中級以上の英語力を測定するためのものだからです。
各試験の特徴を簡単に比較すると、
- TOEIC: ビジネス英語に焦点を当てており、主にリスニングとリーディングを測定します(L&R)。スピーキングとライティング(S&W)は別のテストとして実施されています。
- TOEFL iBT: 主に北米の大学への留学を目的とした学術英語に焦点を当てており、4技能を総合的に測定します。
- IELTS: 主にイギリス、オーストラリア、カナダなどの大学への留学や移民を目的とした試験で、4技能を総合的に測定します。
- 英検: 日本の教育環境に合わせた試験で、実用的な英語力を4技能で測定します。級別に異なる試験が用意されている点が特徴です。
大学入試やビジネスでの活用
CEFRレベルや英検CSEスコアは、大学入試やビジネスシーンでも積極的に活用されています。ここでは、その具体的な活用例を見ていきましょう。
大学入試での活用
- 入試優遇措置: 多くの大学では、英検やTOEICなどの外部英語試験のスコアに応じて、英語科目の試験を免除したり、加点したりする制度を設けています。例えば、「英検準1級(B2レベル)以上を取得していれば英語の試験を満点とする」といった優遇措置があります。
- 出願資格: 特に国際系や英語系の学部・学科では、一定のCEFRレベル(例:B2以上)を出願資格として設定しているケースがあります。
- 英語力の証明: 推薦入試やAO入試では、英検やTOEICのスコアを英語力の証明として提出することで、自己PRの材料となります。
- 学部・学科の選択: 自分のCEFRレベルに基づいて、どの学部・学科なら英語力的に対応できるかを判断する材料になります。
ビジネスでの活用
- 採用基準: 多くの企業、特にグローバル企業や外資系企業では、採用時に一定のCEFRレベルを要求することがあります。例えば、「営業職はB1以上、海外営業職はB2以上」といった基準設定です。
- 昇進・異動の条件: 社内でのキャリアアップや海外部門への異動の条件として、一定のCEFRレベルが設定されていることがあります。
- 自己啓発目標: 社員の自己啓発目標として、「1年以内にCEFRレベルをA2からB1にアップする」といった具体的な目標設定に活用されます。
- 語学研修の効果測定: 企業内の語学研修プログラムの効果を測定するために、研修前後でのCEFRレベルの変化を確認することがあります。
- 国際プロジェクトのアサイン: 国際的なプロジェクトにメンバーをアサインする際、必要な英語力をCEFRレベルで設定し、適切な人材を選定することがあります。
このように、CEFRレベルや英検CSEスコアは、学術的な場面だけでなく、実際のビジネスシーンでも幅広く活用されています。
自分のキャリア目標や進学目標に応じて、どのレベルを目指すべきかを検討することが重要です。
CEFRのよくある間違いと注意点
CEFRは国際的に広く使われている言語能力の評価基準ですが、その理解や活用には誤解や注意すべき点がいくつかあります。ここでは、CEFRに関するよくある間違いと注意点を解説し、より正確にCEFRを理解するための情報を提供します。
まず、CEFRはあくまで言語能力の「共通参照枠」であり、言語テストそのものではないことを理解することが重要です。CEFRは様々な言語テストの結果を比較したり、言語学習の目標を設定したりするための共通の基準として機能します。
また、CEFRの各レベルは厳密に区切られた段階ではなく、連続的なスケール上の目安と考えるべきです。例えば、B1からB2への移行は段階的に起こるものであり、明確な境界線があるわけではありません。
よくある誤解1:CEFRは「セファー」と読む
CEFRは一般的に「セファール」または「シーイーエフアール」と読みます。「セファー」という読み方は一般的ではありません。
ただし、日本では「セファール」という読み方が広く普及しています。
よくある誤解2:CEFRのレベルはテストのスコアと常に一致する
CEFRレベルとテストスコアの対応は、あくまで目安です。例えば、英検2級に合格したからといって、必ずしもすべての技能がB1レベルに達しているとは限りません。技能によって差があることも多いです。
英検では2022年度から技能別CEFRレベルも表示されるようになり、より詳細に自分の技能別レベルを確認できるようになりました。
よくある誤解3:高いCEFRレベルは必ずしも必要ない
必要なCEFRレベルは目的によって異なります。例えば、海外旅行程度であればA2レベルでも十分かもしれませんし、日常的な国際業務ならB1〜B2レベルが目安となります。C1やC2レベルは、アカデミックな研究や専門的な翻訳・通訳などの高度な英語力が必要な場面で求められるレベルです。
自分の目標に合わせて適切なレベルを目指すことが重要です。
よくある誤解4:CEFRは英語だけのための基準である
CEFRは英語に限らず、様々な言語の能力評価に使用できる共通の基準です。
フランス語、ドイツ語、中国語など、40以上の言語でCEFR準拠の評価システムが開発されています。
注意点1:技能によってレベルが異なることを理解する
多くの学習者は、リーディングやリスニングなどの受容的技能と、スピーキングやライティングなどの産出的技能で、レベルに差があることがあります。例えば、リーディングはB2レベルでも、スピーキングはB1レベルという場合も珍しくありません。
全体的なレベルと同時に、技能別のレベルも把握することが重要です。
注意点2:CEFRレベルは一度達成すれば永続的に維持されるものではない
言語能力は使わないと衰えるため、一度C1レベルに達したとしても、継続的に使用しなければ時間の経過とともにレベルが下がる可能性があります。
継続的な学習と使用が重要です。
注意点3:CEFRの「できること」リストは網羅的ではない
CEFRの各レベルには「できること」の例示がありますが、これらは代表的な例にすぎず、すべての言語活動を網羅しているわけではありません。実際の言語使用の文脈は多様であり、CEFRの記述だけでは捉えきれない側面もあります。
これらの誤解や注意点を理解した上で、CEFRを自分の言語学習に活用することが効果的です。特に、自分の現在のレベルと目標とするレベルのギャップを客観的に把握し、そのギャップを埋めるための具体的な学習計画を立てることが重要です。
「CEFRとCSEスコア」に関するよくある質問
CEFRとCSEスコアについて、学習者からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。これらの疑問を解消することで、より効果的に英語学習を進めることができるでしょう。
- CEFRのレベルはどのように判定されるのですか?
-
CEFRのレベルは、英検の場合、CSEスコアに基づいて判定されます。各CEFRレベルには、対応するCSEスコアの範囲が設定されており、その範囲内のスコアを獲得した場合に該当するCEFRレベルと判定されます。英検では、一次試験と二次試験の両方に合格した場合にのみ、正式なCEFRレベルが認定されます。
- 英検2級に合格しましたが、CEFRレベルはB1未満でした。なぜですか?
-
英検の級に合格しても、CSEスコアがCEFR算出範囲を下回る場合は、該当するCEFRレベルと判定されないことがあります。例えば、英検2級の合格基準CSEスコアは1980点ですが、B1レベルの算出には最低1950点が必要です。つまり、1950点未満で英検2級に合格した場合、CEFRレベルはB1未満と判定されることになります。
- 技能別CEFRレベルと総合CEFRレベルは違うことがありますか?
-
はい、違うことがあります。技能別CEFRレベルは、リーディング、リスニング、ライティング、スピーキングの各技能ごとに判定されるものです。一方、総合CEFRレベルは、4技能全体のCSEスコアに基づいて判定されます。例えば、リーディングとリスニングはB1レベルでも、ライティングとスピーキングがA2レベルの場合、総合CEFRレベルはA2と判定されることがあります。
- CEFRのC2レベルはどうすれば判定されますか?
-
現在、英検ではC2レベルの判定は行っていません。英検で取得できる最高のCEFRレベルはC1(英検1級相当)です。C2レベルの判定を受けたい場合は、IELTS(8.5〜9.0)やTOEFL iBT(102〜120)など、他の英語試験を受験する必要があります。
- CSEスコアは過去の試験結果と比較できますか?
-
はい、CSEスコアは共通のスケールで表示されるため、過去に受験した試験結果と比較することができます。例えば、半年前に英検準2級を受験した時のCSEスコアと、最近受験した英検2級のCSEスコアを比較することで、英語力の伸びを客観的に把握することができます。
- 英検の不合格でもCSEスコアは取得できますか?
-
はい、英検に不合格でもCSEスコアは取得できます。合否に関わらず、成績表にはCSEスコアが表示されます。不合格でもCSEスコアを確認することで、合格基準までどれくらい足りなかったのかを具体的に把握し、次回の対策に活かすことができます。
- CSEスコアはどのように計算されるのですか?
-
CSEスコアは、各技能(リーディング、リスニング、ライティング、スピーキング)の正答数や評価を基に算出されます。ただし、単純に正答数とスコアが比例するわけではなく、問題の難易度や識別力などを考慮した統計処理が行われています。そのため、同じ正答数でも、試験の回によってCSEスコアが異なることがあります。
- 英検以外の試験でもCEFRレベルは判定されますか?
-
はい、TOEIC、TOEFL iBT、IELTSなど多くの英語試験でもCEFRレベルの対応表が公表されています。ただし、試験によって測定する技能や出題形式が異なるため、同じCEFRレベルでも試験間で完全に一致するわけではない点に注意が必要です。
まとめ

本記事では、英検のCEFRレベルとCSEスコアについて詳しく解説してきました。CEFRは外国語の能力を測る国際的な基準であり、CSEスコアは英検で採用されている評価システムです。これらを理解し活用することで、より効果的に英語学習を進めることができます。
CEFRは「A1」から「C2」までの6段階で言語能力を評価し、英検のCSEスコアはこれらのレベルと対応関係にあります。CSEスコアを通じて自分の英語力を客観的に把握することで、弱点分析や目標設定が容易になり、より効率的な学習が可能になります。
ここで、本記事のポイントをまとめます。
- CEFRは「Common European Framework of Reference for Languages」の略で、外国語能力を測る国際的な基準
- CSEスコアは「Common Scale for English」の略で、英検で使用される評価指標
- CEFRレベルは「A1」から「C2」までの6段階で構成され、それぞれ具体的な言語能力を示す
- 英検の各級はCEFRの特定レベルに対応している(例:2級はB1レベル、準1級はB2レベル、1級はC1レベル)
- CSEスコアは技能別(リーディング、リスニング、ライティング、スピーキング)に表示され、強みと弱みを把握できる
- 英検の成績表にはCSEスコアとCEFRレベルが表示され、世界基準で自分の英語力を知ることができる
- CSEスコアを活用することで、効果的な学習計画の立案や目標設定が可能になる
- CEFRレベルは他の英語試験(TOEIC、TOEFL、IELTSなど)とも対応関係があり、様々な場面で活用できる
CEFRとCSEスコアを正しく理解し、自分の英語学習に積極的に活用していくことで、単なる試験対策にとどまらない、実践的な英語力の向上が期待できます。自分の現在のレベルを客観的に把握し、具体的な目標を設定して、効率的に学習を進めていきましょう。
また、定期的に英検を受験し、CSEスコアの変化を確認することで、自分の成長を実感することもできます。英語学習の道のりは長いですが、CEFRとCSEスコアという客観的な物差しがあれば、その道のりをより確かなものにできるでしょう。