英語を学び始めると必ず出会う文法の壁、それが「可算名詞」と「不可算名詞」の区別です。「りんごは数えられるから a apple、水は数えられないから water」という簡単な説明だけでは理解しきれない複雑さがあります。
なぜ「information」に複数形がないのか、なぜ「hair」は文脈によって数え方が変わるのか…。日本語には存在しない概念だからこそ、多くの学習者が混乱してしまうのです。
この記事では、英語初学者の方でも理解できるよう、可算名詞と不可算名詞の違いと使い分けをわかりやすく解説します。実用的な例文も交えて説明するので、この難関をスムーズに乗り越えましょう。
可算名詞と不可算名詞とは?基本概念を理解しよう

可算名詞と不可算名詞の区別は、英語の文法において非常に重要な基礎知識です。基本的な考え方を理解することで、冠詞の使い方や複数形の有無など、多くのルールが明確になります。
可算名詞(Countable Nouns)は、その名の通り「数えることができる」名詞です。1つ、2つ、3つ…と個別に数えられる物や概念を指します。例えば「本(book)」「りんご(apple)」「車(car)」などが代表的な可算名詞です。
一方、不可算名詞(Uncountable Nouns)は「数えることができない」名詞です。液体や気体、抽象的な概念など、個数ではなく量や程度で表現するものが該当します。例えば「水(water)」「空気(air)」「情報(information)」などが不可算名詞にあたります。
この区別は英語母語話者の感覚によるものであり、必ずしも論理的とは限りません。日本語では「情報を3つ」と数えても違和感はありませんが、英語では「information」は不可算名詞として扱われます。
可算名詞の特徴と使い方
可算名詞には、いくつかの特徴と使い方のルールがあります。
これらを理解することで、正しい英語表現ができるようになります。
可算名詞の主な特徴
- 単数形と複数形の両方がある
- 単数形の前には冠詞「a」または「an」が必要
- 数詞(one, two, three…)と一緒に使える
- many, few, several などの表現と一緒に使える
可算名詞の基本的な使い方
単数形を使う場合、基本的に冠詞「a」または「an」をつけます。「a」は子音で始まる単語の前に、「an」は母音で始まる単語の前に使います。
例文
- I have a book on my desk.(私の机の上に本が1冊あります)
- She bought an apple yesterday.(彼女は昨日りんごを1つ買いました)
複数形を使う場合は、一般的に名詞の末尾に「s」または「es」をつけます。不規則な変化をするものもあります。
例文
- There are three books in my bag.(私のバッグには3冊の本があります)
- My brother has two dogs.(私の兄は2匹の犬を飼っています)
- The children are playing in the park.(子どもたちは公園で遊んでいます)
可算名詞は「many」(多くの)や「few」(少しの)といった表現と組み合わせることができます。
例文
- I don’t have many friends in this city.(この街にはあまり友達がいません)
- There are a few chairs in the room.(部屋にはいくつかの椅子があります)
不可算名詞の特徴と使い方
不可算名詞には、可算名詞とは異なる特徴と使い方のルールがあります。
これらを理解することで、英語表現の幅が広がります。
不可算名詞の主な特徴
- 複数形がない(常に単数形として扱う)
- 冠詞「a」や「an」を直接つけることができない
- そのまま数詞と一緒に使えない
- much, little などの表現と一緒に使う
不可算名詞の基本的な使い方
不可算名詞は、基本的に「a」や「an」をつけず、複数形にもなりません。
全体を指す場合は冠詞なしで使います。
例文
- I need water.(私は水が必要です)
- She likes music.(彼女は音楽が好きです)
不可算名詞は「much」(多くの)や「little」(少しの)といった表現と組み合わせます。
例文
- There isn’t much time left.(あまり時間が残っていません)
- I have little money in my wallet.(私の財布にはお金があまりありません)
特定の量を示したい場合は、「some」(いくらかの)や「any」(何か・いくらかの)を使うこともできます。
例文
- Would you like some coffee?(コーヒーはいかがですか?)
- I don’t have any homework today.(今日は宿題がありません)
不可算名詞の4つの種類
不可算名詞は、大きく分けて4つの種類に分類することができます。
それぞれの特徴を理解することで、なぜその名詞が不可算なのかが見えてきます。
抽象概念を表す名詞
目に見えない概念や感情を表す名詞は、基本的に不可算名詞になります。
- love(愛)
- happiness(幸福)
- knowledge(知識)
- advice(アドバイス)
- information(情報)
例文
- Love is important in our lives.(愛は私たちの人生において重要です)
- I need more information about this topic.(このトピックについてもっと情報が必要です)
微小または粒状のものを表す名詞
米や砂糖のように、とても小さな粒が集まってできているものは、通常不可算名詞として扱われます。
- rice(米)
- sugar(砂糖)
- salt(塩)
- sand(砂)
例文
- We need rice for dinner.(夕食に米が必要です)
- There is sand in my shoes.(私の靴の中に砂があります)
液体・気体・形の定まらないものを表す名詞
形が定まらない液体や気体、物質は不可算名詞として扱われます。
- water(水)
- air(空気)
- oil(油)
- smoke(煙)
- milk(牛乳)
例文
- Please drink more water every day.(毎日もっと水を飲んでください)
- The room is filled with smoke.(部屋は煙でいっぱいです)
相似物の総称を表す名詞
個々のアイテムはあるものの、総称として扱われる名詞も不可算名詞になります。
- furniture(家具)
- equipment(装置)
- clothing(衣類)
- jewelry(宝飾品)
- fruit(果物)
例文
- We bought new furniture for our house.(私たちは家に新しい家具を買いました)
- She wears expensive jewelry.(彼女は高価な宝飾品を身につけています)
可算名詞と不可算名詞の見分け方
可算名詞と不可算名詞を見分けるのは時に難しいですが、いくつかのポイントを押さえることで判断しやすくなります。
輪郭で見分ける方法
最も簡単な見分け方は「輪郭」に注目することです。
対象物の輪郭がはっきり見えるものは可算名詞、輪郭がぼやけているものは不可算名詞である可能性が高いです。
例えば「book(本)」は明確な形と境界があるため可算名詞ですが、「water(水)」は形が定まらず、境界が不明確なため不可算名詞です。
辞書で確認する方法
新しい名詞に出会ったら、辞書で確認するのが最も確実です。
英語の辞書では、可算名詞は「[C]」、不可算名詞は「[U]」と表記されています。
両方の用法がある場合は「[C, U]」と表記されています。
数えられるかどうかで判断する
「one, two, three…」と数えられるかどうかを考えてみる方法もあります。
「one book, two books」と数えられるものは可算名詞、「one water, two waters」のように直接数えるのが不自然なものは不可算名詞である可能性が高いです。
同じ単語でも可算・不可算になる場合
英語の難しいところは、同じ単語でも文脈によって可算名詞にも不可算名詞にもなることがあるという点です。
意味が変わることで、使い方も変わってきます。
意味による使い分け
例えば「chicken」という単語は、生きた動物を指す場合は可算名詞、食べ物としての肉を指す場合は不可算名詞になります。
例文
- There are five chickens in the yard.(庭に5羽のニワトリがいます)- 可算名詞
- I would like some chicken for dinner.(夕食に少しチキン(鶏肉)が欲しいです)- 不可算名詞
「paper」も、1枚の紙(可算名詞)と、材料としての紙(不可算名詞)の両方の意味があります。
例文
- I need a paper to write on.(書くための紙が1枚必要です)- 可算名詞
- This book is made of recycled paper.(この本は再生紙でできています)- 不可算名詞
状態や形態による使い分け
「fish」は生きている魚を指す場合は可算名詞、食べ物としての魚肉を指す場合は不可算名詞になります。
例文
- I caught three fishes in the river.(川で3匹の魚を捕まえました)- 可算名詞
- We ate fish for lunch.(昼食に魚(料理)を食べました)- 不可算名詞
「hair」も総称として髪の毛全体を指す場合は不可算名詞、1本1本の髪の毛を指す場合は可算名詞になります。
例文
- She has beautiful hair.(彼女は美しい髪を持っています)- 不可算名詞
- I found a gray hair on my head.(頭に1本の白髪を見つけました)- 可算名詞
不可算名詞を数える表現方法
不可算名詞は直接数えることができませんが、数量を表現したい場合には特別な表現方法があります。
「a/an + 単位 + of + 不可算名詞」の形
不可算名詞の量を表現するためには、「a/an + 単位 + of + 不可算名詞」という形を使います。
例文
- I need a glass of water.(水を1杯ください)
- She bought two loaves of bread.(彼女はパンを2斤買いました)
- Can I have a piece of advice?(アドバイスを1つもらえますか?)
よく使われる単位表現
不可算名詞と一緒によく使われる単位表現には以下のようなものがあります。
単位 | 不可算名詞の例 |
---|---|
a glass of | water(水), milk(牛乳) |
a bottle of | wine(ワイン), oil(油) |
a cup of | coffee(コーヒー), tea(お茶) |
a piece of | advice(アドバイス), information(情報), bread(パン) |
a slice of | bread(パン), cake(ケーキ) |
a bowl of | rice(ご飯), soup(スープ) |
a grain of | rice(米), sand(砂) |
a drop of | water(水), blood(血) |
例文
- I drank a cup of tea this morning.(今朝、お茶を1杯飲みました)
- She gave me three pieces of advice.(彼女は私に3つのアドバイスをくれました)
- There’s a bowl of rice on the table.(テーブルの上にご飯が1杯あります)
英語の可算名詞と不可算名詞に関する練習問題20選
可算名詞と不可算名詞の区別は英語学習の重要なポイントです。以下の問題を解いて理解を深めましょう。
- 次の名詞が可算名詞か不可算名詞か答えなさい
water, book, rice, student, information - 次の空欄に a, an, some, any のいずれかを入れなさい
I need _____ water. - 次の空欄に many または much を入れなさい
How _____ money do you have? - 次の不可算名詞に対して、適切な数量表現を選びなさい
water (a glass of / a piece of / a slice of) - 次の名詞の中で、通常複数形にならないものを選びなさい
chair, bread, child, music, window - 次の文の誤りを訂正しなさい
I want to buy furnitures for my new house. - 次の名詞が可算名詞として使われている文を選びなさい
a. I like coffee.
b. Can I have two coffees, please? - 次の空欄に few または little を入れなさい
There is very _____ milk left in the fridge. - 次の不可算名詞に対して、「1つの〜」を表す適切な表現を書きなさい
advice, bread, information - 次の名詞のうち、常に複数形で使われるものを選びなさい
scissors, book, shoe, knowledge, glasses - 次の文を英語に訳しなさい
「私はパンを2枚食べました」 - 次の文の誤りを訂正しなさい
She gave me many useful informations. - 次の名詞が可算名詞か不可算名詞か答えなさい。もし両方の使い方があれば、その違いも説明しなさい。
paper - 次の文の空欄に a または some を入れなさい
Would you like _____ tea? - 次の不可算名詞に対応する可算表現を書きなさい
luggage, work, homework - 次の空欄に a few または a little を入れなさい
I have _____ questions about the project. - 次の文を英語に訳しなさい
「彼女は髪が長いです」 - 次の名詞が集合名詞として使われている文を選びなさい
a. My family is large.
b. My family are all early risers. - 次の文の誤りを訂正しなさい
There are less people at the party than I expected. - 次の名詞に適切な冠詞や数量表現を加えて文を完成させなさい
Could you give me _____ advice about learning English?
これらの練習問題を通して、可算名詞と不可算名詞の区別や正しい使い方を学ぶことができます。英語では名詞が可算か不可算かによって、使う冠詞や数量表現が大きく変わります。
特に日本語と感覚が異なる部分ですので、しっかり理解して使い分けられるようになりましょう。
可算名詞と不可算名詞に関するよくある質問
- 「much」と「many」はどう使い分けるのですか?
-
「much」は不可算名詞と一緒に使い、「many」は可算名詞の複数形と一緒に使います。
- How much water do you drink every day?(毎日どれくらいの水を飲みますか?)
- How many books do you have?(あなたは何冊の本を持っていますか?)
- 「some」と「any」の違いは何ですか?
-
「some」は肯定文で、「any」は疑問文と否定文で主に使われます。どちらも可算名詞の複数形と不可算名詞の両方と一緒に使えます。
- I have some books.(いくつかの本を持っています)- 可算名詞・肯定文
- I have some money.(いくらかのお金を持っています)- 不可算名詞・肯定文
- Do you have any questions?(何か質問はありますか?)- 可算名詞・疑問文
- I don’t have any time.(時間がありません)- 不可算名詞・否定文
- 「a little」と「a few」の違いは何ですか?
-
「a little」は不可算名詞と一緒に使い、「a few」は可算名詞の複数形と一緒に使います。どちらも「少しある」という肯定的な意味を持ちます。
- I have a little money.(少しお金があります)
- I have a few friends in Tokyo.(東京に何人か友達がいます)
- 「furniture」や「information」はなぜ複数形にならないのですか?
-
これらは不可算名詞として英語で扱われるためです。「furniture」は家具の総称、「information」は情報全般を指すので、英語母語話者の感覚では数えるものではなく、全体として捉えるものだからです。複数形が必要な場合は「pieces of furniture」「pieces of information」のように表現します。
- We have new furniture in our house.(私たちの家には新しい家具があります)
- I need more information about this topic.(このトピックについてもっと情報が必要です)
- 日本語では数えられるのに、英語では不可算名詞になるものの例はありますか?
-
はい、たくさんあります。例えば「advice(アドバイス)」「homework(宿題)」「luggage(荷物)」「news(ニュース)」「progress(進歩)」などは、日本語では数えることがありますが、英語では不可算名詞です。
- The teacher gave me some good advice.(先生は私にいくつかの良いアドバイスをくれました)
- I have a lot of homework today.(今日はたくさんの宿題があります)
まとめ

英語の可算名詞と不可算名詞の違いを理解することは、英語学習の基礎として非常に重要です。
この記事では、以下のポイントについて解説しました。
- 可算名詞と不可算名詞の基本概念:可算名詞は個別に数えられるもの、不可算名詞は数えられないものを指します。
- 可算名詞の特徴と使い方:単数形と複数形があり、単数形には「a/an」をつけます。数詞や「many」「few」などと一緒に使います。
- 不可算名詞の特徴と使い方:複数形がなく、「a/an」は直接つけません。「much」「little」などと一緒に使います。
- 不可算名詞の4つの種類:抽象概念、微小なもの、形の定まらないもの、相似物の総称です。
- 見分け方:輪郭の有無、辞書の表記、数えられるかどうかで判断します。
- 文脈による使い分け:同じ単語でも意味によって可算・不可算が変わることがあります。
- 不可算名詞の数え方:「a glass of water」のような表現を使います。
可算名詞と不可算名詞の概念は、冠詞の使い方や複数形の有無など、英語の文法の基礎となる重要な要素です。はじめは難しく感じるかもしれませんが、例文を通じて少しずつ理解を深め、実際に使ってみることで自然と身についていくでしょう。
英語学習の道のりは長いですが、基礎をしっかり固めることで、より複雑な表現や高度な内容も理解できるようになります。この記事が皆さんの英語学習の一助となれば幸いです。