英語で文書や原稿に関する表現を使う際、「draft(ドラフト)」と「manuscript(マニュスクリプト)」という単語に迷うことがあります。どちらも「原稿」や「文書」を表す言葉ですが、使われる場面や意味合いには明確な違いがあります。
この記事では、英語初学者の方でも理解できるよう、両者の違いと適切な使い分け方を詳しく解説します。例文も多数紹介しますので、実践的な使い方も身につけられるでしょう。
「draft」と「manuscript」の基本的な違い

「draft」と「manuscript」はどちらも文書に関連する単語ですが、その基本的な意味や使われる文脈には重要な違いがあります。
「draft」は主に「下書き」「草案」「原稿の初期段階」を意味します。文書作成の過程において、まだ改訂や編集が必要な段階の文書を指すことが多いです。ビジネス文書、法律文書、創作文などさまざまな文書の初期バージョンを表現するのに使われます。
一方、「manuscript」は元々「手で書かれた原稿」という意味から来ており、現代では特に「出版や提出のために準備された原稿」を指すことが一般的です。学術論文、書籍原稿、雑誌記事など、ある程度完成に近い段階の文書を表すのに使われます。
つまり最大の違いは、文書作成の「段階」にあると言えるでしょう。「draft」はより初期の段階、「manuscript」はより完成に近い段階を指す傾向があります。
「draft」の意味と使い方
「draft」についてより詳しく見ていきましょう。この単語は英語の中でも使用頻度が高く、様々な場面で活用されています。
「draft」の基本的な意味
「draft」の語源は古英語の「draht(引くこと)」に由来しています。文書関連では、「書く」「描く」という意味合いから発展しました。現代英語における「draft」の主な意味は以下の通りです。
- 文書の下書きや草案
- 完成前の文書のバージョン
- 検討や修正のための文書
「draft」の様々な用法
「draft」は名詞としても動詞としても使うことができます。
名詞としての用法
- I finished the first draft of my essay.(エッセイの初稿を完成させました)
- Please review this draft before I send it.(送信する前にこの草案を確認してください)
動詞としての用法
- She drafted a letter to the company.(彼女は会社への手紙を起草しました)
- We need to draft a new proposal.(新しい提案書を作成する必要があります)
「draft」には「first draft(初稿)」「rough draft(荒稿)」「final draft(最終稿)」といった表現もあり、文書の改訂段階を示すことができます。
「draft」を使った例文
中学英語レベルの例文で「draft」の使い方を見てみましょう。
例文
- I wrote the first draft of my story yesterday.(昨日、物語の第一稿を書きました)
- My teacher checked the draft of my report.(先生が私のレポートの下書きをチェックしてくれました)
- This is just a draft, so we can change it later.(これは単なる下書きなので、後で変更できます)
- She is drafting an email to her friend.(彼女は友達へのメールを下書きしています)
- We need three drafts before the final version.(最終版の前に3回の草稿が必要です)
「manuscript」の意味と使い方
次に「manuscript」について詳しく見ていきましょう。この単語はより専門的な文脈で使われることが多いです。
「manuscript」の基本的な意味
「manuscript」はラテン語の「manu(手で)」と「scriptus(書かれた)」に由来しています。そのため、元々は「手で書かれた文書」を意味していました。現代では以下のような意味で使われています。
- 出版のために提出される原稿
- 学術雑誌や書籍の完成原稿
- 歴史的な手書き文書や古文書
「manuscript」の様々な用法
「manuscript」は主に名詞として使われます。
例文
- The author submitted his manuscript to the publisher.(著者は出版社に原稿を提出した)
- The museum has a collection of ancient manuscripts.(博物館には古代の手書き文書のコレクションがある)
- Her manuscript was accepted by the academic journal.(彼女の原稿は学術誌に受理された)
「manuscript」は学術分野では「MS」または「ms」と略されることもあります。複数形は「manuscripts」または「MSS」です。
「manuscript」を使った例文
中学英語レベルの例文で「manuscript」の使い方を見てみましょう。
例文
- The writer sent his manuscript to five publishers.(その作家は自分の原稿を5つの出版社に送りました)
- The old manuscript was found in the castle.(その古い手書き文書は城で発見されました)
- She is working on a manuscript about animals.(彼女は動物についての原稿に取り組んでいます)
- The teacher asked us to submit our manuscripts next week.(先生は来週までに原稿を提出するよう求めました)
- The manuscript is almost ready for publication.(その原稿はほぼ出版の準備ができています)
「draft」と「manuscript」の使い分けのポイント
「draft」と「manuscript」をどのように使い分ければよいのでしょうか。以下に重要なポイントをまとめます。
文脈による使い分け
文書の完成度による違い
- 「draft」:まだ修正や改善が必要な文書
- 「manuscript」:ほぼ完成に近い、提出や出版を前提とした文書
文書の種類による違い
- 「draft」:ビジネス文書、手紙、メール、契約書、法律文書など幅広く使用
- 「manuscript」:学術論文、書籍原稿、歴史的文書に使用されることが多い
使用される分野による違い
- 「draft」:日常会話、ビジネス、学校、創作活動など幅広い分野
- 「manuscript」:出版業界、学術研究、歴史研究などの専門分野
実践的な使い分け例
ビジネスの場面
- 「I’ll send you a draft of the contract tomorrow.」(明日、契約書の草案をお送りします)
- 「Please review the first draft of the proposal.」(提案書の初稿を確認してください)
学術の場面
- 「I’m still working on the first draft of my research paper.」(まだ研究論文の初稿に取り組んでいます)
- 「I submitted my manuscript to the journal last month.」(先月、雑誌に原稿を提出しました)
文学・出版の場面
- 「The writer is on his third draft of the novel.」(その作家は小説の3稿目に取り組んでいます)
- 「The publisher accepted her manuscript for publication.」(出版社は彼女の原稿を出版のために受理しました)
「draft」と「manuscript」に関連する類似表現
「draft」と「manuscript」以外にも、文書に関連する英単語はいくつかあります。これらとの違いも押さえておきましょう。
「paper」「article」との違い
- 「paper」:非常に広い意味を持ち、紙そのもの、新聞、学術論文など様々な意味がある
- 「article」:雑誌や新聞、ウェブサイトなどに掲載される記事
- 「draft」:文書の初期段階
- 「manuscript」:出版や提出のために準備された原稿
例えば、研究者が学術的な「paper(論文)」を書く過程で作る初期バージョンは「draft」であり、それが完成して学術雑誌に提出する際の形式が「manuscript」となります。
「essay」「thesis」との違い
- 「essay」:特定のテーマについての短い文章、エッセイ
- 「thesis」:大学院などで提出する学位論文
- 「draft」:どんな種類の文書でも、その初期段階を指す
- 「manuscript」:出版や提出を前提とした完成原稿
つまり、「draft」と「manuscript」は文書の状態や段階を表す言葉であるのに対し、「paper」「article」「essay」「thesis」は文書の種類やタイプを表す言葉と言えます。
「draft」と「manuscript」の使い分け練習問題
以下の文章の空欄に適切な単語(draft または manuscript)を入れる練習をしてみましょう。
- The author sent his _ to the publisher last week.
- This is just the first _ of my report, so there may be some errors.
- The ancient _ was displayed in the museum.
- I need to _ a letter to my client explaining the situation.
- She is currently working on the second _ of her novel.
- The _ was written on papyrus and is over 2000 years old.
- Please review this _ and let me know if you have any suggestions for improvement.
- The journal accepted her _ for publication.
- He prepared the final _ of the contract for all parties to sign.
- The _ of Shakespeare’s plays provide valuable insights into his writing process.
- I haven’t finished it yet; it’s still in the _ stage.
- The researcher submitted her _ to three different scientific journals.
- Could you help me _ a response to this email?
- The editor returned the _ with several suggestions for revision.
- The company lawyer is _ a new policy for remote work.
- The professor asked students to submit their _ by the end of the semester.
- This is the third _ of our business proposal.
- Medieval _ were often beautifully illustrated by hand.
- I’ll send you the _ tomorrow so you can check it before the final submission.
- The historian discovered an unknown _ in the university archives.
「draft」と「manuscript」に関するよくある質問
英語学習者からよく寄せられる疑問について解説します。
- 「draft」は必ず未完成のものを指すのか
-
必ずしもそうではありません。「draft」には「first draft(初稿)」から「final draft(最終稿)」まであり、最終稿はほぼ完成した状態を指すこともあります。ただし、一般的には改訂や修正の余地がある段階の文書を指すことが多いです。
ビジネスや法律文書では「final draft」が実質的に完成版を意味することもあります。重要なのは、その文書がどの段階にあるかを正確に伝えることです。
- 「manuscript」は必ず完成したものを指すのか
-
「manuscript」は一般的に出版や提出を前提とした、ある程度完成度の高い原稿を指します。しかし、学術誌への投稿原稿などの場合、査読後に修正が求められることもあります。つまり、「manuscript」も完全に完成したものとは限りません。
歴史的な意味での「manuscript」は単に「手で書かれた文書」を指し、完成度とは無関係です。
- ビジネスでよく使われるのはどちら
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ビジネス環境では「draft」の方がはるかに一般的です。契約書や提案書、報告書、プレゼンテーションなどの作成過程で「draft」という言葉が頻繁に使われます。例えば「draft contract(契約書の草案)」「draft proposal(提案書の草案)」といった表現はビジネスでよく目にします。
一方、「manuscript」はビジネス文書ではあまり使われず、主に出版や学術分野で使用されます。
- アカデミックな場面ではどちらが適切か
-
アカデミックな場面では両方の単語が使われますが、使われる状況が異なります。
- 「draft」:研究論文の初期段階、同僚にフィードバックを求める時、改訂中の論文
- 「manuscript」:学術雑誌への投稿準備ができた論文、査読中または出版予定の論文
例えば、「I’m working on the first draft of my research paper.(研究論文の初稿に取り組んでいます)」と言う場合は「draft」を使い、「I submitted my manuscript to the journal last week.(先週、雑誌に原稿を提出しました)」と言う場合は「manuscript」を使います。
まとめ

「draft」と「manuscript」の違いと使い分けについて解説しました。重要なポイントをまとめると、
- 「draft」は主に文書の初期段階や改訂中の原稿を指し、未完成や編集可能な状態を強調します。
- 「manuscript」は出版や提出を前提とした、より完成度の高い原稿を指し、また歴史的には手書きの文書を指します。
- 「draft」はビジネス、法律、創作など幅広い分野で使われますが、「manuscript」は主に出版、学術、歴史の分野で使われます。
- 「draft」は動詞としても使われ、文書を作成する行為を表すことができます。
- 文書の作成段階によって使い分けるのが基本です:初期段階では「draft」、完成に近い段階では「manuscript」。
- ビジネスでは主に「draft」が使われ、アカデミックな場面では両方が使われますが、状況によって使い分けます。
- 「paper」「article」「essay」「thesis」などの関連単語は文書のタイプを表すのに対し、「draft」と「manuscript」は文書の作成段階を表します。
英語で文書を扱う際には、これらの違いを理解して適切に使い分けることで、より正確に自分の意図を伝えることができます。この知識を活かして、様々な場面で自信を持って英語表現を選べるようになりましょう。