英語を学んでいると必ず出てくるのが「不定詞」という文法項目です。「to + 動詞の原形」という形で登場し、様々な使い方があるため、最初は混乱してしまう方も多いのではないでしょうか。
この記事では、英語初学者の方でも理解できるよう、不定詞の基本的な意味から応用的な使い方まで、具体的な例文を交えてわかりやすく解説します。
不定詞をマスターして、英語表現の幅を広げていきましょう。
不定詞とは?英語の文法における基本概念

不定詞とは、「to + 動詞の原形」の形で表される文法要素です。「不定詞」という名前の由来は、この形が「主語や時制に定められない(不定の)」形だからです。通常、英語の動詞は主語や時制によって形が変わりますが、不定詞は「to + 動詞の原形」という一定の形を保ちます。
例えば、「勉強する」という意味の「study」を不定詞にすると「to study」になります。この形は「勉強すること」「勉強するために」「勉強するための」など、文中での役割によって様々な意味に訳すことができます。
英語の不定詞には大きく分けて2種類あります。
- to不定詞:「to + 動詞の原形」の形(例:to eat、to play、to study)
- 原形不定詞:「to」がない形(例:make her laugh、let me go)
基本的に「不定詞」と言えば「to不定詞」を指すことが多いので、まずはこちらをしっかり理解しましょう。
不定詞の3つの基本用法
to不定詞には主に3つの用法があります。
それぞれの用法によって、文中での役割や日本語に訳したときの意味が変わってきます。
用法 | 意味 | 文中での役割 |
---|---|---|
名詞的用法 | 〜すること | 主語・目的語・補語 |
形容詞的用法 | 〜するための、〜すべき | 名詞の修飾語 |
副詞的用法 | 〜するために、〜して | 動詞・形容詞・副詞の修飾語 |
これらの用法をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
名詞的用法:「〜すること」を表す
名詞的用法の不定詞は、文の中で「名詞」の役割を果たします。
「〜すること」という意味で、主語・目的語・補語として使われます。
主語として使われる場合
- To learn English is important for me.(英語を学ぶことは私にとって重要です)
- To play the piano takes practice.(ピアノを弾くことは練習が必要です)
目的語として使われる場合
- I want to visit Japan.(私は日本を訪れたいです)
- She decided to study abroad.(彼女は留学することを決めました)
補語として使われる場合
- My dream is to become a doctor.(私の夢は医者になることです)
- Her job is to teach children.(彼女の仕事は子どもたちを教えることです)
また、「疑問詞 + to不定詞」の形で「どうやって〜するか」「何を〜するか」のような意味を表すこともあります。
例文
- I don’t know what to do.(何をすべきか分かりません)
- She showed me how to use this camera.(彼女は私にこのカメラの使い方を見せてくれました)
形容詞的用法:「〜するための」「〜すべき」を表す
形容詞的用法の不定詞は、名詞を修飾する役割を果たします。
「〜するための」「〜すべき」という意味で使われます。
例文
- I need a pen to write with.(私は書くためのペンが必要です)
- She has many books to read.(彼女には読むべき本がたくさんあります)
- This is the best place to visit in summer.(ここは夏に訪れるのに最適な場所です)
- I have homework to do tonight.(今夜やるべき宿題があります)
形容詞的用法では、不定詞が前の名詞を説明していることがポイントです。
「どんな〜」という形で名詞の特徴を表しています。
副詞的用法:「〜するために」「〜して」を表す
副詞的用法の不定詞は、動詞・形容詞・副詞などを修飾します。
主に「目的」「結果」「原因・理由」を表すのに使われます。
目的を表す場合(〜するために)
- I went to the store to buy milk.(牛乳を買うためにお店に行きました)
- She studies hard to pass the exam.(試験に合格するために彼女は一生懸命勉強します)
結果を表す場合(〜して…となる)
- He grew up to be a famous singer.(彼は成長して有名な歌手になりました)
- I was surprised to hear the news.(そのニュースを聞いて私は驚きました)
原因・理由を表す場合(〜して)
- I am happy to see you again.(あなたにまた会えて嬉しいです)
- She was sad to leave her hometown.(故郷を離れて彼女は悲しかったです)
副詞的用法は、「なぜ」「どのような目的で」という情報を追加するので、文の意味をより明確にする役割があります。
不定詞の特殊な使い方と表現
基本的な3つの用法以外にも、不定詞にはいくつかの特殊な使い方があります。
ここでは代表的なものを紹介します。
不定詞の否定形
不定詞を否定する場合は、「not」を「to」の前に置きます。
例文
- I decided not to go to the party.(私はパーティーに行かないことに決めました)
- She told me not to worry about it.(彼女は私にそれについて心配しないように言いました)
- They asked us not to be late.(彼らは私たちに遅れないように頼みました)
この否定形は「〜しないこと」「〜しないように」という意味になります。
原形不定詞(toなし不定詞)
特定の動詞の後では、「to」のない原形不定詞が使われます。主に以下の場合に使われます。
使役動詞(make, let, have)の後
- My mother made me clean my room.(母は私に部屋を掃除させました)
- The teacher let us go home early.(先生は私たちを早く帰らせてくれました)
- I had my brother help me with homework.(私は兄に宿題を手伝ってもらいました)
知覚動詞(see, hear, watch, feel)の後
- I saw her walk into the building.(私は彼女が建物に入るのを見ました)
- We heard him sing a beautiful song.(私たちは彼が美しい歌を歌うのを聞きました)
- I watched the birds fly away.(私は鳥が飛び去るのを見ました)
原形不定詞は、「to」がない形ですが、不定詞と同じような働きをします。
不定詞と動名詞の違いと使い分け
英語を学ぶ際によく混乱するのが、不定詞(to + 動詞の原形)と動名詞(動詞 + ing)の使い分けです。
両方とも「〜すること」という意味になりますが、使う場面や意味合いが異なります。
不定詞 | 動名詞 |
---|---|
未来・これからの行為 | 一般的・習慣的な行為 |
具体的な一回の行為 | 抽象的・総合的な行為 |
「to + 動詞の原形」 | 「動詞 + ing」 |
不定詞を使う動詞の例
- want to(〜したい)
- decide to(〜することを決める)
- hope to(〜することを望む)
- plan to(〜する計画を立てる)
- agree to(〜することに同意する)
動名詞を使う動詞の例
- enjoy(〜することを楽しむ)
- finish(〜することを終える)
- avoid(〜することを避ける)
- suggest(〜することを提案する)
- practice(〜することを練習する)
どちらも使えるが意味が変わる動詞の例
- remember to do(これからすることを覚えている)
- remember doing(したことを覚えている)
- stop to do(〜するために立ち止まる)
- stop doing(〜することをやめる)
例文
- I remembered to call my mother.(母に電話することを忘れませんでした)
- I remember calling my mother yesterday.(昨日母に電話したことを覚えています)
- He stopped to rest.(彼は休むために立ち止まりました)
- He stopped smoking.(彼は喫煙をやめました)
不定詞を使った重要表現と慣用句
不定詞を使った重要な表現や慣用句をいくつか紹介します。
これらは日常英会話でもよく使われるので、ぜひ覚えておきましょう。
too…to〜(〜すぎて…できない)
「too + 形容詞/副詞 + to不定詞」の形で、「〜すぎて…できない」という意味を表します。
例文
- This box is too heavy to carry.(この箱は重すぎて運べません)
- She was too tired to study.(彼女は疲れすぎて勉強できませんでした)
- The problem is too difficult to solve.(その問題は難しすぎて解けません)
「疑問詞 + to不定詞」の表現
「what/how/when/where/who + to不定詞」の形で、「何を/どのように/いつ/どこで/誰を〜するか」という意味を表します。
例文
- I don’t know what to say.(何を言えばいいのか分かりません)
- Please tell me how to get to the station.(駅への行き方を教えてください)
- We haven’t decided where to go for vacation.(休暇でどこに行くか決めていません)
「be + 形容詞 + to不定詞」の表現
「be + 形容詞 + to不定詞」の形で、感情や評価を表します。
例文
- I am happy to help you.(あなたを手伝えて嬉しいです)
- She is ready to start.(彼女は始める準備ができています)
- It is important to study every day.(毎日勉強することは重要です)
よく使われる不定詞を含む表現一覧
表現 | 意味 | 例文 |
---|---|---|
be about to | まさに〜しようとしている | I was about to leave when he called. |
would like to | 〜したい(丁寧な表現) | I would like to visit your country. |
be going to | 〜するつもりである | We are going to watch a movie tonight. |
be glad to | 喜んで〜する | I’m glad to meet you. |
be afraid to | 〜するのを恐れる | She is afraid to speak in public. |
be able to | 〜することができる | He is able to swim across the river. |
in order to | 〜するために(目的) | I saved money in order to buy a new bike. |
so as to | 〜するために(目的) | He left early so as to catch the first train. |
英語の不定詞に関する練習問題20選
英語の不定詞(to + 動詞の原形)は、様々な使い方ができる便利な文法要素です。
以下の問題を解いて、不定詞の用法をマスターしましょう。
- 次の不定詞の3つの用法(名詞的用法、形容詞的用法、副詞的用法)のうち、次の文の太字はどれに当たるか答えなさい
I want to learn English. - 次の文の空欄に適切な形(不定詞または動名詞)を入れなさい
I enjoy _____ (swim) in the sea. - 次の文の空欄に適切な形(不定詞または動名詞)を入れなさい
He decided _____ (study) abroad next year. - 次の2つの文の意味の違いを説明しなさい
a. I stopped to talk to her.
b. I stopped talking to her. - 次の文の空欄に適切な形の不定詞を入れなさい(目的を表す)
She went to the store _____ (buy) some bread. - 次の文の空欄に適切な形の不定詞を入れなさい(原因・理由を表す)
I was surprised _____ (hear) the news. - 次の不定詞を含む慣用表現の空欄を埋めなさい
The book is too difficult _____ me _____ understand. - 次の文の不定詞の否定形を作りなさい
I decided to go to the party. - 次の文の空欄に適切な形(不定詞の完了形)を入れなさい
I am happy _____ (finish) the project before the deadline. - 次の文の空欄に適切な形(不定詞の受動態)を入れなさい
Everyone wants _____ (invite) to the party. - 次の文の空欄に適切な形(不定詞または動名詞)を入れなさい。両方可能な場合は、意味の違いを説明しなさい
I remember _____ (meet) her at the conference. - 次の文の不定詞は省略できるか答えなさい
I’d like you to come to my party. - 次の文に不定詞を使った結果を表す表現を加えなさい
He returned home _____. (find that everyone had left) - 次の動詞のうち、目的語の後に原形不定詞を取るものを選びなさい
help, want, let, ask, make - 次の日本文を英訳しなさい(不定詞を使って)
「彼女は何を言うべきか分からなかった」 - 次の英文を和訳しなさい
It was kind of you to help me with my homework. - 次の文の空欄に適切な不定詞の形を入れなさい
The question is too difficult for me _____ (answer). - 次の文を書き換えなさい(不定詞を使って)
My goal is that I will become a doctor. - 次の文の空欄に適切な形(不定詞または動名詞)を入れなさい
Would you mind _____ (open) the window? - 次の文を不定詞を使って言い換えなさい
I was the first person who arrived at the meeting.
これらの問題を通して、英語の不定詞の様々な用法を学ぶことができます。不定詞は名詞、形容詞、副詞として機能し、目的、理由、結果などを表すことができます。また、動名詞との使い分け、特殊な構文(too…to, for…to など)、不定詞の特殊な形(完了形、受動態)についても重要なポイントです。
不定詞をマスターすれば、より豊かな英語表現ができるようになります。
不定詞に関するよくある質問
- 不定詞と動名詞はどう使い分ければいいですか?
-
基本的には、不定詞は未来や具体的な一回の行為を表す傾向があり、動名詞は一般的・習慣的な行為を表す傾向があります。また、動詞によって後に不定詞を取るか動名詞を取るかが決まっているものもあります。例えば、「want to do(〜したい)」「enjoy doing(〜することを楽しむ)」のように覚えるとよいでしょう。
- 「to」の発音はどうすればいいですか?
-
「to」は通常、弱形で発音され「トゥ」より「タ」に近い音になります。ただし、文の最後や強調する場合は「トゥー」と発音することもあります。
- 「原形不定詞」とは何ですか?
-
原形不定詞とは、「to」のない不定詞のことです。主に使役動詞(make, let, have)や知覚動詞(see, hear, feel, watch)の後で使われます。例:「He made me laugh.(彼は私を笑わせました)」「I heard her sing.(私は彼女が歌うのを聞きました)」
- 不定詞の否定形はどのように作りますか?
-
不定詞の否定形は、「not to + 動詞の原形」の形で作ります。「not」は「to」の前に置きます。例:「I decided not to go.(私は行かないことに決めました)」
- 「It is ~ to do」という表現は何を意味しますか?
-
「It is + 形容詞 + to do」の形は、「〜することは…だ」という意味で、行為に対する評価や感想を述べる表現です。例:「It is important to study English.(英語を勉強することは重要です)」「It is fun to play sports.(スポーツをすることは楽しいです)」
まとめ

不定詞は英語の文法の中でも重要な要素で、様々な用法や表現があります。
この記事では以下のポイントを解説しました。
- 不定詞の基本:「to + 動詞の原形」の形で、主語や時制に定められない形であることから「不定詞」と呼ばれる
- 3つの基本用法:
- 名詞的用法:「〜すること」という意味で、主語・目的語・補語として使われる
- 形容詞的用法:「〜するための」「〜すべき」という意味で、名詞を修飾する
- 副詞的用法:「〜するために」「〜して」という意味で、動詞・形容詞・副詞を修飾する
- 特殊な使い方:
- 不定詞の否定形:「not to + 動詞の原形」
- 原形不定詞:使役動詞や知覚動詞の後で使われる「to」のない形
- 不定詞と動名詞の違い:
- 不定詞は未来・具体的な行為、動名詞は一般的・習慣的な行為を表す傾向がある
- 動詞によって後に不定詞を取るか動名詞を取るかが決まっている
- 重要表現と慣用句:
- too…to〜(〜すぎて…できない)
- 疑問詞 + to不定詞(何を/どのように/いつ/どこで/誰を〜するか)
- be + 形容詞 + to不定詞(感情や評価を表す)
不定詞は最初は複雑に感じるかもしれませんが、少しずつ用法を理解し、例文を覚えていくことで確実に使いこなせるようになります。
日常会話や文章でよく使われる表現なので、ぜひマスターして英語表現の幅を広げていきましょう。