「〜しなければならない」を英語で表現するとき、「must」と「have to」の2つの表現がありますが、どのように使い分ければよいのでしょうか?両方とも似たような意味を持ちますが、実は使うべき場面やニュアンスに違いがあります。
英語の文法を勉強する中で、この2つの表現の違いを理解することは、より自然で正確な英語を話すために重要です。この記事では、英語初学者の方でも理解できるよう、「must」と「have to」の違いと使い分け方を例文付きで分かりやすく解説します。
「must」と「have to」の基本的な意味

「must」と「have to」はどちらも「〜しなければならない」という義務や必要性を表す表現です。しかし、その義務の性質や強さには違いがあります。
「must」は話し手の強い意思や主観的な判断による義務を表します。つまり、「私はこうすべきだと思う」という内的な義務感を表現する場合に使われます。
一方、「have to」は外的な要因や状況によって生じる客観的な義務を表します。つまり、「状況的にそうせざるを得ない」という外的な義務を表現する場合に使われます。
例文
- I must study for the test tonight.
(今夜はテストのために勉強しなければならない)[自分の意思] - I have to study for the test tonight because my teacher said so.
(先生がそう言ったので、今夜はテストのために勉強しなければならない)[外的要因]
「must」と「have to」の文法的な違い
「must」と「have to」には文法的にも重要な違いがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
「must」の文法的特徴
「must」は助動詞(法助動詞)であり、以下のような特徴があります。
- 形が変化しない(どの人称でも同じ形)
- 基本的に現在形でのみ使われる
- 否定形は「must not」で「〜してはいけない」という禁止の意味になる
- 疑問文は語順を入れ替えて作る(Must I go?)
例文
- I must finish my homework.(私は宿題を終わらせなければならない)
- She must be quiet in the library.(彼女は図書館では静かにしなければならない)
- You must not eat in the classroom.(教室で食べてはいけません)
- Must we clean the room now?(今部屋を掃除しなければなりませんか?)
「have to」の文法的特徴
「have to」は一般動詞「have」と不定詞「to」の組み合わせであり、以下のような特徴があります。
- 主語によって形が変化する(I have to, she has to)
- 現在形・過去形・未来形・完了形など様々な時制で使える
- 否定形は「don’t have to」で「〜する必要はない」という意味になる
- 疑問文は助動詞「do」を使って作る(Do you have to go?)
例文
- I have to go to school every day.(私は毎日学校に行かなければならない)
- She has to wear a uniform.(彼女は制服を着なければならない)
- I had to study all night yesterday.(昨日は一晩中勉強しなければならなかった)
- I will have to get up early tomorrow.(明日は早起きしなければならないだろう)
- Do you have to leave now?(今行かなければなりませんか?)
「must」と「have to」の時制による違い
時制の観点から見ると、「must」と「have to」の使い方に大きな違いがあります。
現在形での表現
現在形では、どちらも使うことができますが、ニュアンスが異なります。
- I must go now.(私は今行かなければならない)[強い意思・主観的]
- I have to go now.(私は今行かなければならない)[状況的に・客観的]
過去形での表現
「must」は過去形を持たないため、過去の義務を表す場合は「had to」を使います。
- Yesterday, I had to clean my room.(昨日、私は部屋を掃除しなければならなかった)
- ※「must」の過去形はありません
未来形での表現
未来の義務を表す場合も、「must」は単独では未来時制を表せないため、「will have to」を使います。
- Tomorrow, I will have to wake up early.(明日、私は早起きしなければならないだろう)
- ※「will must」という表現はありません
完了形での表現
完了形では「have to」のみが使えます。
- I have had to work hard this week.(今週は一生懸命働かなければならなかった)
- ※「must have」は推量の意味で使われます(後述)
「must」と「have to」の主観的/客観的義務の違い
「must」と「have to」の最も重要な違いは、義務の性質です。
「must」:主観的な義務や強い意思
「must」は話し手自身の強い意思や判断、内的な義務感を表します。自分で「〜すべきだ」と思っていることを表現するのに適しています。
また、命令や強い助言を与える場合にも使われます。
例文
- I must exercise more to stay healthy.
(健康でいるために、もっと運動しなければならない)[自分の判断] - You must try this cake. It’s delicious!
(このケーキを食べてみるべきだよ。おいしいよ!)[強い推奨] - Students must follow the school rules.
(生徒は学校の規則に従わなければならない)[規則・命令]
「have to」:客観的・外的な義務
「have to」は外部の状況や要因によって生じる義務を表します。
自分の意思というより、状況的に「そうせざるを得ない」という客観的な義務を表現します。
例文
- I have to wear a uniform at school.
(学校では制服を着なければならない)[学校の規則] - She has to take care of her little brother today.
(彼女は今日、弟の面倒を見なければならない)[状況的に] - We have to finish this project by Friday.
(金曜日までにこのプロジェクトを終えなければならない)[締め切りがある]
「must not」と「don’t have to」の違い
否定形においては、「must」と「have to」は全く異なる意味になるので注意が必要です。
「must not」:禁止
「must not」(mustn’t)は「〜してはいけない」という禁止を表します。
例文
- You must not talk in the library.(図書館では話してはいけません)
- Students must not use phones in class.(生徒は授業中に電話を使ってはいけません)
- You must not forget to lock the door.(ドアのロックを忘れてはいけません)
「don’t have to」:不必要
「don’t have to」(doesn’t have to)は「〜する必要はない」という不必要を表します。
例文
- You don’t have to come early tomorrow.(明日は早く来る必要はありません)
- She doesn’t have to wear a uniform on Fridays.(彼女は金曜日には制服を着る必要はありません)
- We don’t have to finish all the food.(私たちは全ての食べ物を食べきる必要はありません)
「must」と「have to」の推量の用法
「must」と「have to」には、「〜に違いない」という推量の用法もあります。
「must」の推量用法
「must」は強い確信や論理的な推測を表します。「〜に違いない」という意味になります。
例文
- You must be tired after the long trip.(長旅の後なので、あなたは疲れているに違いない)
- He must be at home now. His car is there.(彼は今家にいるに違いない。彼の車がそこにある)
- She must be very smart. She always gets good grades.(彼女はとても頭がいいに違いない。いつも良い成績をとる)
「have to」の推量用法
「have to」も「〜に違いない」という推量を表すことができますが、「must」よりもやや弱い確信を表します。
例文
- This has to be the right answer.(これが正解に違いない)
- There has to be a way to solve this problem.(この問題を解決する方法があるに違いない)
- She has to be over 20 years old.(彼女は20歳を超えているに違いない)
状況別「must」と「have to」の使い分け例
実際の会話場面では、状況によって「must」と「have to」のどちらが適切かが変わります。
いくつかの具体的な場面での使い分けを見てみましょう。
学校生活での使い分け
学校の規則や教師からの指示は外的要因なので、基本的に「have to」が使われます。
しかし、自分自身の強い決意や、他者への強い助言には「must」も使えます。
例文
- We have to wear a uniform at school.(学校では制服を着なければなりません)[規則]
- I must study hard to pass the exam.(試験に合格するために一生懸命勉強しなければならない)[自分の決意]
- You have to submit your homework by tomorrow.(明日までに宿題を提出しなければなりません)[教師の指示]
- Students must respect their teachers.(生徒は教師を尊重しなければなりません)[道徳的義務]
家庭での使い分け
家庭内のルールや親からの指示は「have to」で表されることが多いですが、自分の意思による義務は「must」で表されます。
例文
- I have to clean my room every Saturday.(毎週土曜日に部屋を掃除しなければならない)[家のルール]
- I must call my grandmother today. It’s her birthday.(今日はおばあちゃんに電話しなければならない。彼女の誕生日だから)[自分の意思]
- You have to be home by 8 o’clock.(8時までに家にいなければなりません)[親の指示]
- We must take care of our pets.(ペットの世話をしなければなりません)[道徳的義務]
職場での使い分け
職場のルールや上司からの指示は「have to」で表されますが、自分の責任感や使命感から生じる義務は「must」で表されることがあります。
例文
- Employees have to arrive at work by 9 AM.(従業員は午前9時までに出勤しなければなりません)[会社のルール]
- I must finish this report today.(今日中にこのレポートを終わらせなければならない)[自分の決意]
- You have to wear a suit for the meeting.(会議ではスーツを着なければなりません)[ドレスコード]
- We must work together to succeed.(成功するためには一緒に働かなければなりません)[使命感]
「must」と「have to」の使い分け一覧表
以下の表で、「must」と「have to」の主な違いをまとめてみました。
特徴 | must | have to |
---|---|---|
義務の性質 | 主観的・内的 | 客観的・外的 |
話し手の態度 | 強い意思・命令的 | 状況的・客観的 |
時制 | 基本的に現在形のみ | 様々な時制で使える |
否定形の意味 | 〜してはいけない (禁止) | 〜する必要はない (不必要) |
形の変化 | なし (どの人称でも同じ) | あり (have/has/had) |
疑問文の作り方 | 語順の入れ替え | do/does/didを使用 |
命令・アドバイス | 強い | やや弱い |
推量表現 | 強い確信 | やや弱い確信 |
英語の「must」と「have to」に関する練習問題
以下の問題を解いて、「must」と「have to」の使い分けを練習しましょう。
- 次の文の空欄に適切な表現(must または have to)を入れなさい
I _______ finish my homework tonight.(自分の決意) - 次の文の空欄に適切な表現を入れなさい
Students _______ wear uniforms at this school.(学校の規則) - 次の文の空欄に適切な表現を入れなさい
You _______ be quiet in the library.(強い命令) - 次の文の空欄に適切な表現を入れなさい
I _______ wake up at 6:00 tomorrow morning because I have an early class.(状況による必要性) - 次の文の空欄に適切な表現を入れなさい
He _______ go to the dentist yesterday because he had a toothache.(過去の義務) - 次の文の空欄に適切な表現を入れなさい
You _______ not leave your bag unattended.(禁止) - 次の文の空欄に適切な表現を入れなさい
You _______ not come if you don’t want to.(不必要) - 次の文を否定文に書き換えなさい
I must go to school today.(〜してはいけない) - 次の文を否定文に書き換えなさい
I have to clean my room.(〜する必要はない) - 次の文の空欄に適切な表現を入れなさい
She _______ be very tired. She’s been working all day.(強い推量) - 次の文の空欄に適切な表現を入れなさい
This _______ be the right answer. It’s the only logical choice.(推量) - 次の日本語を英語にしなさい(mustを使って)
「私は毎日勉強しなければならない。」(自分の決意として) - 次の日本語を英語にしなさい(have toを使って)
「彼女は8時までに家に帰らなければならない。」(家のルールとして) - 次の日本語を英語にしなさい
「あなたはここでタバコを吸ってはいけません。」 - 次の日本語を英語にしなさい
「明日は学校に行く必要はありません。」 - 次の日本語を英語にしなさい(mustを使って推量を表す)
「彼はとても頭がいいに違いない。いつも100点を取る。」 - 次の日本語を英語にしなさい(have toを使って過去の義務を表す)
「昨日私は医者に行かなければならなかった。」 - 次の文の誤りを訂正しなさい
I will must study for the test tomorrow. - 次の文の誤りを訂正しなさい
She must went to the store yesterday. - 以下の状況で「must」と「have to」のどちらがより適切か答えなさい
Your teacher says: “You _______ submit your report by Friday.”(教師の指示)
「must」と「have to」に関するよくある質問
- 「must」と「have to」はどんな時に使い分ければいいですか?
-
基本的に、自分の意思や判断による強い義務感を表したい場合は「must」を、外的な状況や規則による義務を表したい場合は「have to」を使うとよいでしょう。例えば、「I must exercise to stay healthy.(健康でいるために運動しなければならない)」は自分の判断によるもの、「I have to wear a uniform at school.(学校では制服を着なければならない)」は学校の規則によるものです。
- 「must not」と「don’t have to」の違いは何ですか?
-
この2つは全く異なる意味を持ちます。「must not」は「〜してはいけない」という禁止を表し、「don’t have to」は「〜する必要はない」という不必要を表します。例えば、「You must not smoke here.(ここでタバコを吸ってはいけません)」は禁止、「You don’t have to come tomorrow.(明日来る必要はありません)」は不必要を表しています。
- 過去の義務を表す場合はどうすればいいですか?
-
過去の義務を表す場合は「had to」を使います。「must」には過去形がないため、過去の義務を表現できません。例えば、「I had to study all night yesterday.(昨日は一晩中勉強しなければならなかった)」のように表現します。
- 「must」と「have to」の推量の用法はどう違いますか?
-
どちらも「〜に違いない」という推量を表しますが、「must」の方がより強い確信を表します。例えば、「He must be tired.(彼は疲れているに違いない)」は強い確信、「He has to be tired.(彼は疲れているに違いない)」はやや弱い確信を表します。
- ビジネスシーンではどちらを使うべきですか?
-
ビジネスシーンでは、社内規則や業務上の必要性を表すために「have to」がよく使われます。上司から部下への指示の場合、「must」は命令的に聞こえるため、やわらかい表現として「have to」が好まれることもあります。ただし、強い義務感や決意を表したい場合は「must」も使われます。
まとめ

この記事では、英語の「must」と「have to」の違いと使い分けについて解説しました。
主な違いをまとめると以下のようになります。
- 義務の性質
- 「must」は主観的・内的な義務感や強い意思を表す
- 「have to」は客観的・外的な状況による義務を表す
- 時制の制約
- 「must」は基本的に現在形でのみ使われる
- 「have to」は様々な時制(過去形・未来形・完了形など)で使える
- 否定形の意味
- 「must not」は「〜してはいけない」(禁止)
- 「don’t have to」は「〜する必要はない」(不必要)
- 文法的特徴
- 「must」は助動詞で形が変化しない
- 「have to」は一般動詞で主語によって形が変化する(have/has)
- 推量の用法
- どちらも「〜に違いない」という推量を表せるが、「must」の方がより強い確信を表す
これらの違いを理解し、状況に応じて適切に使い分けることで、より自然で正確な英語表現ができるようになります。日常会話や文章の中で意識して使い分けてみることで、徐々に感覚が身についていくでしょう。
「must」と「have to」は英語の文法において重要な要素であり、これらを適切に使えるようになることで、あなたの英語表現の幅が広がります。ぜひこの記事を参考に、実際の会話や作文の中で練習してみてください。