英語学習において「prior to」という表現を目にしたことはありませんか?この表現は、「〜より前に」という意味を持ち、特にビジネス文書や公式な場面でよく使われます。日本人学習者にとっては、使い方や似た表現との違いが分かりにくい場合があります。
この記事では、「prior to」の基本的な意味から実際の使用例まで、初学者にも分かりやすく解説していきます。日常会話からビジネスシーンまで様々な場面で活用できるよう、簡単な例文もたくさん紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
「prior to」の基本的な意味

「prior to」は英語の前置詞句で、「〜より前に」「〜に先立って」という意味を表します。時間的な順序を示す表現として、特に公式な文書や会話で使われることが多いです。
「prior to」の意味を詳しく理解する
「prior to」は、ある出来事や時間よりも「前」を表す表現です。「prior」という単語自体は「前の」「先の」「事前の」という意味を持つ形容詞で、「to」と組み合わさることで「〜より前に」という意味の前置詞句になります。
重要なポイントとして、「prior to」はその時点を含まないという特徴があります。例えば「prior to 2020」と言えば、2020年自体は含まれず、2019年以前を指します。これは「〜以前」と訳すと誤解を招くことがあるため、「〜より前に」と訳す方が正確です。
「prior to」の読み方と発音
「prior to」の読み方は以下のとおりです。
- prior: プライアー (/ˈpraɪər/)
- to: トゥー (/tuː/)
「prior」は「プライアー」と発音し、「r」の音が最後に微かに聞こえます。「to」は単純に「トゥー」と発音します。合わせて「プライアー・トゥー」となります。
「prior to」の正しい使い方
「prior to」を正しく使うためには、いくつかの文法ルールを知っておく必要があります。初学者の方でも間違いなく使えるよう、基本的なルールを説明します。
「prior to」の後に続く言葉
「prior to」は前置詞句ですので、その後ろには次のいずれかが続きます。
- 名詞または名詞句
- Prior to the meeting(会議の前に)
- Prior to dinner(夕食の前に)
- Prior to Monday(月曜日より前に)
- 動名詞(-ing形)
- Prior to leaving home(家を出る前に)
- Prior to starting the class(授業を始める前に)
- Prior to making a decision(決断する前に)
「prior to」の後に動詞の原形を直接置くことはできません。例えば「prior to go home」は間違いで、「prior to going home」が正しい形です。
使用上の注意点
「prior to」を使う際にはいくつか注意すべき点があります。
- フォーマルな表現であるため、友達との日常会話よりも、ビジネスや学術的な場面で使われることが多いです。
- 「prior to」は前置詞句であり、接続詞として使うことはできません。「prior to he came」とは言えず、「prior to his arrival」か「before he came」が正しい形です。
- 「prior to」は時間や順序を表すときに使い、場所や位置関係を表すことはできません。
- 「prior」は比較級や最上級の形を持ちません。「more prior」や「most prior」といった表現は使いません。
「prior to」と「before」の違い
英語では「〜より前に」を意味する表現として「before」もよく使われます。「prior to」と「before」はどう違うのでしょうか。
意味の違い
基本的な意味は同じですが、使われる文脈や与える印象が異なります。
- 「before」:カジュアルで日常的な表現。時間だけでなく場所や位置関係も表せる。
- 「prior to」:よりフォーマルで公式な表現。主に時間や順序のみを表す。
例文
- I ate breakfast before going to school.(学校に行く前に朝食を食べました)
- I ate breakfast prior to going to school.(学校に行く前に朝食を食べました)
同じ意味ですが、2つ目の文はより公式な印象を与えます。
文法的な違い
「before」と「prior to」には重要な文法的違いがあります。
「before」は前置詞と接続詞の両方の役割を果たせますが、「prior to」は前置詞句としてのみ機能します。
- Before the rain started, we went inside.(接続詞として)
- We went inside before the rain.(前置詞として)
- Prior to the rain, we went inside.(前置詞句として)
Prior to the rain started, we went inside.(誤用)
「before」は副詞としても使えますが、「prior to」はそうではありません。
- I have never seen this movie before.(副詞として)
I have never seen this movie prior to.(誤用)
使用されるシーン
「before」と「prior to」が使われるシーンも異なります。
- 「before」:日常会話、非公式な文書、一般的な文章で広く使われる
- 「prior to」:ビジネス文書、学術論文、法律文書、公式発表など
例えば、友達との会話では、
例文
- Let’s meet before lunch.(昼食前に会いましょう)
ビジネスメールでは、
例文
- Please submit your report prior to the deadline.(締切前にレポートを提出してください)
「prior to」と他の類似表現
「prior to」以外にも、「〜より前に」を表す表現はいくつかあります。それぞれの違いを理解しておくと、英語での表現の幅が広がります。
「in advance」との違い
「in advance」は「前もって」「予め」という意味を持ち、何かの準備や計画のために前もって行動するというニュアンスがあります。
例文
- You need to book tickets in advance.(チケットは前もって予約する必要があります)
- Please inform us in advance if you can’t attend.(出席できない場合は前もってお知らせください)
「prior to」は単に時間的順序を示すのに対し、「in advance」は準備や予防的な行動を強調します。
「previous to」との違い
「previous to」も「〜より前に」という意味で「prior to」と非常に似ていますが、現代英語では使用頻度が低く、やや古風な表現です。
例文
- Previous to our meeting, I reviewed all the documents.(会議の前に、私はすべての書類を確認しました)
これは以下のように言い換えることができます。
例文
- Prior to our meeting, I reviewed all the documents.
「in advance of」との違い
「in advance of」も「〜より前に」を意味しますが、何かに「先駆けて」「先取りして」というニュアンスが強いです。
例文
- The team completed the project in advance of the deadline.(チームは締切に先駆けてプロジェクトを完了しました)
- The book was published in advance of the movie release.(本は映画公開に先駆けて出版されました)
「prior to」がより中立的に時間順序を示すのに対し、「in advance of」は計画的に先んじるというニュアンスを含みます。
「prior to」を使った実用的な例文
実際に「prior to」がどのように使われるのか、日常会話、ビジネス、学校生活など様々なシーンでの例文を見てみましょう。
日常生活での例文
日常生活では「before」の方がよく使われますが、より丁寧に表現したい場合には「prior to」も使われます。
例文
- I always brush my teeth prior to going to bed.(私はいつも寝る前に歯を磨きます)
- We need to clean the house prior to our guests’ arrival.(お客さんが来る前に家を掃除しなければなりません)
- My brother lived in Tokyo prior to moving to Osaka.(兄は大阪に引っ越す前に東京に住んでいました)
- Prior to using this medicine, please read the instructions.(この薬を使う前に、説明書を読んでください)
- She always drinks water prior to eating breakfast.(彼女はいつも朝食を食べる前に水を飲みます)
ビジネスシーンでの例文
ビジネスシーンではフォーマルな表現が好まれるため、「prior to」がよく使われます。
例文
- Please submit your report prior to Friday.(金曜日までにレポートを提出してください)
- All employees must attend the training prior to using the new system.(新システムを使用する前に、全従業員はトレーニングに参加しなければなりません)
- We need to complete this task prior to starting the next project.(次のプロジェクトを始める前に、このタスクを完了させる必要があります)
- The team will meet prior to the presentation to review the materials.(チームはプレゼンテーションの前に資料を確認するために集まります)
- Prior to signing the contract, please read all terms carefully.(契約書に署名する前に、すべての条件をよく読んでください)
学校生活での例文
学校生活においても「prior to」は使われることがあります。
例文
- Students must complete their homework prior to the class.(生徒は授業の前に宿題を完了させなければなりません)
- The teacher checks attendance prior to beginning the lesson.(先生は授業を始める前に出席を確認します)
- We studied this topic prior to taking the test.(私たちはテストを受ける前にこのトピックを勉強しました)
- Prior to joining the club, you need to fill out this form.(部活に入る前に、このフォームに記入する必要があります)
- The school opens one hour prior to the first class.(学校は最初の授業の1時間前に開きます)
「prior」単独での意味と使い方
「prior to」の「prior」は単独でも使われる単語です。ここでは「prior」自体の意味と使い方について見ていきましょう。
形容詞としての「prior」
形容詞としての「prior」は「前の」「先の」「事前の」「優先する」という意味を持ちます。常に名詞の前に置かれます。
例文
- She has prior experience in teaching.(彼女には以前の教育経験があります)
- No prior knowledge is needed for this course.(このコースでは事前知識は必要ありません)
- We had a prior agreement about this matter.(私たちはこの件について事前の合意がありました)
- He has a prior commitment that evening.(彼はその夜先約があります)
- This issue takes prior importance.(この問題は優先的重要性を持ちます)
「prior」を含む一般的な表現
「prior」を含む表現はいくつかあります。
- prior experience(以前の経験)
- Do you have any prior experience in this field?(この分野での以前の経験はありますか?)
- prior knowledge(事前知識)
- This class requires no prior knowledge of Spanish.(このクラスではスペイン語の事前知識は必要ありません)
- prior arrangement(事前の取り決め)
- Visitors are welcome by prior arrangement only.(訪問者は事前の取り決めがある場合のみ歓迎します)
- prior notice(事前通知)
- The company must give prior notice of any changes.(会社はいかなる変更についても事前通知を与えなければなりません)
- prior commitment(先約)
- I can’t attend due to a prior commitment.(先約があるため出席できません)
- prior approval(事前承認)
- You need prior approval from your manager.(マネージャーからの事前承認が必要です)
「prior to」に関するよくある質問
「prior to」に関してよく質問される内容についてお答えします。
- 「prior to」と「before」はどちらを使うべきですか?
-
状況によって使い分けるのが良いでしょう。
- カジュアルな会話や日常的な状況:「before」の方が自然です。
- Please call me before you leave.(出かける前に電話してください)
- ビジネス文書や公式な状況:「prior to」がより適切です。
- The documents must be submitted prior to the deadline.(書類は締切前に提出する必要があります)
- 接続詞が必要な場合:「before」を使います。
- Let’s discuss this before we make a decision.(決断する前にこれについて話し合いましょう)
- 場所や位置関係を表す場合:「before」を使います。
- He stood before the judge.(彼は裁判官の前に立った)
基本的に、日常会話では「before」を、公式な文書では「prior to」を選ぶと良いでしょう。
- カジュアルな会話や日常的な状況:「before」の方が自然です。
- 「prior to」の後に動詞を直接使えますか?
-
いいえ、「prior to」の後に動詞の原形を直接置くことはできません。動詞を使いたい場合は、動名詞(-ing形)に変える必要があります。
誤った例
Prior to go to school, I eat breakfast.
正しい例
- Prior to going to school, I eat breakfast.(学校に行く前に、私は朝食を食べます)
または、「before」を接続詞として使って表現することもできます。
- Before I go to school, I eat breakfast.
- 「prior to」は「以前」と訳してもいいですか?
-
「prior to」を「〜以前」と訳すと誤解を招くことがあります。「prior to」はその時点を含まず、「〜より前に」「〜に先立って」という意味になります。
例えば「prior to 2010」は「2010年より前」を意味し、2010年自体は含まれません。「2010年以前」と訳すと、2010年も含まれるという誤解を招く可能性があります。
より正確な訳し方は「〜より前に」「〜に先立って」です。
- Prior to the meeting(会議より前に、会議に先立って)
- Prior to leaving(出発する前に、出発に先立って)
- 「prior to」は文の最初に置くことができますか?
-
はい、「prior to」は文の最初に置くことができます。
- Prior to the exam, students should review all their notes.(試験の前に、学生は全てのノートを見直すべきです)
- Prior to making a decision, we need more information.(決断を下す前に、私たちはより多くの情報が必要です)
文の途中や最後に置くこともできます。
- We should meet prior to the conference.(会議の前に会うべきです)
- The report was submitted prior to the deadline.(レポートは締切前に提出されました)
- 「prior to」は過去形と一緒に使えますか?
-
はい、「prior to」は過去形の文でも使うことができます。
- I studied hard prior to taking the test.(テストを受ける前に一生懸命勉強しました)
- The team met prior to the game to discuss strategy.(チームは戦略を話し合うためにゲームの前に集まりました)
- She lived in Paris prior to moving to London.(彼女はロンドンに引っ越す前にパリに住んでいました)
まとめ

この記事では「prior to」の意味と使い方について詳しく解説しました。主なポイントは以下の通りです。
- 「prior to」は「〜より前に」「〜に先立って」という意味を持つ前置詞句
- フォーマルな表現で、ビジネス文書や学術的な場面でよく使われる
- 「prior to」の後ろには名詞または動名詞(-ing形)が来る
- 「prior to」はその時点を含まないので、「〜以前」と訳すのは正確ではない
- 日常会話では「before」の方がよく使われる
- 「before」とは異なり、「prior to」は接続詞として使えない
- 「before」は場所や位置関係も表せるが、「prior to」は時間や順序のみを表す
- 形容詞の「prior」は「前の」「先の」「事前の」「優先する」という意味を持つ
- 「prior experience」「prior knowledge」など、「prior」を含む一般的な表現がある
「prior to」と「before」はどちらも「〜より前に」という意味を持ちますが、状況に応じて適切な方を選ぶことが大切です。フォーマルな状況では「prior to」、カジュアルな状況では「before」が適しています。また、接続詞として使いたい場合は「before」を選ぶ必要があります。
これらの知識を活用して、より正確で状況に合った英語表現ができるようになりましょう。「prior to」の使い方をマスターすれば、ビジネス英語や学術的な英語での表現の幅が広がります。