海外旅行を計画する際、多くの日本人が不安に感じるのが言葉の壁です。英語初学者にとって、現地でのコミュニケーションは旅行の楽しさを大きく左右する要因となります。
この記事では、世界各国の英語能力指数に基づいて、英語が通じやすい国と通じにくい国をランキング形式でご紹介します。また、英語初学者が海外旅行で気をつけるべきポイントや、効果的なコミュニケーション方法についても詳しく解説していきます。
英語能力指数とは何か

英語能力指数(EF EPI)は、英語を母国語としない国々の英語力を測定する国際的な指標です。毎年116カ国および地域から約210万人が参加するテストデータに基づいて算出されており、各国の英語教育水準や国際的なコミュニケーション能力を客観的に評価しています。
この指数は「非常に高い」「高い」「標準的」「低い」「非常に低い」の5段階で評価され、観光業界や教育関係者、そして海外旅行を計画する人々にとって重要な参考資料となっています。
特に旅行先を選ぶ際には、現地でのコミュニケーションのしやすさを予測する上で非常に有用な情報源となります。
英語が通じやすい国ランキング(上位15カ国)
世界で最も英語が通じやすい国々をランキング形式でご紹介します。
これらの国々では、観光地はもちろん、一般的な店舗や交通機関でも英語でのコミュニケーションが比較的スムーズに行えます。
ヨーロッパ諸国が上位を独占
順位 | 国名 | 英語能力レベル | スコア |
---|---|---|---|
1位 | オランダ | 非常に高い | 636 |
2位 | ノルウェー | 非常に高い | 610 |
3位 | シンガポール | 非常に高い | 609 |
4位 | スウェーデン | 非常に高い | 608 |
5位 | クロアチア | 非常に高い | 607 |
6位 | ポルトガル | 非常に高い | 605 |
7位 | デンマーク | 非常に高い | 603 |
8位 | ギリシャ | 非常に高い | 602 |
9位 | オーストリア | 非常に高い | 600 |
10位 | ドイツ | 高い | 598 |
11位 | 南アフリカ | 高い | 594 |
12位 | ルーマニア | 高い | 593 |
13位 | ベルギー | 高い | 592 |
14位 | フィンランド | 高い | 590 |
15位 | ポーランド | 高い | 588 |
上位国の特徴と旅行のしやすさ
オランダが4年連続で1位を獲得している理由は、同国の充実した英語教育システムにあります。幼少期から英語に触れる機会が多く、大学教育でも英語での授業が一般的となっています。アムステルダムやロッテルダムなどの主要都市では、英語だけで観光を楽しむことができます。
北欧諸国(ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランド)も上位にランクインしており、これらの国々では英語教育が非常に重視されています。特に若い世代の英語力は母国語に近いレベルに達しており、観光客にとって非常に親しみやすい環境が整っています。
アジアからはシンガポールが3位にランクインしています。多民族国家として英語が公用語の一つとなっており、観光業も発達しているため、英語初学者にとって訪れやすい国の一つです。
英語が通じにくい国ランキング(下位10カ国)
一方で、英語でのコミュニケーションが困難な国々も存在します。
これらの国々では、現地語での基本的なフレーズを覚えたり、翻訳アプリを活用したりする準備が特に重要になります。
アジア地域の英語力の現状
順位 | 国名 | 英語能力レベル | スコア |
---|---|---|---|
65位 | トルコ | 低い | 497 |
73位 | スリランカ | 低い | 486 |
80位 | インドネシア | 低い | 468 |
84位 | モンゴル | 低い | 464 |
88位 | キルギス | 低い | 457 |
91位 | 中国 | 低い | 455 |
92位 | 日本 | 低い | 454 |
日本は116カ国中92位という結果で、これは過去最低の順位となっています。アジア地域では23カ国中16位という位置づけです。
隣国の韓国も50位と、東アジア地域全体的に英語力の向上が課題となっています。
地域別の英語普及状況
中東・北アフリカ地域では、アラビア語やペルシャ語が主流となっており、英語の普及率は比較的低い傾向にあります。
南米エクアドルのような国々では、スペイン語が圧倒的に優勢で、空港などの公共施設でも英語が通じない場合があります。
東南アジアでは国によって大きな差があり、フィリピンやマレーシアでは英語が比較的通じる一方、ベトナムやタイでは観光地以外では現地語が中心となります。
地域別英語普及度の詳細分析
世界の各地域における英語の普及状況を詳しく見ていくと、歴史的背景や教育政策の違いが大きく影響していることがわかります。
ヨーロッパ地域の英語事情
ヨーロッパは世界で最も英語力が高い地域として知られています。EU統合の影響で国境を越えた交流が活発になり、共通言語としての英語の重要性が高まっています。特に観光業が盛んな国々では、英語でのサービス提供が標準化されています。
しかし、南欧の一部では英語力にばらつきがあります。イタリアは46位、フランスは49位と、他のヨーロッパ諸国と比較して低い水準にあります。これは自国の言語や文化に対する強い誇りが影響している面もあります。
アジア太平洋地域の多様性
アジア太平洋地域では、国によって英語力に大きな格差があります。シンガポール、フィリピン、マレーシアなど、英語が公用語または準公用語となっている国々では高い英語力を示しています。
一方、中国本土では急速な経済発展にも関わらず英語力は91位と低く、これは漢字文化圏特有の言語的な壁が存在することを示しています。ただし、上海や北京などの大都市部では英語教育が強化されており、若い世代を中心に英語力の向上が見られます。
アフリカ大陸の英語圏
アフリカ大陸では、旧イギリス植民地を中心に英語が広く使用されています。南アフリカ、ケニア、ウガンダ、ナイジェリアなど、20カ国以上で英語が公用語または準公用語となっています。
特に東アフリカでは、英語とスワヒリ語の両方を話せる人が多く、都市部では英語でのコミュニケーションが可能です。ただし、地方部では現地語が中心となるため、旅行の際は注意が必要です。
英語初学者向け旅行先選びのポイント
英語学習を始めたばかりの方が海外旅行先を選ぶ際には、いくつかの重要なポイントを考慮する必要があります。
観光インフラの充実度
英語能力指数が高い国でも、観光インフラが未発達だと言語以外の面で困難を感じる場合があります。逆に、英語力がそれほど高くない国でも、観光業が発達している地域では英語対応のサービスが充実している場合があります。
タイやインドネシアのバリ島などは、英語能力指数は低めですが、観光地では英語が通じやすく、メニューや案内板にも英語表記があることが多いです。これは観光業に従事する人々が実践的な英語を身につけているためです。
文化的親和性の考慮
言語だけでなく、文化的な親和性も旅行の快適さに大きく影響します。同じ英語圏でも、アメリカとイギリスでは文化や習慣に違いがあります。初学者の場合は、日本人観光客が多く訪れる国や地域を選ぶことで、緊急時のサポートを受けやすくなります。
カナダのバンクーバーやオーストラリアのメルボルンなどは、日本人コミュニティが存在し、英語学習者にとって比較的安心して滞在できる環境が整っています。
地理的・経済的要因
旅行先までの距離や旅行費用も重要な選択要因です。英語圏の国々は一般的に物価が高い傾向にあるため、予算との兼ね合いも考慮する必要があります。
アジア圏では、シンガポールやマレーシアが英語力が高く、日本からのアクセスも良好です。特にマレーシアは物価が比較的安く、英語初学者の練習場所として適しています。
海外旅行で役立つ基本英語フレーズ
英語初学者が海外旅行で最低限必要となる基本的なフレーズを場面別にご紹介します。完璧な文法よりも、相手に意図を伝えることが重要です。
空港・交通機関での基本フレーズ
空港や駅などの交通機関では、以下のフレーズが役立ちます。「Excuse me, where is the gate 25?」(すみません、25番ゲートはどこですか)や「How can I get to the city center?」(市内中心部にはどうやって行けますか)などの基本的な道案内の表現を覚えておくと安心です。
チケット購入の際には、「I’d like to get a ticket to Tokyo」(東京行きのチケットが欲しいです)のように、「I’d like to」を使った丁寧な表現を心がけましょう。「I want」よりも丁寧で、相手に良い印象を与えます。
ホテルでの基本的なやり取り
ホテルでのチェックイン時には、「I have a reservation under the name of Tanaka」(田中の名前で予約をしています)というフレーズが基本となります。問題が発生した場合は、「There is something wrong with my key」(鍵に問題があります)のように、「There is something wrong with」を使って状況を説明できます。
朝食やWi-Fiについて尋ねる際は、「Is breakfast included?」(朝食は含まれていますか)や「What’s the Wi-Fi password?」(Wi-Fiのパスワードは何ですか)などの表現を覚えておくと便利です。
レストランでの注文方法
レストランでは、メニューを指しながら「I’d like this, please」(これをお願いします)と言うだけでも十分通じます。飲み物を注文する際は、「Could I have some water, please?」(お水をいただけますか)のように丁寧な表現を使いましょう。
食物アレルギーがある場合は、「I’m allergic to nuts」(ナッツアレルギーです)のように明確に伝えることが重要です。命に関わる場合もあるため、事前に関連する単語を調べておくことをお勧めします。
非英語圏での効果的なコミュニケーション術
英語が通じにくい国や地域でも、工夫次第で円滑なコミュニケーションを図ることができます。
ジェスチャーと視覚的コミュニケーション
言葉が通じない場合は、ジェスチャーや身振り手振りが有効です。数字は指で示すことができ、方向は手で指すことで伝わります。また、スマートフォンの写真や地図を見せることで、行きたい場所や欲しいものを具体的に示すことができます。
笑顔は世界共通の言語です。言葉が分からなくても、笑顔で接することで相手との距離を縮めることができ、助けてもらいやすい雰囲気を作ることができます。
翻訳アプリとテクノロジーの活用
現代の翻訳アプリは非常に高性能で、リアルタイム翻訳機能を持つものもあります。Google翻訳やDeepLなどのアプリを事前にダウンロードしておくことで、困った時の心強い味方となります。
オフライン機能がある翻訳アプリを選ぶことで、インターネット接続がない場所でも使用できます。また、写真翻訳機能を使えば、メニューや看板の文字をカメラで撮影するだけで翻訳することができます。
現地語の基本フレーズの習得
訪問する国の基本的な挨拶や感謝の言葉を覚えておくと、現地の人々との関係が良好になります。「こんにちは」「ありがとう」「すみません」などの簡単なフレーズでも、現地語で話すことで相手に対する敬意を示すことができます。
特に非英語圏では、現地語での挨拶を心がけることで、相手が英語で助けてくれることが多くなります。現地の人々は、外国人が自分たちの言語を話そうとする努力を評価し、親切に対応してくれる傾向があります。
英語圏と非英語圏の違いと対策
英語圏と非英語圏では、旅行時の準備や心構えが大きく異なります。それぞれの特徴を理解して適切な対策を立てることが重要です。
英語圏旅行の特徴と準備
英語圏の国々では、日常的な場面で英語が使用されているため、基本的な英会話能力があれば多くの状況に対応できます。しかし、地域によってアクセントや表現に違いがあるため、事前に現地の英語の特徴を知っておくことが有効です。
イギリス英語とアメリカ英語では発音や語彙に違いがあり、オーストラリア英語やニュージーランド英語にもそれぞれ独特の特徴があります。これらの違いを理解しておくことで、現地でのコミュニケーションがスムーズになります。
非英語圏旅行での工夫
非英語圏では、英語が通じる場所が限られているため、より綿密な準備が必要です。主要な観光地やホテル、空港では英語対応のスタッフがいることが多いですが、地方や一般的な店舗では現地語が中心となります。
事前に訪問する場所の言語情報を調べ、基本的な現地語フレーズを覚えておくことが重要です。また、宿泊先や主要な観光地の名前を現地語で書いたメモを用意しておくと、タクシーの運転手や道を尋ねる際に役立ちます。
緊急時の対応方法
英語圏・非英語圏を問わず、緊急時の対応方法を事前に確認しておくことは必須です。各国の緊急電話番号、最寄りの日本領事館の連絡先、海外旅行保険の連絡先などを携帯しておきましょう。
また、「Help me, please」(助けてください)や「I need a doctor」(医者が必要です)などの緊急時に使用するフレーズは、どの国を訪問する場合でも覚えておくべき重要な表現です。
旅行英語のよくある間違いと注意点
英語初学者が海外旅行で犯しがちな間違いを理解し、事前に対策を立てることで、より快適な旅行を楽しむことができます。
文法よりも伝達を重視する
多くの日本人学習者は完璧な文法で話そうとして、結果的にコミュニケーションが停滞してしまうことがあります。海外旅行では、文法の正確性よりも相手に意図を伝えることが最優先です。
単語を並べるだけでも十分に意味は通じます。「Water, please」(水をください)や「Station, where?」(駅はどこですか)のような簡単な表現でも、ジェスチャーと組み合わせることで効果的にコミュニケーションを取ることができます。
丁寧さの表現における注意点
「Please」を付ければ丁寧になると考える人が多いですが、命令形に「Please」を付けただけでは、相手によっては押し付けがましく感じられる場合があります。「Can you」や「Could you」を使った疑問形の方が、相手の意思を尊重する丁寧な表現となります。
また、「I want」は直接的すぎる表現として受け取られることがあります。「I’d like」を使うことで、より丁寧で大人らしい印象を与えることができます。
発音に関する過度な心配
日本人学習者は発音を過度に気にして話すことを躊躇する傾向がありますが、実際には多少の発音の違いがあっても意味は通じます。重要なのは、大きな声ではっきりと話すことです。
ネイティブスピーカーも、外国人の発音に慣れており、文脈から意味を理解しようと努めてくれます。完璧な発音よりも、積極的にコミュニケーションを取ろうとする姿勢の方が重要です。
文化的な違いへの配慮不足
言語だけでなく、文化的な違いも理解しておくことが重要です。同じ英語でも、国や地域によって使用される表現や礼儀作法が異なります。
例えば、アメリカでは店員が「How are you?」と挨拶することが一般的ですが、これは本当に体調を尋ねているわけではなく、単なる挨拶として使われています。「I’m good, thank you. How are you?」と返すのが適切な対応です。
旅行前の英語学習効率化のコツ
限られた時間で効果的に旅行英語を身につけるための学習方法をご紹介します。
場面別フレーズの重点学習
旅行で使用する英語は、ある程度パターンが決まっています。空港、ホテル、レストラン、ショッピング、観光地など、具体的な場面を想定してフレーズを覚えることで、実用性の高い英語力を短期間で身につけることができます。
各場面で使用頻度の高いフレーズを優先的に学習し、反復練習を行うことが効果的です。単語帳よりも、実際の会話形式で練習することで、自然な表現を身につけることができます。
音声教材の活用
リスニング力の向上は、海外旅行での英語コミュニケーションにおいて極めて重要です。相手の言っていることが理解できれば、簡単な単語での返答でも十分にコミュニケーションが成立します。
旅行英語に特化した音声教材やポッドキャストを活用し、実際の会話スピードに慣れておくことが重要です。通勤時間などの隙間時間を有効活用して、継続的にリスニング練習を行いましょう。
アプリとオンライン学習の効果的な利用
スマートフォンアプリやオンライン学習プラットフォームを活用することで、いつでもどこでも英語学習を継続できます。特に旅行英語に特化したアプリでは、場面別の会話練習や発音チェック機能が充実しています。
ゲーム感覚で学習できるアプリを選ぶことで、モチベーションを維持しながら継続的に学習することができます。また、音声認識機能を使った発音練習は、実際の会話に備える上で非常に効果的です。
「英語が通じる国・通じない国」に関するよくある質問
- 英語が通じやすい国は本当に初心者でも安心して旅行できますか。
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英語能力指数が高い国でも、地方部では英語が通じにくい場合があります。都市部や観光地では比較的安心ですが、基本的なフレーズの準備は必要です。また、現地の人々も完璧な英語を期待しているわけではないので、積極的にコミュニケーションを取る姿勢が大切です。
- 英語が通じにくい国でも個人旅行は可能でしょうか。
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翻訳アプリや基本的な現地語フレーズを覚えておけば、個人旅行も十分可能です。ただし、緊急時の対応方法や重要な場所の現地語での名称を事前に調べておくことが重要です。観光地では英語対応のスタッフがいることも多いので、完全に諦める必要はありません。
- 日本人が多い観光地なら英語力は必要ないでしょうか。
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日本人観光客が多い地域では日本語対応のサービスがあることもありますが、基本的な英語力があった方が旅行の幅が広がります。現地の人々との交流や、予想外の状況への対応を考えると、最低限の英語コミュニケーション能力は身につけておくことをお勧めします。
- 英語圏の国でも地域によって難易度は違いますか。
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同じ英語圏でも、アクセントや使用される表現に大きな違いがあります。イギリス英語、アメリカ英語、オーストラリア英語それぞれに特徴があり、慣れ親しんだ英語と異なる場合は最初は戸惑うかもしれません。しかし、基本的な意思疎通には大きな問題はありません。
まとめ

この記事では、世界各国の英語能力指数に基づいて、英語が通じやすい国と通じにくい国の特徴、そして英語初学者が海外旅行を成功させるためのポイントについて詳しく解説してきました。
言語の壁は確かに存在しますが、適切な準備と心構えがあれば、どの国でも素晴らしい旅行体験を得ることができます。
重要なポイント
- オランダ、ノルウェー、シンガポールなどが英語能力指数で上位を占めている
- ヨーロッパ諸国は全体的に英語力が高く、観光しやすい環境が整っている
- アジア地域では国による英語力の格差が大きい
- 英語が通じにくい国でも翻訳アプリや基本フレーズで対応可能
- 完璧な英語よりもコミュニケーションを取ろうとする姿勢が重要
- 場面別のフレーズ学習が旅行英語習得の近道
- 非英語圏では現地語の基本的な挨拶を覚えることが効果的
- 緊急時の対応方法は事前に必ず確認しておく
- 文化的な違いも理解して適切なコミュニケーションを心がける
- 継続的な学習がより充実した旅行体験につながる
海外旅行は語学学習の大きなモチベーションとなり、実践的な英語力を身につける絶好の機会でもあります。この記事で紹介した情報を参考に、ぜひ積極的に海外旅行にチャレンジして、世界各国の素晴らしい文化や人々との出会いを楽しんでください。
言葉の壁を乗り越えた先には、きっと忘れられない体験が待っています。