英語学習者にとって、似たような意味を持つ単語の違いを理解することは大きな課題です。特に「say」と「tell」は日本語ではどちらも「言う」と訳されることが多いため、混乱しやすい単語ペアのひとつです。しかし、これらには明確な使い分けのルールがあります。
本記事では、英語初学者の方でも理解できるよう、「say」と「tell」の基本的な意味の違いから実践的な使い方まで、豊富な例文とともに詳しく解説します。これらの動詞を適切に使い分けられるようになれば、英語でのコミュニケーション能力が大きく向上するでしょう。
「say」と「tell」の基本的な意味の違い

「say」と「tell」はどちらも「言う」という意味を持ちますが、その焦点は大きく異なります。「say」は主に「何を言ったか」という内容に焦点を当てる動詞です。一方、「tell」は「誰に言ったか(伝えたか)」という相手への伝達に焦点を当てる動詞です。
この基本的な違いを理解することが、正しい使い分けの第一歩となります。「say」は発言内容そのものを重視し、「tell」は情報を誰かに伝えるという行為を重視します。日本語の「言う」だけでは区別しにくいこの微妙な違いが、英語では重要な使い分けのポイントになるのです。
英語の会話や文章では、この違いに基づいて適切な動詞を選ぶ必要があります。次のセクションからは、それぞれの具体的な使い方と例文を見ていきましょう。
「say」の基本的な使い方と例文
「say」は「言う」「述べる」という意味で、主に「何を言ったか」という内容に焦点を当てます。「say」は特に誰に向かって言ったかを明示する必要がなく、発言内容が重要な場合に使われます。
例文
- He said, “I am happy.”(彼は「私は幸せです」と言った。)
- She said that she would come tomorrow.(彼女は明日来ると言った。)
- What did you say? I couldn’t hear you.(何て言ったの?聞こえなかったよ。)
「say」は直接話法(かぎかっこ内の言葉をそのまま引用する方法)と間接話法(伝聞として内容を伝える方法)の両方で頻繁に使われます。また、「say」は誰に言ったかを示す必要がある場合は「say to」という形を使います。
例文
- I said to him, “Please help me.”(私は彼に「手伝ってください」と言った。)
- She said to her mother that she was tired.(彼女は母親に疲れていると言った。)
このように、「say」は発言内容そのものに焦点を当てる場合に使用する基本的な動詞です。
「say」を使った日常会話表現
「say」は日常会話でも頻繁に使われる単語です。特によく使われる表現をいくつか紹介します。
例文
- Say hello to your family for me.(ご家族によろしくお伝えください。)
- I don’t know what to say.(何と言っていいかわかりません。)
- Let’s say we meet at 3 o’clock.(3時に会うということにしましょう。)
- She always says nice things about you.(彼女はいつもあなたのことを良く言っています。)
- Can you say that again?(もう一度言ってもらえますか?)
これらの表現は日常的なコミュニケーションでよく使われるため、覚えておくと便利です。「say」は単に言葉を発するという意味だけでなく、意見を述べる、提案するなどのニュアンスも持ちます。
「say」を使った慣用表現
「say」を使った慣用表現も数多く存在します。これらの表現は丸ごと覚えておくと役立ちます。
例文
- I must say, this cake is delicious.(言っておきますが、このケーキはおいしいです。)
- That is to say, we need more time.(つまり、もっと時間が必要だということです。)
- It’s hard to say when he will arrive.(彼がいつ到着するか言うのは難しいです。)
- So to say, he is a living legend.(いわば、彼は生きる伝説です。)
- To say the least, I was surprised.(控えめに言っても、私は驚きました。)
これらの慣用表現は会話をより自然に、そして豊かにしてくれます。日本語にも完全に対応する表現がないものもあるため、使い方と意味を理解することが大切です。
「tell」の基本的な使い方と例文
「tell」は「伝える」「話す」という意味で、主に「誰に伝えたか」という相手への伝達に焦点を当てます。「tell」は必ず誰かに対して情報を伝える際に使われ、多くの場合、目的語として人を取ります。
例文
- She told me about her trip.(彼女は私に旅行について話してくれた。)
- The teacher told the students to be quiet.(先生は生徒たちに静かにするよう言った。)
- Can you tell us the way to the station?(駅への道を教えていただけますか?)
「tell」の基本的な構文は「tell + 人 + 内容」となります。この「人」が省略されることはほとんどなく、常に誰かに対して何かを伝えるという形になります。
例文
- He told her the truth.(彼は彼女に真実を伝えた。)
- I told my brother about the party.(私は弟にパーティーについて話した。)
- Please tell me your name.(あなたの名前を教えてください。)
このように「tell」は情報の伝達先を明確にする場合に使われる動詞です。
「tell」を使った日常会話表現
「tell」も日常会話でよく使われる動詞です。特に頻繁に使われる表現をいくつか紹介します。
例文
- Can you tell me the time?(時間を教えてもらえますか?)
- Tell me about yourself.(あなた自身について教えてください。)
- Don’t tell anyone our secret.(私たちの秘密を誰にも言わないで。)
- She told me to wait here.(彼女は私にここで待つように言った。)
- I can’t tell the difference between these two pictures.(この2枚の写真の違いがわかりません。)
「tell」は情報を伝える以外にも、命令や指示を出す、区別する、嘘をつくなど、様々な意味で使われます。これらの表現は日常生活でよく使われるので、使い方を覚えておくと便利です。
「tell」を使った慣用表現
「tell」を使った慣用表現も数多くあります。これらの表現は会話をより自然にするために覚えておくと良いでしょう。
例文
- I can tell that you’re tired.(あなたが疲れているとわかります。)
- Time will tell if we made the right decision.(正しい決断をしたかどうかは時間が教えてくれるでしょう。)
- Don’t tell me you forgot the keys again!(鍵をまた忘れたなんて言わないで!)
- He told a lie about where he was last night.(彼は昨晩どこにいたかについて嘘をついた。)
- Let me tell you a story about my childhood.(私の子供時代についての話をさせてください。)
これらの慣用表現は、「tell」の基本的な意味である「伝える」から派生していますが、それぞれ独自のニュアンスを持っています。慣用表現は文脈によって意味が変わることもあるので、実際の使用例を通して理解することが大切です。
「say」と「tell」の構文の違い
「say」と「tell」の最も大きな違いのひとつは、それぞれの動詞が取る構文パターンです。この構文の違いを理解することで、正しく使い分けることができるようになります。
「say」の基本構文
「say」の基本構文は以下のようになります。
- say + 内容
- He said, “I’m hungry.”(彼は「お腹がすいた」と言った。)
- She said that she was busy.(彼女は忙しいと言った。)
- say + 内容 + to + 人
- He said goodbye to me.(彼は私にさようならと言った。)
- She said something to her friend.(彼女は友達に何か言った。)
「say」は基本的に「何を言ったか」に焦点を当てるため、内容が主要な要素となります。誰に言ったかを示す場合は「to + 人」の形を取ります。これは、情報の流れが「内容 → 人」という順序になることを示しています。
「tell」の基本構文
「tell」の基本構文は以下のようになります。
- tell + 人 + 内容
- He told me the news.(彼は私にニュースを伝えた。)
- She told her parents about the accident.(彼女は両親に事故について話した。)
- tell + 人 + to + 動詞の原形(命令・指示)
- The teacher told the students to be quiet.(先生は生徒たちに静かにするよう言った。)
- My mother told me to clean my room.(母は私に部屋を掃除するよう言った。)
- tell + 人 + 疑問詞節
- Can you tell me where the station is?(駅がどこにあるか教えてもらえますか?)
- She told us how to make sushi.(彼女は私たちに寿司の作り方を教えてくれた。)
「tell」は「誰に伝えたか」に焦点を当てるため、人が目的語として必須の要素となります。情報の流れが「人 → 内容」という順序になり、相手への伝達を重視していることがわかります。
この構文の違いが、「say」と「tell」の最も基本的な使い分けのポイントです。「say」は内容が主役、「tell」は相手が主役と考えると理解しやすいでしょう。
「say」と「tell」の使い分けのコツ
「say」と「tell」を正しく使い分けるには、いくつかのコツがあります。ここでは実際の使用場面に基づいた使い分けのポイントを紹介します。
「何を言ったか」を重視する場合は「say」
「何を言ったか」という内容が重要な場合は「say」を使います。特に以下のような状況で「say」が使われます。
- 発言内容を直接引用するとき
- He said, “I will help you.”(彼は「手伝うよ」と言った。)
- The child said, “I want ice cream.”(子供は「アイスクリームが欲しい」と言った。)
- 発言内容を間接的に伝えるとき
- She said that she was tired.(彼女は疲れていると言った。)
- They said they would come to the party.(彼らはパーティーに来ると言った。)
- 意見や考えを述べるとき
- What do you say about this idea?(この考えについてどう思いますか?)
- Many people say that exercise is important.(多くの人は運動が重要だと言います。)
「say」は発言の内容自体に焦点を当てるので、「何を言ったか」が重要な場面で使われます。誰に言ったかを示す必要がある場合は「say to」の形を使いますが、これは必須ではありません。
「誰に伝えたか」を重視する場合は「tell」
「誰に伝えたか」という相手への伝達が重要な場合は「tell」を使います。特に以下のような状況で「tell」が使われます。
- 情報を特定の相手に伝えるとき
- I told my friend about the movie.(私は友達に映画について話した。)
- She told her mother the good news.(彼女は母親に良いニュースを伝えた。)
- 命令や指示を与えるとき
- The teacher told the students to open their books.(先生は生徒たちに本を開くよう言った。)
- My father told me not to be late.(父は私に遅れないようにと言った。)
- 物語や情報を語るとき
- She told us an interesting story.(彼女は私たちに面白い話をしてくれた。)
- Can you tell me the way to the station?(駅への道を教えてください。)
「tell」は情報の受け手を明確にするため、常に「誰に伝えたか」が文の中で示されます。この点が「say」との大きな違いです。
これらのコツを覚えておくと、「say」と「tell」の使い分けがより明確になります。実際の会話では、「何を言ったか」と「誰に伝えたか」のどちらを重視するかで適切な動詞を選ぶことが大切です。
「say」と「tell」の類似表現との違い
「say」と「tell」以外にも、「話す」という意味を持つ動詞は英語にはいくつかあります。ここでは、「speak」と「talk」という類似表現との違いを解説します。
「speak」との違い
「speak」は「言語を話す」「発言する」という意味を持つ動詞です。「say」や「tell」と異なる点は以下の通りです。
- 言語を話す能力や行為を表す
- He can speak three languages.(彼は3つの言語を話せます。)
- She speaks English very well.(彼女は英語をとても上手に話します。)
- 公式な場での発言を表す
- The president will speak at the ceremony.(大統領は式典でスピーチをします。)
- She spoke to the audience about climate change.(彼女は聴衆に気候変動について話しました。)
- 直接誰かに話しかける
- I need to speak to you about something important.(重要なことについてあなたと話す必要があります。)
- She hasn’t spoken to her brother for years.(彼女は何年も弟と話していません。)
「speak」は言語能力や発言行為そのものに焦点を当てるのに対し、「say」は発言内容、「tell」は情報伝達に焦点を当てています。「speak」は「with」や「to」と共に使われることが多く、会話の相手を示します。
例文
- I spoke with my teacher yesterday.(昨日先生と話しました。)
- Can I speak to the manager?(マネージャーと話せますか?)
「talk」との違い
「talk」は「会話する」「おしゃべりする」という意味を持つ動詞です。「say」や「tell」と異なる点は以下の通りです。
- 双方向のコミュニケーションを表す
- We talked about our future plans.(私たちは将来の計画について話し合いました。)
- She likes to talk with her friends on the phone.(彼女は電話で友達とおしゃべりするのが好きです。)
- 特定のトピックについて会話する
- Let’s talk about the project.(プロジェクトについて話し合いましょう。)
- They were talking about politics.(彼らは政治について話していました。)
- 単なる会話行為を表す
- The children are talking too loudly.(子供たちはあまりにも大きな声で話しています。)
- She talks in her sleep.(彼女は寝言を言います。)
「talk」は会話という行為そのものに焦点を当てるのに対し、「say」は発言内容、「tell」は情報伝達に焦点を当てています。「talk」は「to」や「with」と共に使われ、会話の相手を示します。
例文
- I need to talk to you.(あなたと話す必要があります。)
- She talks with her mother every day.(彼女は毎日母親と話します。)
これらの類似表現を理解することで、英語の「話す」に関する表現をより正確に使い分けることができるようになります。それぞれの動詞が持つニュアンスの違いを把握することが、自然な英語表現のカギとなります。
「say」と「tell」の使い分け練習問題
英語の動詞「say」と「tell」は、どちらも「言う」という意味を持ちますが、使用法に重要な違いがあります。「say」は主に「何を言うか」に焦点を当て、「tell」は「誰に言うか」に焦点を当てます。以下の練習問題では、適切な動詞の形を選ぶことで、これらの違いをマスターできるでしょう。
- Can you _____ me the time? I forgot my watch.
- He _____ that he would come to the party.
- She _____ goodbye to her friends before leaving.
- Please _____ us the truth about what happened.
- The teacher _____ the students to be quiet.
- She couldn’t _____ the difference between the twins.
- My mother _____ me not to be late.
- He _____ “I’m sorry” after the mistake.
- Could you _____ me how to get to the station?
- The doctor _____ that I should rest for a few days.
- She _____ a funny joke at the party.
- He didn’t _____ anything about the accident.
- My father _____ me to be home by midnight.
- Can you _____ hello to your parents for me?
- The guide _____ us about the history of the castle.
- He _____ his opinion during the meeting.
- She _____ me a story before I went to sleep.
- They _____ that they would help us move.
- Please _____ your name clearly.
- The manager _____ everyone that there would be changes.
これらの問題を通して、「say」と「tell」の基本的な使い分けを練習しましょう。特に構文の違いに注目することが大切です。「say」は発言内容に焦点を当て、「tell」は相手への伝達に焦点を当てています。
「say」と「tell」に関するよくある質問
- 「say」と「tell」はどのように使い分ければいいですか?
-
基本的に「say」は「何を言ったか」という内容に焦点を当て、「tell」は「誰に伝えたか」という相手への伝達に焦点を当てます。「say」は「say + 内容 (+ to 人)」の形、「tell」は「tell + 人 + 内容」の形を取ります。内容が重要な場合は「say」、相手が重要な場合は「tell」を使うと覚えておくとよいでしょう。
- 「tell」の後に「that」節は使えますか?
-
はい、「tell + 人 + that節」の形で使うことができます。例えば「She told me that she was tired.(彼女は私に疲れていると言った)」のように使います。ただし、「say」の場合は「say + that節 (+ to 人)」となり、「say」と「tell」では語順が異なるので注意が必要です。
- 「say」で命令を表すことはできますか?
-
「say」自体で命令を表すことはあまり一般的ではありません。命令や指示を与える場合は「tell + 人 + to + 動詞の原形」という形の「tell」を使うのが一般的です。例えば「He told me to wait here.(彼は私にここで待つように言った)」のように使います。
- 「tell a story」と「say a story」はどちらが正しいですか?
-
「tell a story」が正しい表現です。物語を語る場合は「tell」を使います。「say a story」という表現は一般的ではありません。同様に「tell a joke(冗談を言う)」「tell a lie(嘘をつく)」など、まとまった内容を伝える場合は「tell」を使います。
- 「say」と「tell」の過去形と過去分詞形は?
-
「say」の過去形は「said」、過去分詞も「said」です。「tell」の過去形は「told」、過去分詞も「told」です。どちらも不規則変化する動詞なので、形をしっかり覚えておく必要があります。
- 「tell」と「speak」はどう違いますか?
-
「tell」は情報や物語を誰かに伝えることを意味し、常に「tell + 人 + 内容」の形を取ります。一方、「speak」は言語を話す能力や行為を表したり、公の場で話したりすることを意味します。「speak」は「speak to/with + 人」という形で使われることが多いです。
- 「say」と「talk」はどう違いますか?
-
「say」は発言内容に焦点を当て、一方通行のコミュニケーションを表します。対して「talk」は会話という双方向のコミュニケーションを表します。「talk」は「talk to/with + 人」という形で使われ、会話の相手を示します。
- 「tell the truth」と「say the truth」はどちらが正しいですか?
-
「tell the truth」が一般的な表現です。真実を伝えるという行為は「tell」で表されることが多いです。「say the truth」も文法的には間違いではありませんが、「tell the truth」の方が一般的です。
- 間接話法で使うのは「say」と「tell」のどちらが適切ですか?
-
どちらも間接話法で使うことができますが、構文が異なります。「say」は「say (that) + 節」の形、「tell」は「tell + 人 + (that) + 節」の形になります。発言内容を重視する場合は「say」、誰に伝えたかを重視する場合は「tell」を使います。
- 「say to yourself」と「tell yourself」はどう違いますか?
-
「say to yourself」は自分自身に何かを言う(独り言を言う)場合に使われ、「tell yourself」は自分自身に何かを納得させようとする場合によく使われます。例えば「I said to myself, “This is interesting.”(私は独り言で「これは面白い」と言った)」「I told myself not to worry.(私は心配しないよう自分に言い聞かせた)」のような違いがあります。
まとめ

本記事では「say」と「tell」の意味の違いと使い分けについて詳しく解説しました。以下にポイントをまとめます。
- 「say」は「何を言ったか(内容)」に焦点を当て、「tell」は「誰に伝えたか(相手)」に焦点を当てる。
- 「say」の基本構文は「say + 内容 (+ to 人)」、「tell」の基本構文は「tell + 人 + 内容」。
- 「say」は引用(直接・間接)でよく使われる。
- 「tell」は命令・指示、物語を語る、情報を伝えるときによく使われる。
- 「say」は内容が主役、「tell」は相手が主役と考えると理解しやすい。
- 「speak」は言語能力や公式な発言に、「talk」は双方向の会話に使われる。
- 慣用表現(tell a story, say goodbye など)は丸ごと覚えると便利。
- 練習問題を解きながら使い分けの感覚を身につけることが大切。
「say」と「tell」の違いと使い分けを理解することで、英語でのコミュニケーション能力が向上します。特に初学者の方は、基本的な構文の違いをしっかり覚え、多くの例文に触れることで使い分けの感覚を身につけていきましょう。
日々の英語学習の中で意識して使うことで、徐々に自然な英語表現ができるようになります。