「strategy(戦略)」と「tactic(戦術)」は、ビジネスやスポーツ、軍事など様々な場面で使われる重要な英単語です。日本語でも「戦略」と「戦術」という言葉はよく使われますが、その違いを明確に理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。
この記事では、英語初学者の方にもわかりやすく、「strategy」と「tactic」の意味の違いや使い分け方を詳しく解説します。適切な例文も交えながら、これらの言葉を正しく使えるようになりましょう。
「strategy」と「tactic」の基本的な違い

「strategy」と「tactic」は、目標達成のための計画という点では共通していますが、その規模や時間軸、具体性において大きく異なります。
「strategy(戦略)」は大きな枠組みでの計画や方針を指し、長期的な視野で目標達成を目指すものです。一方、「tactic(戦術)」は「strategy」を実現するための具体的な行動や手段を指し、より短期的な視点で用いられます。
簡単に言えば、「strategy」は「何を目指すか」という目標や方向性、「tactic」は「どうやって達成するか」という具体的な方法や手段と考えるとわかりやすいでしょう。
語源から理解する違い
「strategy」と「tactic」の違いをより深く理解するために、それぞれの語源を見てみましょう。
「strategy」はギリシャ語の「stratēgia(将軍の指揮能力)」に由来します。これは「stratos(軍隊)」と「ago(指導する)」が組み合わさった言葉です。つまり、元々は大きな軍隊全体を指揮する能力や計画を意味していました。
一方、「tactic」はギリシャ語の「taktike(整列する技術)」に由来します。これは部隊を整列させて効果的に運用する術を意味していました。
語源からも、「strategy」が大きな全体像を指し、「tactic」がより具体的な運用方法を指すことがわかります。
時間軸からみた違い
「strategy」と「tactic」の違いは、対象とする時間軸の長さにも表れています。
「strategy」は通常、長期的な視点から立てられる計画です。企業の5年計画や国の外交方針など、長い期間にわたって目標達成を目指すものを指します。
一方、「tactic」はより短期間で結果を出すための計画や行動を指します。次の試合で勝つための作戦や、今月の売上目標を達成するための具体的な販売方法などが「tactic」にあたります。
つまり、大まかに言えば「strategy」は月単位、年単位といった長いスパンで考えるもの、「tactic」は日単位、週単位といった短いスパンで考えるものと理解できます。
具体性からみた違い
「strategy」と「tactic」は具体性の点でも違いがあります。
「strategy」は一般的に抽象的で大きな方向性を示すものです。「市場シェアを拡大する」「ブランド価値を高める」といった大きな目標や方針を指します。
対して「tactic」は具体的で実践的な行動を指します。「新商品を発売する」「SNSで広告を出す」「値下げキャンペーンを実施する」など、具体的に何をするかという実行計画を表します。
「strategy」があなたが向かう目的地なら、「tactic」はそこに到達するために選ぶ道や乗り物だと考えるとわかりやすいでしょう。
「strategy」の詳しい意味と使い方
「strategy」は「戦略」と訳されることが多い単語で、目標達成のための全体的な計画や方針を意味します。「strategy」は以下のような特徴を持っています。
- 長期的な視野に立った計画である
- 大局的な視点から考える
- 組織や個人の目標達成のための指針となる
- 「なぜ」「何を」という問いに答える
「strategy」はビジネスの世界でよく使われますが、それ以外にも軍事、スポーツ、教育、個人の目標達成など、様々な分野で使われる言葉です。
「strategy」を使った例文
ここでは、「strategy」を使った簡単な例文をいくつか紹介します。中学英語レベルの表現を使っていますので、英語初学者の方も理解しやすいと思います。
例文
- We need a new strategy to win the game.
(私たちはゲームに勝つための新しい戦略が必要です。) - Our school has a good strategy for improving test scores.
(私たちの学校はテストの点数を上げるための良い戦略を持っています。) - What is your strategy for learning English?
(あなたの英語学習の戦略は何ですか?) - His strategy was to save money every month.
(彼の戦略は毎月お金を貯めることでした。) - The company’s strategy is to sell more products in Asia.
(その会社の戦略はアジアでより多くの製品を販売することです。)
ビジネスでの「strategy」の使われ方
ビジネスの世界では、「strategy」はとても重要な概念です。企業の成功や失敗は、適切な「strategy」を持っているかどうかに大きく左右されます。
ビジネスにおける「strategy」の例としては、以下のようなものがあります。
- Business strategy(事業戦略):企業全体の方向性や目標
- Marketing strategy(マーケティング戦略):市場での位置づけや顧客獲得の方針
- Growth strategy(成長戦略):企業の拡大方法に関する計画
- Competitive strategy(競争戦略):競合他社との差別化の方針
ビジネスシーンでは「5カ年戦略」や「グローバル戦略」など、広範囲でかつ長期的な計画について話す際に「strategy」という言葉がよく用いられます。
「tactic」の詳しい意味と使い方
「tactic」は「戦術」や「作戦」と訳されることが多い単語で、目標達成のための具体的な行動や手段を意味します。「tactic」は以下のような特徴を持っています。
- 短期的な成果を目指す
- 具体的で実践的な行動計画である
- 「strategy」を実現するための手段となる
- 「どのように」「どうやって」という問いに答える
「tactic」も「strategy」同様、ビジネス、軍事、スポーツなど様々な分野で使われる言葉ですが、より具体的なアクションに焦点を当てるときに使われます。
「tactic」を使った例文
ここでは、「tactic」を使った簡単な例文をいくつか紹介します。
例文
- Our tactic is to attack from the left side.
(私たちの戦術は左側から攻めることです。) - The teacher used a new tactic to teach math.
(先生は算数を教えるために新しい戦術を使いました。) - What tactic will you use to finish your homework quickly?
(宿題を早く終わらせるためにどんな戦術を使いますか?) - His tactic was to ask many questions during the class.
(彼の戦術は授業中に多くの質問をすることでした。) - The sales team changed their tactics every week.
(販売チームは毎週戦術を変えていました。)
スポーツでの「tactic」の使われ方
スポーツの世界では、「tactic」は試合に勝つための具体的な作戦や動きを指します。監督やコーチが選手に指示する内容は多くの場合「tactic」に当たります。
スポーツにおける「tactic」の例としては、以下のようなものがあります。
- Defensive tactic(守備的な戦術):相手の攻撃を防ぐための方法
- Offensive tactic(攻撃的な戦術):得点を取るための方法
- Team tactic(チーム戦術):チーム全体の動き方
- Individual tactic(個人戦術):個々の選手の役割や動き
サッカーの「ショートパスを多用する」やバスケットボールの「ゾーンディフェンスを採用する」などは典型的な「tactic」の例です。
「strategy」と「tactic」の類似表現
「strategy」と「tactic」以外にも、計画や方法を表す英単語はいくつかあります。ここでは、混同されやすい類似表現について解説します。
「plan」との違い
「plan」は「計画」を意味する一般的な単語で、「strategy」や「tactic」よりも広い意味を持ちます。日常生活からビジネスまで、様々な場面で使われます。
「strategy」が大きな目標達成のための包括的な方針や考え方であるのに対し、「plan」はより具体的な行動の段取りや予定を指します。「strategy」が「なぜ」「何を」という問いに答えるなら、「plan」は「いつ」「どこで」「誰が」という問いに答えます。
例文
- We need a plan for the weekend.
(週末の計画が必要です。) - Our plan is to leave at 8 am tomorrow.
(私たちの計画は明日午前8時に出発することです。)
「policy」との違い
「policy」は「方針」や「政策」を意味する単語で、主に組織や政府の行動指針や規則を指します。
「strategy」が目標達成のための包括的な方針であるのに対し、「policy」は組織内での一貫した対応や判断の基準となる規則や原則を指します。「strategy」はより柔軟で状況に応じて変わりうるものですが、「policy」は一度決まると一貫して適用されるものです。
例文
- The company has a no-smoking policy.
(その会社は禁煙方針を持っています。) - It is our policy to answer all customer questions within 24 hours.
(すべての顧客の質問に24時間以内に回答することが私たちの方針です。)
「method」との違い
「method」は「方法」や「手法」を意味する単語で、特定の作業や目標を達成するための手順や技術を指します。
「tactic」が短期的な目標達成のための具体的な行動計画であるのに対し、「method」はより細かい具体的な手順や技術を指します。「tactic」が「どのように大きな目標に近づくか」という問いに答えるなら、「method」は「具体的にどう実行するか」という問いに答えます。
例文
- This is a good method for learning vocabulary.
(これは語彙を学ぶための良い方法です。) - The teacher explained a new method to solve math problems.
(先生は数学の問題を解くための新しい方法を説明しました。)
「strategy」と「tactic」の使い分け練習問題
ここでは「strategy」と「tactic」の使い分けを練習するための問題を20問用意しました。空欄に「strategy」または「tactic」の適切な形(単数形・複数形)を入れてください。
- Our company needs a new marketing _____ to increase sales.
- The soccer team used defensive _____ in the second half.
- What is your long-term _____ for career growth?
- The teacher’s _____ was to call on students who weren’t paying attention.
- The government developed a five-year _____ for economic growth.
- Their _____ of asking many questions worked well in the debate.
- A good chess player always has a clear _____ in mind.
- One of our _____ is to wake up early and study before breakfast.
- The business _____ focused on expanding into new markets.
- The general changed his battle _____ at the last minute.
- What _____ did you use to convince your parents?
- The company’s global _____ has been successful for many years.
- These sales _____ are no longer effective in today’s market.
- Our long-term _____ is to become the market leader.
- The basketball coach taught new defensive _____ to the team.
- Can you explain your _____ for winning this competition?
- The politician used various _____ to avoid answering difficult questions.
- We need to develop a _____ to deal with climate change.
- His favorite _____ in card games is to start slowly.
- The company’s pricing _____ aims to attract younger customers.
「strategy」と「tactic」に関するよくある質問
ここでは「strategy」と「tactic」に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
- 「strategy」と「tactic」は入れ替えて使うことはできますか?
-
場合によっては入れ替えて使われることもありますが、本来は異なる意味を持ちます。「strategy」は長期的で大局的な計画、「tactic」はより短期的で具体的な行動計画を指します。正確に使い分けることで、より明確なコミュニケーションが可能になります。
- 「strategies」と「tactics」の複数形はどのように使われますか?
-
「strategies」はいくつかの異なる戦略や方針を指す場合に使われます。例えば「marketing strategies(マーケティング戦略)」や「investment strategies(投資戦略)」などです。「tactics」は複数の具体的な行動や手段を指す場合に使われ、時にはスポーツや軍事などの分野で「戦術全般」を意味することもあります。
- 「strategic」と「tactical」という形容詞の違いは何ですか?
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「strategic」は「戦略的な」という意味で、長期的な視点や大局的な重要性を持つことを表します。「tactical」は「戦術的な」という意味で、具体的な実行に関することや短期的な効果を持つことを表します。「strategic plan(戦略的計画)」と「tactical move(戦術的行動)」のように使います。
- 日常会話で「strategy」と「tactic」はよく使われますか?
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ビジネスやスポーツの文脈ほど頻繁ではありませんが、日常会話でも使われることがあります。特に何か目標を達成しようとする場面や、ゲームをプレイする際などに使われます。日常会話では「plan(計画)」や「way(方法)」という言葉の方が使われる頻度は高いです。
- 「strategy」と「tactic」の概念は文化によって異なりますか?
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基本的な概念は普遍的ですが、文化によって重視される点が異なることがあります。例えば、長期的な視点を重視する文化では「strategy」がより重要視され、即時的な結果を重視する文化では「tactic」に焦点が当てられることがあります。また、言語によって完全に同じ意味で訳せない場合もあります。
まとめ

本記事では「strategy」と「tactic」の意味の違いと使い分けについて詳しく解説しました。ここで重要なポイントをまとめます。
- 「strategy(戦略)」は長期的な視野に立った大局的な計画や方針を指す。
- 「tactic(戦術)」は短期的な視点での具体的な行動や手段を指す。
- 「strategy」は「なぜ」「何を」という問いに答え、「tactic」は「どのように」という問いに答える。
- 語源的には、「strategy」は将軍の指揮能力、「tactic」は部隊を整列する技術に由来する。
- 「strategy」は全体的な目標や方向性、「tactic」はその実現のための具体的な手段という関係にある。
- 時間軸では、「strategy」は月単位・年単位の長期、「tactic」は日単位・週単位の短期で考える。
- 「plan」「policy」「method」などの類似表現とは、それぞれ用途や意味合いが異なる。
- ビジネス、スポーツ、軍事など様々な分野で使われるが、基本的な意味の違いは共通している。
「strategy」と「tactic」は、英語圏のビジネスやスポーツの場面でよく使われる重要な概念です。この二つの言葉の違いを理解し、適切に使い分けることで、より正確で効果的なコミュニケーションが可能になります。日常会話から専門的な場面まで、様々なシチュエーションでこれらの言葉を正しく使えるようになりましょう。