「もし私が鳥だったら、空を飛べるのに」「もし昨日勉強していたら、テストに合格していたのに」—このような「〜だったら、〜なのに」という表現を英語で言いたいとき、使うのが「仮定法」です。英語の文法の中でも少し難しく感じられるかもしれませんが、基本を理解すれば誰でも使いこなせるようになります。
この記事では、仮定法の基本的な意味から実際の使い方まで、初心者にもわかりやすく解説します。中学英語レベルの例文を交えながら、ステップバイステップで学んでいきましょう。
仮定法とは?基本概念を理解しよう

仮定法とは、「もし〜なら、〜なのに」「もし〜だったら、〜だったのに」というように、現実とは異なる状況や実現できない可能性の高いことを表現する英語の文法です。日本語で言う「たられば」に似た表現と考えると分かりやすいでしょう。
仮定法の特徴は、実際の時制よりも「一つ前の時制」を使うことです。例えば、現在の事実と異なる仮定をする場合は過去形を使い、過去の事実と異なる仮定をする場合は過去完了形を使います。この「時制をずらす」ことで、「現実ではない」ことを表現するのです。
基本的な仮定法の構造は以下のようになります。
If + 主語 + 動詞(現実より一つ前の時制), 主語 + 助動詞の過去形 + 動詞の原形
例文
- If I had a car, I would drive to the beach.(もし車を持っていたら、海に車で行くのに)
この文では、実際には「私は車を持っていない」という現実に対して仮定をしているため、hadという過去形とwouldという助動詞の過去形を使っています。
仮定法過去:現在の事実と異なる仮定
仮定法過去は、現在の事実とは違う状況を仮定するときに使います。名前に「過去」とついていますが、表しているのは「現在」についての仮定です。
この点は混乱しやすいので注意しましょう。
仮定法過去の基本形
仮定法過去の基本的な形は以下の通りです。
If + 主語 + 動詞の過去形, 主語 + would/could/might + 動詞の原形
例文
- If I were you, I would study harder.
(もし私があなただったら、もっと一生懸命勉強するのに) - If she had more time, she could read more books.
(もし彼女にもっと時間があれば、もっと多くの本を読めるのに) - If we lived near the sea, we would go swimming every day.
(もし私たちが海の近くに住んでいたら、毎日泳ぎに行くのに)
これらの例文はすべて、現実とは異なる現在の状況を仮定しています。
「私はあなたではない」「彼女は時間がない」「私たちは海の近くに住んでいない」という現実に対して、「もし〜なら」と仮定しているのです。
注意点:be動詞の使い方
仮定法過去でbe動詞を使う場合、特に一人称・三人称単数(I, he, she, it)のときは、通常の過去形「was」ではなく「were」を使うことが正式とされています。
例文
- If I were a bird, I could fly in the sky.
(もし私が鳥だったら、空を飛べるのに) - If she were taller, she could reach the top shelf.
(もし彼女がもっと背が高かったら、一番上の棚に手が届くのに)
ただし、日常会話では「If I was…」「If she was…」と言うこともあります。
どちらも通じますが、フォーマルな場面では「were」を使うことが推奨されます。
仮定法過去完了:過去の事実と異なる仮定
仮定法過去完了は、過去に起こった事実とは異なることを仮定するときに使います。
「もし〜だったら、〜だったのに」という、過去の出来事に対する後悔や違った結果の想像を表現するときに適しています。
仮定法過去完了の基本形
仮定法過去完了の基本的な形は以下の通りです。
If + 主語 + had + 過去分詞, 主語 + would/could/might + have + 過去分詞
例文
- If I had studied harder, I would have passed the test.
(もっと一生懸命勉強していたら、テストに合格していたのに) - If it had not rained yesterday, we could have played soccer.
(昨日雨が降らなかったら、サッカーができたのに) - If she had woken up earlier, she might have caught the first train.
(彼女がもっと早く起きていたら、始発電車に乗れたかもしれないのに)
これらの例文はすべて、過去の事実とは異なる状況を仮定しています。
「勉強しなかった」「雨が降った」「早く起きなかった」という実際に起こった過去の出来事に対して、「もし違っていたら」と仮定しているのです。
仮定法過去完了の否定形
仮定法過去完了の否定形を作るには、助動詞「had」または「would/could/might」の後ろに「not」を加えます。
例文
- If I had not forgotten my umbrella, I would not have gotten wet.
(もし傘を忘れていなかったら、濡れなかったのに) - If you had called me, I could have helped you.
(もしあなたが私に電話していたら、手伝えたのに)
これらの例文では、実際には「傘を忘れた」「電話をしなかった」という出来事が起こったことを示しています。
仮定法現在:普遍的な事実や未来の可能性
仮定法現在(Zero Conditional)は、普遍的な事実や科学的な法則、あるいは起こりうる未来の出来事について述べるときに使います。
これは厳密には「仮定法」とは呼ばれないこともありますが、条件文の一種としてここで説明します。
仮定法現在の基本形
仮定法現在の基本的な形は以下の通りです。
If + 主語 + 動詞の現在形, 主語 + 動詞の現在形/will + 動詞の原形
例文
- If water reaches 0°C, it freezes.(水は0度になると凍ります)
- If you heat ice, it melts.(氷を熱すると溶けます)
- If it rains tomorrow, we will stay at home.(明日雨が降れば、家にいます)
- If you finish your homework, you can play video games.(宿題を終えたら、ビデオゲームで遊んでもいいですよ)
これらの例文は、条件と結果の関係を示していますが、非現実的な仮定ではなく、実際に起こりうる状況や普遍的な事実を述べています。
そのため、通常の時制(現在形や未来形)を使用します。
仮定法未来:起こる可能性の低い未来の仮定
仮定法未来は、未来に関する非現実的な仮定や、実現する可能性が低いことを表現するときに使います。
日本語では「もし〜することがあったら、〜だろう」のような表現になります。
仮定法未来の基本形
仮定法未来の基本的な形はいくつかありますが、主なものは以下の通りです。
- If + 主語 + were to + 動詞の原形, 主語 + would/could/might + 動詞の原形
- If + 主語 + should + 動詞の原形, 主語 + would/could/might + 動詞の原形
例文を見てみましょう。
例文
- If I were to become a teacher, I would teach English.
(もし私が教師になるとしたら、英語を教えるだろう) - If it should rain next Sunday, we would cancel the picnic.
(もし次の日曜日に雨が降るようなことがあれば、ピクニックを中止するだろう)
これらの例文は、未来において起こる可能性は低いが、もしそうなった場合の結果を表現しています。
仮定法を使った様々な表現
仮定法は「if」を使った文だけでなく、様々な表現方法があります。
ここでは、代表的ないくつかの表現を紹介します。
「I wish」を使った表現
「I wish」(〜だったらなあ)を使って、現在や過去の事実と異なることを願う表現ができます。
例文
- I wish I were taller.(もっと背が高かったらなあ)
- I wish I had a dog.(犬を飼っていたらなあ)
- I wish it were not Monday today.(今日が月曜日でなかったらなあ)
- I wish I had not said that.(あんなことを言わなければよかったのに)
「as if / as though」を使った表現
「as if / as though」(まるで〜であるかのように)を使って、現実とは異なる様子を表現できます。
例文
- He talks as if he were an expert.(彼はまるで専門家であるかのように話す)
- She looked at me as though she had seen a ghost.(彼女はまるで幽霊を見たかのように私を見た)
「would rather」を使った表現
「would rather」(〜する方がいい)を使って、現実とは異なる願望を表現できます。
例文
- I would rather you came tomorrow.(あなたには明日来てほしい)
- He would rather she didn’t know the truth.(彼は彼女に真実を知られたくない)
日常会話での仮定法の使い方
仮定法は日常会話でもよく使われます。ただし、より簡潔な表現が好まれることもあります。
ここでは、実際の会話でどのように仮定法が使われるかを見ていきましょう。
「もし〜だったら?」と尋ねる
友達と話しているとき、仮想の状況について尋ねることがあります。
例文
- What would you do if you won the lottery?(宝くじに当たったら、何をする?)
- Where would you live if you could live anywhere?(どこでも住めるとしたら、どこに住む?)
助言や提案をする
誰かに助言や提案をするとき、仮定法を使うことで柔らかい印象になります。
例文
- If I were you, I would apologize to her.(私があなたなら、彼女に謝るよ)
- It might be better if we left early tomorrow.(明日早く出発した方がいいかもしれない)
後悔を表現する
過去のことを後悔するとき、仮定法過去完了がよく使われます。
例文
- If only I had studied more…(もっと勉強していたらなあ…)
- I wish I had listened to your advice.(あなたのアドバイスを聞いておけばよかった)
英語の仮定法に関する練習問題20選
仮定法をマスターするために、以下の問題を解いてみましょう。様々なタイプの問題を用意しました。
- 次の文の空欄に適切な形の動詞を入れなさい
If I _____ (be) a bird, I could fly. - 次の文の空欄に適切な形の動詞を入れなさい
If it _____ (not rain) yesterday, we _____ (play) soccer. - 次の文の空欄に適切な助動詞を入れなさい
If I had more time, I _____ read more books. - 次の2つの文を仮定法を使って1つの文にしなさい
I don’t have a car. I can’t drive to the beach. - 次の文の仮定法が正しいか間違っているか答えなさい
If I was you, I would study harder. - 次の文を日本語に訳しなさい
If I had studied harder, I would have passed the test. - 次の日本語を英語に訳しなさい(仮定法過去を使って)
「もし私がお金持ちなら、大きな家を買うのに」 - 次の文の空欄に適切な動詞を入れなさい
I wish I _____ (have) more friends. - 次の文の空欄に適切な形の動詞を入れなさい
She looks as if she _____ (be) tired. - 次の文を「I wish」を使った表現に書き換えなさい
I am not rich. - 次の文の空欄に適切な動詞の形を入れなさい
If you _____ (cook) dinner, I _____ (wash) the dishes. - 次の文を仮定法過去完了を使って書き換えなさい
I didn’t see the movie. I am sad now. - 次の文の空欄に適切な動詞の形を入れなさい
If I _____ (be) taller, I _____ (can) reach the top shelf. - 次の文を日本語に訳しなさい
What would you do if you won the lottery? - 次の文の誤りを訂正しなさい
If I will have time tomorrow, I would go shopping. - 次の2つの文をつなげて、仮定法を使った1つの文にしなさい
You didn’t tell me about the party. I didn’t go. - 次の文の空欄に適切な動詞の形を入れなさい
I would rather you _____ (come) tomorrow. - 次の文を過去の事実とは異なる仮定を表す文に書き換えなさい
I didn’t have an umbrella. I got wet. - 次の文の空欄に適切な形の動詞を入れなさい
If water _____ (reach) 100°C, it _____ (boil). - 次の文を「as if」を使った表現に書き換えなさい
He is not a king, but he acts like one.
仮定法に関するよくある質問
仮定法に関して、学習者からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
- 仮定法と直説法の違いは何ですか?
-
直説法は実際の事実や起こりうる可能性について述べるときに使いますが、仮定法は現実とは異なる仮定や実現の可能性が低いことを表現するときに使います。
- 直説法:If it rains tomorrow, I will stay at home.(明日雨が降れば、家にいます)→ 雨が降る可能性はある
- 仮定法:If it rained tomorrow, I would stay at home.(明日雨が降ったら、家にいるのに)→ 明日は雨が降らないと予想している
- 「If I was」と「If I were」のどちらが正しいですか?
-
文法的には「If I were」が正式とされています。特に仮定法過去では、be動詞は人称に関わらず「were」を使うのが伝統的なルールです。しかし、日常会話では「If I was」も広く使われており、どちらも間違いではないと考えられています。フォーマルな場面では「If I were」を使う方が無難です。
- 「if」以外に仮定法を導入する表現はありますか?
-
はい、いくつかあります。
- I wish…(〜だったらなあ)
- If only…(もし〜さえすれば)
- as if / as though…(まるで〜であるかのように)
- suppose / supposing…(〜と仮定すると)
- on condition that…(〜という条件で)
- 仮定法の否定形はどのように作りますか?
-
仮定法の否定形は、if節の動詞または主節の助動詞に「not」を加えることで作ります。
- If I did not have a dog, I would be sad.(もし犬を飼っていなかったら、悲しいだろう)
- If she had studied harder, she would not have failed the test.(もっと一生懸命勉強していたら、テストに失敗しなかっただろう)
- 日常会話で仮定法は本当に使われますか?
-
はい、仮定法は日常会話でもよく使われます。特に「If I were you…」(私があなたなら…)のような表現や、「I wish…」(〜だったらなあ)という願望の表現はとても一般的です。ただし、カジュアルな会話では文法的に完璧でない形が使われることもあります。
まとめ

英語の仮定法は、現実とは異なる状況や実現の可能性が低いことを表現するための文法です。
主に以下の種類があります。
- 仮定法過去:現在の事実と異なる仮定(もし〜なら、〜なのに)
- If I had a car, I would drive to school.(もし車を持っていたら、学校に車で行くのに)
- 仮定法過去完了:過去の事実と異なる仮定(もし〜だったら、〜だったのに)
- If I had studied harder, I would have passed the test.(もっと一生懸命勉強していたら、テストに合格していただろう)
- 仮定法現在:普遍的な事実や実現する可能性のある条件(もし〜なら、〜する)
- If it rains, the ground gets wet.(雨が降ると、地面が濡れる)
- 仮定法未来:未来の非現実的な仮定(もし〜することがあれば、〜だろう)
- If I were to become a doctor, I would help many people.(もし医者になるとしたら、多くの人を助けるだろう)
仮定法の基本的なルールは「現実とは異なる時制を使う」ことです。通常は「1つ前の時制」を使うことで、現実ではないことを表現します。
また、I wish、as if/as though、would ratherなど、仮定法を使った様々な表現があります。これらを使いこなすことで、英語でより豊かな表現ができるようになります。
仮定法は最初は複雑に感じるかもしれませんが、基本的なパターンを理解し、実際に使ってみることで自然と身につきます。この記事で紹介した例文や練習問題を参考にして、仮定法をマスターしましょう。
英語学習において仮定法は重要な文法項目の一つです。日常会話でも使われることが多いので、基本的な使い方をしっかり身につけておくと、英語でのコミュニケーションの幅が広がります。