「take on」は英語の句動詞(phrasal verb)の一つで、日常会話やビジネスシーンでよく使われる便利な表現です。単純に「取る」という意味の「take」と「上に」を意味する「on」の組み合わせですが、実際にはさまざまな意味を持っています。
この記事では「take on」の多様な意味と使い方について、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。基本的な意味から応用まで、豊富な例文とともに「take on」をマスターしましょう。
「take on」の基本的な意味

「take on」は一見すると単純な組み合わせに見えますが、実はとても多機能な句動詞です。「take」(取る)と「on」(~の上に)という組み合わせから、「何かを自分の方に引き寄せる」というイメージが基本になっています。このイメージから派生して、「責任を引き受ける」「雇用する」「挑戦する」など、様々な意味で使われています。
英語を勉強する上で句動詞は少し厄介な存在かもしれませんが、「take on」の使い方をマスターすれば、自然な英語表現の幅がぐっと広がります。それでは、「take on」の主な意味とその使い方を一つずつ見ていきましょう。
「take on」の主な5つの意味
「take on」には大きく分けて5つの主要な意味があります。それぞれの意味と使い方について、簡単な例文とともに解説していきます。
責任や仕事を引き受ける
最もよく使われる意味の一つは、「責任や仕事、課題などを引き受ける」という意味です。自ら進んで何かの責任を負う場合に使います。
例文
- I will take on this project.(私はこのプロジェクトを引き受けます。)
- She took on more work than she could handle.(彼女は扱える以上の仕事を引き受けました。)
- The teacher takes on many roles in the classroom.(先生は教室で多くの役割を担っています。)
- Can you take on this task for me?(この仕事を私の代わりに引き受けてくれますか?)
このような場面では、「take on」は「自ら進んで責任を持つ」というニュアンスがあります。何かを引き受けるという積極的な姿勢を表現したい時に適しています。
雇用する、雇う
「take on」の2つ目の重要な意味は「雇用する、雇う」です。会社や組織が新しい従業員を採用する場合に使われます。
例文
- Our company is taking on new staff this month.(私たちの会社は今月新しいスタッフを雇っています。)
- They took on five workers for the summer.(彼らは夏の間に5人の労働者を雇いました。)
- The school takes on new teachers every April.(その学校は毎年4月に新しい教師を採用しています。)
- We need to take on more people for this busy season.(この忙しい季節のために、もっと人を雇う必要があります。)
この意味での「take on」は、新しい人材を組織に迎え入れるという行為を表します。「employ」や「hire」と同じような意味で使うことができます。
競合する、挑戦する
3つ目の意味は「競合する、挑戦する、対決する」です。スポーツの試合や競争、対立など、何かに立ち向かう場合に使います。
例文
- Our team will take on the champions next week.(私たちのチームは来週チャンピオンと対戦します。)
- She is ready to take on any challenge.(彼女はどんな挑戦にも立ち向かう準備ができています。)
- He took on the best player and won.(彼は最高のプレイヤーに挑戦して勝ちました。)
- I don’t want to take on such a strong opponent.(そんな強い相手と対戦したくありません。)
この使い方では、「take on」に「向かい合う、立ち向かう」という意味合いがあります。勇気を持って挑戦するというニュアンスで使われることが多いです。
特定の性質や特徴を帯びる
4つ目の意味は「特定の性質や特徴、形態を帯びる、持つようになる」です。これは長い時間をかけて何かが変化していく様子を表現する時に使います。
例文
- The sky took on a red color at sunset.(空は夕日で赤い色を帯びました。)
- His face took on a serious expression.(彼の顔は真剣な表情になりました。)
- The story takes on a new meaning when you read it again.(その物語を再読すると新しい意味を持つようになります。)
- The room took on a warm atmosphere with the new lights.(その部屋は新しい照明で温かい雰囲気を帯びました。)
この意味では、「take on」は何かが自然に特性を獲得していく過程を表します。特に見た目や雰囲気、意味などが変化する時に適しています。
積み込む、乗せる
最後の主要な意味は、「積み込む、満たす、乗せる」です。主に乗り物が人や物を乗せる場合に使われます。
例文
- The bus took on more passengers at the next stop.(バスは次の停留所でさらに多くの乗客を乗せました。)
- The ship took on water after hitting the rocks.(船は岩に当たった後、水が入ってきました。)
- We need to take on fuel before the long journey.(長い旅の前に燃料を補給する必要があります。)
- The plane took on food and drinks for the flight.(飛行機はフライトのための食べ物と飲み物を積み込みました。)
この使い方は特に交通機関や船舶などで、物や人を「乗せる」「積み込む」という具体的な動作を表現する時に役立ちます。
「take on」と似た表現の違い
「take on」と似た意味を持つ表現はいくつかありますが、それぞれ微妙にニュアンスが異なります。主な類似表現との違いを見ていきましょう。
acceptとの違い
「accept」も「受け入れる」という意味を持ちますが、「take on」と比べると少し受動的なニュアンスがあります。
- Accept:提案や申し出を「受け入れる」という意味が強い
- Take on:自ら積極的に「引き受ける」というニュアンスがある
例文比較
- He accepted the job offer.(彼は仕事のオファーを受け入れました。)
- He took on the job.(彼はその仕事を引き受けました。)
「accept」は単に提示されたものを受け入れる感じですが、「take on」にはより積極的に責任を担うという意味合いがあります。
undertakeとの違い
「undertake」も「引き受ける」という意味がありますが、「take on」よりも形式的で、より大きな責任や義務を伴うことが多いです。
- Undertake:正式に何かを引き受ける、約束する
- Take on:より日常的に責任や仕事を引き受ける
例文比較
- The company undertook to complete the project by December.(その会社は12月までにプロジェクトを完了することを約束しました。)
- The company took on the project despite the risks.(その会社はリスクにもかかわらずそのプロジェクトを引き受けました。)
「undertake」は契約や公的な約束事に使われることが多いのに対し、「take on」はより柔軟で日常的な状況で使われます。
challengeとの違い
「challenge」は「挑戦する」という意味で「take on」と似ていますが、使い方が少し異なります。
- Challenge:直接的に「挑戦する」という行為を強調
- Take on:「相手にする、立ち向かう」というニュアンスが強い
例文比較
- He challenged the champion to a game.(彼はチャンピオンに試合を挑みました。)
- He took on the champion in the final match.(彼は決勝戦でチャンピオンと対戦しました。)
「challenge」は挑戦そのものに焦点を当てていますが、「take on」は対戦相手と向き合うという側面が強調されます。
employとの違い
「employ」も「雇う」という意味で「take on」と似ていますが、ニュアンスに違いがあります。
- Employ:より正式な雇用関係を示す
- Take on:新たに人を加える、採用するというニュアンスが強い
例文比較
- The company employs over 500 people.(その会社は500人以上を雇用しています。)
- The company is taking on 10 new employees this month.(その会社は今月10人の新しい従業員を採用します。)
「employ」は一般的な雇用状態を表すのに対し、「take on」は特に新しく人を加えるという動作に焦点を当てています。
「take on」を使った日常会話フレーズ
「take on」は日常会話でもよく使われます。ここでは、実際の会話で使えるフレーズをいくつか紹介します。
仕事や責任に関するフレーズ
例文
- I can’t take on any more work right now.(今はこれ以上仕事を引き受けられません。)
- Are you sure you want to take on that responsibility?(本当にその責任を引き受けたいですか?)
- She always takes on too much and gets stressed.(彼女はいつも多くを引き受けすぎてストレスを感じています。)
- Let’s take on this project together.(一緒にこのプロジェクトに取り組みましょう。)
挑戦に関するフレーズ
例文
- I’m ready to take on this challenge.(この挑戦に立ち向かう準備ができています。)
- Our school will take on the champions in the tournament.(私たちの学校はトーナメントでチャンピオンと対戦します。)
- Don’t worry, I can take on anyone who tries to bully you.(心配しないで、あなたをいじめようとする人なら誰でも相手にします。)
- She’s not afraid to take on difficult tasks.(彼女は難しい課題に立ち向かうことを恐れていません。)
変化に関するフレーズ
例文
- The discussion took on a serious tone.(その議論は真剣な調子を帯びるようになりました。)
- His voice took on a sad quality when he talked about his past.(彼は過去について話すとき、彼の声は悲しい質を帯びました。)
- The town takes on a magical appearance during the winter festival.(その町は冬祭りの間、魔法のような外観を呈します。)
- The issue takes on greater importance in the current situation.(その問題は現状ではより大きな重要性を帯びています。)
「take on」の使い方のコツ
「take on」をうまく使いこなすためのコツをいくつか紹介します。
文脈に合わせた意味の選択
「take on」は多くの意味を持っているため、使う際には文脈に合った意味を選ぶことが重要です。
例えば、
- 仕事や責任の文脈なら「引き受ける」
- 人事や採用の文脈なら「雇う」
- 競争や対決の文脈なら「挑戦する、対戦する」
- 変化や見た目の文脈なら「帯びる、~になる」
- 乗り物や容器の文脈なら「乗せる、積み込む」
という意味で使うのが適切です。
自然な例文でフレーズごと覚える
単語だけを覚えるよりも、フレーズや例文ごと覚えるほうが自然に使えるようになります。
例えば、
例文
- take on a new challenge(新しい挑戦に立ち向かう)
- take on more responsibility(より多くの責任を引き受ける)
- take on a new employee(新しい従業員を雇う)
- take on a different appearance(異なる外観を呈する)
というようにフレーズで覚えると、実際の使用場面がイメージしやすくなります。
日常会話で積極的に使ってみる
「take on」は日常的によく使われる表現なので、会話の中で積極的に使ってみることをおすすめします。
例えば、
- 「新しい仕事を引き受けた」と言いたいとき:I took on a new job.
- 「チームが挑戦する」と言いたいとき:Our team will take on the challenge.
- 「空が赤くなった」と言いたいとき:The sky took on a red color.
というように、適切な場面で使ってみることで自然に身につきます。
「take on」に関するよくある質問
- 「take on」と「take up」の違いは何ですか?
-
「take on」と「take up」はどちらも「引き受ける」という意味で使われることがありますが、ニュアンスが異なります。
- 「take on」:責任や仕事、挑戦などを引き受ける(負担を背負うイメージ)
- 「take up」:趣味や活動、職業などを始める、取り組み始める(新しく何かを始めるイメージ)
例えば、「I took on the leadership role」(リーダーの役割を引き受けた)に対して、「I took up painting as a hobby」(趣味として絵を始めた)というように使います。
- 「take on」の発音のコツはありますか?
-
「take on」の発音では、「take」と「on」が繋がって発音されることが多いです。「テイ・コン」というよりも「テイコン」と発音するイメージです。特に会話の中では、スピードが速くなると二つの単語が一つにつながって聞こえます。
発音練習としては、「take on」を単語ごとに区切って発音した後、徐々に速くして一つのフレーズとして発音する練習がおすすめです。
- 「take on」を使う時の注意点はありますか?
-
「take on」を使う際の主な注意点として、どの意味で使っているかを文脈で明確にすることが重要です。例えば、
- 「The company takes on workers」は「会社は労働者を雇う」という意味ですが、
- 「The company takes on challenges」は「会社は挑戦に立ち向かう」という全く異なる意味になります。
また、フォーマルな文書よりは、日常会話やカジュアルな文脈で使うことが多い表現です。より正式な場面では、「accept」「undertake」「employ」など、より明確な単語を使うことも検討してもいいでしょう。
- 「take on」を含む慣用表現はありますか?
-
「take on」を含む一般的な慣用表現としては、次のようなものがあります。
- take on board(理解する、考慮に入れる)
例:I’ve taken your suggestions on board.(あなたの提案を考慮に入れました。) - take on the world(世界に挑む、非常に自信を持つ)
例:After winning the competition, she felt like she could take on the world.(大会に勝った後、彼女は世界に挑めるような気分になりました。) - take on water(水が入る、沈み始める)
例:The boat is taking on water.(ボートに水が入り始めています。)
- take on board(理解する、考慮に入れる)
- 「take on」の名詞形はありますか?
-
「take on」そのものの名詞形はありませんが、関連する表現として「take」という名詞があります。「one’s take on something」で「~についての見解、解釈」という意味で使われます。
- What’s your take on this situation?(この状況についてのあなたの見解は何ですか?)
- That’s my take on the matter.(それがその件についての私の見解です。)
ただし、これは「take on」という句動詞の直接の名詞形ではなく、別の使い方として覚えておくとよいでしょう。
まとめ

この記事では「take on」の意味と使い方について詳しく解説しました。主なポイントをまとめると以下のようになります。
- 「take on」には主に5つの意味がある
- 責任や仕事を引き受ける
- 雇用する、雇う
- 競合する、挑戦する、対決する
- 特定の性質や特徴を帯びる
- 積み込む、乗せる
- 「take on」は類似表現(accept、undertake、challenge、employ)と比べて、より積極的で動作的なニュアンスがある
- 文脈によって適切な意味を選ぶことが大切
- 日常会話でよく使われる表現なので、フレーズごと覚えて実際に使ってみると効果的
- 「take on board」「take on the world」などの慣用表現もある
- 関連する表現として「one’s take on something」(~についての見解)がある
「take on」はとても便利で多用途な句動詞です。日常会話やビジネスの場面でよく使われるため、これをマスターすることで英語表現の幅が大きく広がります。様々な例文を通して使い方を練習し、実際の会話で積極的に使ってみてください。
自然な英語表現の一部として「take on」を使いこなせるようになれば、英語力の大きなステップアップになるでしょう。