英語の表現には、日常会話でよく使われるけれど日本人にとって理解しづらいものがたくさんあります。「up front」もそのひとつです。この表現を聞いたとき、「前に上がる」という直訳から意味を推測するのは難しいでしょう。実際には、「率直な」や「前払いの」といった意味があり、ビジネスや日常会話で頻繁に使われています。
この記事では、英語初学者の方でも理解できるよう、「up front」の意味と使い方を詳しく解説します。例文も中学英語レベルでご紹介するので、安心して読み進めてください。
「up front」の基本的な意味

「up front」は大きく分けて二つの主要な意味があります。一つは「率直な、正直な、ざっくばらんな」という意味で、もう一つは「前払いの、前もっての」という意味です。また、書き方としては「up front」のほか、「up-front」(ハイフンあり)や「upfront」(くっつけた形)など複数のバリエーションがあります。
まずは、それぞれの意味について詳しく見ていきましょう。
「率直な、正直な」の意味
「up front」の一つ目の主要な意味は「率直な、正直な、ざっくばらんな」です。物事を包み隠さず、はっきりと伝えるときに使われます。「正直に言う」「率直に話す」といった場面で使われることが多いです。
この意味での「up front」は、形容詞として使われることが多く、「be up front about/with」(〜について率直である、〜に対して正直である)という形でよく使われます。
例文
- He is always up front about his feelings.(彼はいつも自分の気持ちについて率直です)
- I want you to be up front with me.(私に対して正直でいてほしい)
「前払いの、前もっての」の意味
「up front」の二つ目の主要な意味は「前払いの、前もっての」です。何かを事前に支払ったり、前もって行ったりする場合に使われます。特に金銭の支払いに関連して使われることが多いです。
例文
- We need to pay the rent up front.(家賃は前払いする必要があります)
- They asked for $50 up front.(彼らは50ドルの前払いを求めました)
その他の意味
上記の二つが主要な意味ですが、「up front」にはいくつか他の意味もあります。
- 「前面の、最前列の」という意味
- The singer was up front on the stage.(歌手はステージの前面にいました)
- 「重要な、目立つ」という意味
- This is an up front issue we need to address.(これは私たちが取り組むべき重要な問題です)
- 「経営に関する、管理部門の」という意味(特にアメリカの口語で)
- He works in the up front of the company.(彼は会社の管理部門で働いています)
「up front」の使い方
「up front」の基本的な意味を理解したところで、次はこの表現の具体的な使い方を見ていきましょう。文法的な構造や、よく一緒に使われる単語などについて解説します。
「be up front with/about」の使い方
「率直な、正直な」という意味で「up front」を使う場合、多くは「be up front with(人)」や「be up front about(物事)」の形で使われます。
- be up front with(人):(人)に対して率直である
- be up front about(物事):(物事)について正直であるリスト
例文
- Please be up front with your teacher about your problems.(あなたの問題について先生に率直に話してください)
- My friend is always up front with me.(私の友達はいつも私に対して率直です)
- We should be up front about our mistakes.(私たちは自分たちのミスについて正直であるべきです)
「pay up front」などの表現
「前払いの、前もっての」という意味で使う場合は、「pay up front」(前払いする)や「cost up front」(前払いの費用)などの表現でよく使われます。
例文
- You must pay up front for the concert tickets.(コンサートのチケットは前払いしなければなりません)
- The school asks for money up front.(学校は前払いでお金を求めます)
- How much does it cost up front?(前払いでいくらかかりますか?)
「upfront」と「up front」と「up-front」の表記の違い
「up front」「up-front」「upfront」の3つの表記がありますが、意味に大きな違いはありません。ただし、使われる状況によって好まれる表記が異なる場合があります。
- up front:副詞として使われることが多い(例:Pay up front.)
- up-front:形容詞として使われることが多い(例:an up-front payment)
- upfront:最近増えてきている表記で、どちらの品詞でも使われる
ただし、これらの区別は厳密ではなく、どの表記も互換的に使われることがあります。公式の文書では「up-front」がよく使われますが、日常的には「upfront」も多く見られます。
例文で学ぶ「up front」
実際の使い方をより深く理解するために、「up front」のさまざまな意味での例文を見ていきましょう。すべて中学英語レベルで作成していますので、初学者の方も安心して学習できます。
「率直な」の意味での例文
例文
- I like people who are up front.(率直な人が好きです)
- My teacher is very up front about our test scores.(私の先生は私たちのテストの点数について非常に率直です)
- Can you be up front with me about this problem?(この問題について私に率直に話してくれませんか?)
- She is not up front about her feelings.(彼女は自分の気持ちについて率直ではありません)
- It’s better to be up front than to tell a lie.(嘘をつくより率直でいた方がいいです)
- My brother is always up front with our parents.(私の兄は両親に対していつも率直です)
- We should be up front about our mistakes.(私たちは自分たちの間違いについて率直であるべきです)
- The doctor was up front about my health condition.(医師は私の健康状態について率直でした)
「前払いの」の意味での例文
例文
- We need to pay up front for the school trip.(修学旅行のために前払いする必要があります)
- The hotel wants $100 up front.(ホテルは100ドルの前払いを望んでいます)
- Do I need to pay up front or later?(前払いで支払うべきですか、それとも後で支払うべきですか?)
- The up front cost is $50.(前払いの費用は50ドルです)
- They asked for an up front payment.(彼らは前払いを求めました)
- I don’t have enough money to pay up front.(前払いするのに十分なお金がありません)
- The teacher collected money up front for the books.(先生は本のためのお金を前払いで集めました)
- Is there an up front fee for this service?(このサービスには前払い料金がありますか?)
その他の意味での例文
例文
- The singer stood up front on the stage.(歌手はステージの前方に立っていました)
- I want to sit up front in the classroom.(教室の前方に座りたいです)
- This problem is up front in our discussion today.(この問題は今日の議論の中心です)
- The up front team makes important decisions.(前線のチームが重要な決定をします)
- Please put your name up front on the paper.(紙の先頭にあなたの名前を書いてください)
「up front」の発音
「up front」の発音は「アップ フロント」で、アクセントは「フロント」の部分に置かれます。英語の発音記号では /ʌp frʌnt/ と表記され、「ʌ」は日本語の「ア」に近い音です。日本人にとっては比較的発音しやすい表現と言えるでしょう。
発音のポイントとしては、「up」と「front」の間に少し間(ポーズ)を入れることです。特に「率直な」という意味で使う場合は、はっきりと二つの単語として発音するとよいでしょう。
「up front」を使った慣用表現
「up front」は単独で使われるだけでなく、いくつかの慣用表現の一部としても使われます。以下にいくつか紹介します。
「put it up front」(最初に述べる)
何かを最初に、あるいは明確に述べることを意味します。
例文
- Let me put it up front: I cannot go to the party.(最初に言っておきますが、私はパーティーに行けません)
- She put it up front that she needed help.(彼女は自分が助けを必要としていることを最初に述べました)
「get something up front」(事前に何かを得る)
何かを前もって、または事前に受け取ることを意味します。
例文
- I need to get the information up front.(事前に情報を得る必要があります)
- We got the tickets up front.(私たちは前もってチケットを入手しました)
「make it up front」(はっきりさせる)
何かを明確にする、またははっきりと述べることを意味します。
例文
- Let’s make it up front: we need to finish this by Friday.(はっきりさせておきましょう:金曜日までにこれを終わらせる必要があります)
- She made it up front that she couldn’t help.(彼女は手伝えないことをはっきり伝えました)
「up front」の類似表現との比較
「up front」と似た意味を持つ表現はいくつかあります。ここでは、よく使われる類似表現との違いを解説します。
「straightforward」との違い
「straightforward」も「率直な、正直な」という意味を持ちますが、「up front」との違いは以下のとおりです。
- straightforward:複雑でなく、分かりやすいという意味合いが強い
- up front:隠し事をせず、正直であるという意味合いが強い
例文比較
- He gave me a straightforward answer.(彼は私に分かりやすい答えをくれました)
- He was up front with me about the problem.(彼はその問題について私に率直でした)
「honest」との違い
「honest」も「正直な」という意味を持ちますが、「up front」との違いは以下のとおりです。
- honest:一般的に道徳的な正直さを指す
- up front:特に物事を最初から明確にすることを強調する
例文比較
- She is an honest person who never tells lies.(彼女は決して嘘をつかない正直な人です)
- She was up front about the difficulties we would face.(彼女は私たちが直面する困難について率直でした)
「in advance」との違い
「in advance」は「前もって、事前に」という意味で、「up front」の「前払いの」という意味に近いですが、以下のような違いがあります。
- in advance:時間的に前もって行うことを強調
- up front:特に支払いなどが先に行われることを強調
例文比較
- I booked the tickets in advance.(私は前もってチケットを予約しました)
- I paid for the tickets up front.(私はチケットを前払いしました)
日本語での「up front」に相当する表現
「up front」の日本語での相当表現を知ることで、より理解が深まります。
「率直な、正直な」の意味では、「率直に」「正直に」「ざっくばらんに」「包み隠さず」など
「前払いの、前もっての」の意味では、「前払いで」「前金で」「事前に」「先に」など
「up front」の使用場面
「up front」はどのような場面で使われるのでしょうか。具体的な使用シーンを見ていきましょう。
ビジネスでの使用
ビジネスの場面では、「up front」は以下のような状況でよく使われます。
料金や支払いについて話すとき
- We require a 30% deposit up front.(30%のデポジットを前払いでお願いしています)
- The consulting fee is $500 up front.(コンサルティング料は前払いで500ドルです)
問題や課題について率直に話すとき
- Let’s be up front about the challenges we’re facing.(私たちが直面している課題について率直に話しましょう)
- I appreciate that you’re being up front with me about the project delays.(プロジェクトの遅れについて率直に話してくれて感謝します)
日常会話での使用
日常会話では、以下のような場面で「up front」が使われます:
友人や家族に正直に何かを伝えるとき
- I want to be up front with you: I can’t come to your party.(率直に言うと、あなたのパーティーに行けません)
- My brother is always up front about his opinions.(私の兄は自分の意見についていつも率直です)
サービスやイベントの支払いについて話すとき
- The gym requires the yearly fee up front.(ジムは年会費を前払いで要求します)
- Do I need to pay for the tickets up front?(チケットは前払いする必要がありますか?)
「up front」に関するよくある質問
ここでは、「up front」に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
- 「up front」と「upfront」はどう違いますか?
-
意味に違いはなく、表記の違いだけです。「up front」は二つの単語として、「upfront」は一つの単語として書きます。また、「up-front」というハイフンを使った表記もあります。どの表記も同じ意味で使われますが、形容詞として使う場合は「upfront」や「up-front」が多く、副詞として使う場合は「up front」が多い傾向があります。
- 「up front」は丁寧な表現ですか?
-
「up front」自体は中立的な表現で、フォーマル・インフォーマルどちらの場面でも使えます。ただし、「率直な」という意味で使う場合、言い方によっては直接的過ぎると感じられることがあるので、ビジネスなどのフォーマルな場面では「I’d like to be up front with you」(率直に申し上げると)のように丁寧な言い回しを加えると良いでしょう。
- 「up front」の反対の意味は何ですか?
-
「率直な」という意味の反対は「evasive」(逃げ腰の)や「secretive」(秘密主義の)などがあります。「前払いの」という意味の反対は「後払いの」を意味する「in arrears」や「after the fact」などが使われます。
- 「up front」は日常会話でよく使われますか?
-
はい、「up front」は日常会話でかなり頻繁に使われる表現です。特にアメリカ英語では、「率直に言う」場面や「前払い」について話す場面で日常的に使われています。
- 「up front」はビジネスメールで使っても大丈夫ですか?
-
はい、ビジネスメールでも使える表現です。特に「I want to be up front about…」(〜について率直に申し上げると)という形で、重要な情報を最初に伝える際によく使われます。また、「We require payment up front」(前払いが必要です)のように支払い条件を伝える際にも適切です。
まとめ

この記事では、「up front」の意味と使い方について詳しく解説しました。ポイントをまとめると以下のようになります。
- 「up front」には主に2つの意味がある
- 「率直な、正直な、ざっくばらんな」
- 「前払いの、前もっての」
- 表記のバリエーションとして「up front」「up-front」「upfront」がある
- 「率直な」という意味では、「be up front with/about」の形でよく使われる
- 「前払いの」という意味では、「pay up front」「cost up front」などの表現でよく使われる
- 似た表現として「straightforward」「honest」「in advance」などがある
- ビジネスシーンや日常会話の両方で頻繁に使われる表現である
- 中立的な表現で、フォーマル・インフォーマル両方の場面で使える
「up front」は英語のネイティブスピーカーが日常的によく使う表現です。この表現をマスターすることで、より自然な英語でのコミュニケーションが可能になります。特に「率直に言う」という場面や、「前払い」について話す場面では、この表現を使えるようになると便利です。この記事が皆さんの英語学習の一助となれば幸いです。
最後に、表現を覚えるコツは実際に使ってみることです。友人との会話や英語の練習で積極的に「up front」を使ってみてください。実際に使うことで、より自然に表現が身につきます。頑張って練習していきましょう。