パラグラフリーディングは、英語の長文をより効率的に読み解くための読解手法です。時間内に英語長文を読み切れない、途中で内容がわからなくなるといった悩みを抱える方にとって、この読解スキルは大きな武器となります。
本記事では、英語初学者でも実践できるパラグラフリーディングの基本から応用まで、詳しく解説していきます。
パラグラフリーディングの基本概念

パラグラフリーディングとは、英文を段落(パラグラフ)ごとに読み、各段落の主張や要点を把握しながら文章全体の流れをつかむ読解法です。英語の文章、特に論説文やアカデミックな文章では、基本的に「一つの段落に一つの主張」という原則があります。この特徴を活かして読むことで、長文全体の大枠をとらえることができます。
多くの人は英文を読むとき、一文一文を日本語に訳していきますが、この方法では文章が長くなるほど全体像を見失いやすくなります。パラグラフリーディングでは、各段落の主張を理解し、文章全体の論理構造を把握することを重視します。これは単なるテクニックではなく、英語が得意な人が無意識に行っている「クセ」のようなものなのです。
段落構造を理解する
英語の段落(パラグラフ)には、一般的に以下のような構造があります。
- トピックセンテンス:段落の主題や主張を述べる文
- サポーティングセンテンス:トピックセンテンスを支える具体例や説明
- まとめの文:段落の内容をまとめる文(必ずしも存在するわけではない)
パラグラフリーディングでは、特にトピックセンテンスを見つけることが重要です。多くの場合、トピックセンテンスは段落の最初に置かれていますが、時には段落の最後や中間に置かれることもあります。
パラグラフリーディングのメリット
パラグラフリーディングを習得することで得られるメリットについて解説します。
英文をスムーズに読み解ける
パラグラフリーディングが身につくと、英文をスムーズに読み解くことができるようになります。英語の長文では段落ごとに一つの話題や主張を展開しているため、各段落の要点を押さえることで文章全体の流れを理解しやすくなります。
会話でも「結論から先に話すと伝わりやすい」とよく言われますが、文章の読解も同じで、まず大枠を知ってからの方が詳細情報を理解しやすいのです。パラグラフリーディングは「長文の大枠をつかむ」という観点から、スムーズな英文読解を可能にします。
読むスピードが向上する
パラグラフリーディングを実践すると、英文を読むスピードが格段に向上します。一文一文を日本語に訳していくのではなく、段落ごとの主張をつかむことに集中するため、読解のテンポが速くなります。
特に、TOEIC、IELTSなどの英語試験のリーディングセクションでは、問題量に比して制限時間が短いことが多いです。パラグラフリーディングのスキルを身につけることで、時間内に多くの文章を読み解くことができるようになります。
重要な情報を見極められるようになる
パラグラフリーディングを習得すると、文章の中から重要な情報を見極める力が養われます。各段落の主張を理解し文章全体の流れをつかむことで、「この文章は大事ではない」「この文章はあまり関係ない」という判断を瞬間的にできるようになります。
特に、筆者の意見と第三者(専門家や一般の人々)の意見を区別したり、主張とそれを支える具体例を区別したりする力が身につきます。英語長文の中で重要な情報を見極める目を養うことが大切です。
パラグラフリーディングの基本的なやり方
パラグラフリーディングを実践するための基本的なステップを解説します。初学者の方でも無理なく始められる方法をご紹介します。
段階的なアプローチで読解する
パラグラフリーディングでは、以下のような段階的なアプローチで英文を読み進めます。
- タイトルとイントロダクションを読む:文章全体の話題を把握します
- 段落ごとに読み進める:各段落のトピックセンテンス(主張)を見つけます
- 段落間の関連性を考える:段落同士がどのように繋がっているかを理解します
- 文章全体の要約を作る:読み終えたら、全体の要約を自分の言葉で作ってみます
この段階的アプローチにより、英文全体の大枠から細部へと理解を深めていくことができます。一度にすべてを完璧に理解しようとせず、徐々に理解度を上げていく意識が大切です。
トピックセンテンスの見つけ方
パラグラフリーディングの核心は、各段落のトピックセンテンス(主張が書かれた文)を見つけることです。トピックセンテンスを見つけるためのポイントは以下の通りです。
- 段落の最初の文に注目する:多くの場合、トピックセンテンスは段落の最初に来ます
- キーワードや強調表現を探す:「重要な」「注目すべき」などの表現に注目します
- 抽象的な表現を含む文を探す:具体例ではなく、一般的な主張を含む文がトピックセンテンスである可能性が高いです
- 段落の最後の文をチェックする:時にはトピックセンテンスが段落の最後にくることもあります
トピックセンテンスを見つけることができれば、その段落で何が言われているかの核心を理解できたことになります。
文章全体の構造を理解する
英語の論説文には一般的に以下のような構造があります。
- 序論(Introduction):話題の提示や主張の概要
- 本論(Body):主張を支える根拠や具体例の提示
- 結論(Conclusion):主張のまとめや最終的な見解
パラグラフリーディングでは、まず文章全体がこの3部構成のどの部分にあたるかを意識しながら読むことが重要です。序論と結論には筆者の主張が凝縮されていることが多いので、特に注意して読むとよいでしょう。
パラグラフリーディングのコツと具体的テクニック
パラグラフリーディングをより効果的に行うためのコツと具体的なテクニックを紹介します。これらを実践することで、読解力が大きく向上するでしょう。
ディスコースマーカー(論理マーカー)を活用する
ディスコースマーカー(または論理マーカー、シグナルワード)とは、文章の論理展開を示す手がかりとなる単語や表現のことです。これらを見つけることで、文章の流れを予測しやすくなります。
主なディスコースマーカーの例
- 列挙・追加:First, Second, Moreover, In addition, Furthermore
- 対比・逆接:However, On the other hand, Nevertheless, In contrast
- 因果関係:Therefore, As a result, Consequently, Because of this
- 例示:For example, For instance, Such as, To illustrate
- 結論:In conclusion, To sum up, Finally, In summary
例えば、「For example」という表現が出てきたら、それまでの文章で書かれていたことの具体例が続きますし、「However」が出てきたら、それまでの文章とは逆のことが書かれるでしょう。このように、ディスコースマーカーを見つけたら、その後にどのような内容が続くかを予測しながら読むことで、読解のスピードと正確さが向上します。
文章の繋ぎ目に注目する
文章の繋ぎ目に注目することもパラグラフリーディングの重要なテクニックです。文章が次に続く時や、文章同士がくっつく時、「しかし~」や「したがって~」といった言葉でそれまでの文章との関係性が現れます。
繋ぎ目に注目することで、次にどんな文章がくるのかをある程度予測できます。予測が立った状態で読めれば、グッとスムーズに英文を読み進めることができます。また、文章の論理構造も把握しやすくなります。
各段落で要約する習慣をつける
パラグラフリーディングをするときは、その段落に書かれていることを要約することが重要かつ効果的です。英文を読みながら「アウトプット」することで、内容の理解度が上がります。
要約するポイント
- その段落で最も言いたいことは何か
- 主張を支える根拠や具体例は何か
- 前の段落とどのようにつながっているか
このように意識的に要約することで、段落の主旨を正確に捉える力が身につきます。最初は時間がかかりますが、練習を重ねるうちにスムーズにできるようになります。
予測読みの力を養う
パラグラフリーディングの上級テクニックとして「予測読み」があります。これは、文章の流れから次に何が書かれているかを予測しながら読む方法です。
予測読みのコツ
- タイトルやイントロダクションから文章全体の方向性を予測する
- 各段落のトピックセンテンスから、その段落の内容を予測する
- ディスコースマーカーから次の文の内容を予測する
- 文章のジャンルや構造から展開を予測する
予測が当たることもあれば外れることもありますが、予測しながら読むことで、文章への理解が深まり、読解スピードも向上します。
初心者向けパラグラフリーディング練習方法
パラグラフリーディングは一朝一夕で身につくものではありませんが、適切な練習方法で着実に力をつけることができます。ここでは、英語初学者でも取り組める練習方法を紹介します。
簡単な英文から始める
初めてパラグラフリーディングに取り組む場合は、難しい文章から始めるのではなく、比較的簡単な英文記事や短い論説文から始めましょう。例えば、
- 英字新聞の短い記事
- 英語学習者向けの簡易版記事
- 中学・高校の教科書レベルの英文
最初は1〜2段落程度の短い文章から始め、慣れてきたら徐々に長い文章に挑戦していくとよいでしょう。
音読と黙読を組み合わせる
パラグラフリーディングの練習では、音読と黙読を組み合わせると効果的です。
- まず黙読:全体の流れをつかむために黙読します
- 次に音読:声に出して読むことで、文章のリズムや論理展開を体感します
- 再度黙読:より深く内容を理解するために再度黙読します
音読することで、文章の論理構造や接続詞の役割をより意識することができます。また、英語のリズムや発音も同時に学べるという利点もあります。
段落ごとのサマリーを書く練習
各段落を読んだ後に、その段落の内容を1〜2文で要約する練習をしましょう。最初は日本語でもよいですが、慣れてきたら英語でサマリーを書く練習もおすすめです。
サマリーを書くポイント
- シンプルな文で書く:複雑な表現ではなく、シンプルな文で要点をまとめます
- トピックセンテンスを参考にする:段落のトピックセンテンスをベースにサマリーを書きます
- 自分の言葉で書く:原文の表現をそのまま使うのではなく、自分の言葉で書きます
この練習を続けることで、段落の主旨を素早く把握する力が身につきます。
効果的なパラグラフリーディングのための基礎力
パラグラフリーディングを効果的に行うためには、いくつかの基礎力が必要です。ここでは、特に重要な基礎力とその強化方法を紹介します。
必要な単語力と強化方法
パラグラフリーディングには一定の単語力が必要です。特に、論理展開を示すディスコースマーカーや、文章のジャンルによく使われる語彙を知っておくことが重要です。
単語力を強化する方法
- ディスコースマーカーを優先的に覚える:However, Therefore, For example などの接続詞や副詞を意識的に学びます
- 文脈で単語を覚える:単語帳で単語を覚えるだけでなく、実際の文章中でどのように使われるかを学びます
- 頻出単語から学ぶ:英語学習用の頻出単語リストなどを活用し、効率的に語彙を増やします
単語力がある程度あると、パラグラフリーディングの効果が大きく向上します。しかし、全ての単語を知らなくても、文脈から意味を推測する力も同時に養いましょう。
文法知識の重要性
基本的な文法知識は、英文を正確に理解するために不可欠です。特に以下の文法項目はパラグラフリーディングにおいて重要です。
- 文の基本構造:主語、動詞、目的語などの基本的な文構造
- 接続詞の役割:文と文をつなぐ接続詞の機能と意味
- 関係詞:関係代名詞や関係副詞による複雑な文構造
- 時制と態:動詞の時制や態(能動態・受動態)の理解
これらの文法知識があると、複雑な文章であっても論理構造を理解しやすくなります。
文化的背景知識の活用
英文を読む際には、その文化的背景知識も重要です。特に社会問題や歴史、文化に関する文章では、背景知識があると理解が格段に深まります。
文化的背景知識を増やす方法
- 英語圏のニュースに触れる:BBCやCNNなどの英語ニュースを定期的に読む
- 様々なトピックの記事を読む:科学、歴史、芸術など多様なジャンルの記事に触れる
- 映画やドラマを英語で視聴する:エンターテイメントを通じて文化的背景を学ぶ
背景知識があると、文章の内容予測がしやすくなり、パラグラフリーディングの効果が高まります。
実践的パラグラフリーディングの応用
パラグラフリーディングのスキルを実際の英語学習や試験対策にどのように応用するか、具体的な方法を紹介します。
英語試験でのパラグラフリーディングの活用法
TOEICやIELTS、英検などの英語試験では、パラグラフリーディングのスキルを以下のように活用できます。
- スキミング:文章全体に目を通し、各段落の主題を把握する
- スキャニング:特定の情報を素早く見つけるために文章を素早く読む
- 問題を先読みする:問題を先に読んでから文章を読むことで、重要なポイントに注目できる
- 時間配分の最適化:各段落の重要度を判断し、時間をかけるべき箇所を見極める
特に時間が限られている試験では、全ての文章を細部まで読む余裕はありません。パラグラフリーディングで重要なポイントを効率的に把握することが鍵となります。
学術研究や専門書読解への応用
大学や大学院での学術研究や専門書の読解にも、パラグラフリーディングは非常に役立ちます。
- 論文の構造理解:学術論文は明確な構造(序論、方法、結果、考察など)を持っており、パラグラフリーディングでその構造を把握できる
- 効率的な情報収集:膨大な量の文献から必要な情報を効率的に抽出できる
- 批判的読解:著者の主張と根拠の関係を理解し、批判的に評価できる
- 研究の位置づけ把握:その研究が学術分野でどのように位置づけられているかを理解できる
特に留学を考えている方や、英語の専門書を読む必要がある方にとって、パラグラフリーディングは必須のスキルと言えるでしょう。
パラグラフリーディングに関するよくある質問
パラグラフリーディングに関してよくある質問にお答えします。初学者の方が特に気になるポイントを中心に解説します。
- 初心者でもパラグラフリーディングは習得できますか?
-
はい、初心者でも段階的に学習すれば習得できます。ただし、最低限の単語力と文法知識(中学レベル程度)は必要です。最初は簡単な英文から始め、徐々に難易度を上げていくことをおすすめします。
パラグラフリーディングは一朝一夕で身につくものではなく、継続的な練習が必要です。日々の英語学習の中に少しずつ取り入れていくことが大切です。
- どれくらいの期間で効果が現れますか?
-
個人差はありますが、真剣に取り組めば1〜2ヶ月程度で効果を実感できることが多いです。ただし、完全に習得するには半年から1年程度の継続的な練習が必要でしょう。
最初のうちは読解速度が上がらなかったり、むしろ時間がかかったりすることもありますが、それは丁寧に読解の基礎を固めている段階だと考えてください。徐々にスピードと正確さが向上していきます。
- 単語をたくさん知らなくても実践できますか?
-
ある程度の単語力は必要ですが、全ての単語を知っている必要はありません。文脈から単語の意味を推測する力も同時に養うことで、知らない単語があっても文章全体の理解は可能です。
特にディスコースマーカー(論理マーカー)と呼ばれる接続詞や副詞(however, therefore, for example など)を優先的に覚えることで、文章の論理構造を把握しやすくなります。
- 他の英語学習とどう組み合わせるべきですか?
-
パラグラフリーディングは以下のような英語学習と組み合わせるとより効果的です。
- 単語学習:基本的な単語力があると、パラグラフリーディングの効果が高まります
- 文法学習:文の構造を理解していると、複雑な文でも論理関係を把握しやすくなります
- リスニング:音読と組み合わせることで、リーディングとリスニングの両方が向上します
- ライティング:読んだ文章の要約を書く練習をすることで、アウトプット力も同時に鍛えられます
バランスよく英語の4技能(読む・書く・聞く・話す)を学習しながら、パラグラフリーディングを取り入れていくとよいでしょう。
まとめ

パラグラフリーディングは英語の長文をスムーズに読むための重要なスキルです。この記事で解説した内容をまとめると以下のようになります。
- パラグラフリーディングとは、段落ごとに主張を理解し文章全体の構造を把握する読解法
- 一つの段落には一つの主張があるという英語文章の特性を活かした方法
- 主なメリットは読解スピードの向上、重要情報の見極め、試験での時間管理向上など
- トピックセンテンス(主張が書かれた文)を見つけることが重要
- ディスコースマーカー(論理マーカー)を活用して文章の流れを予測しながら読む
- 段落ごとの要約を習慣づけることで読解力が向上する
- 初学者は簡単な英文から始め、徐々に難易度を上げていく
- 単語力や文法知識などの基礎力も並行して高めていくことが大切
- 継続的な練習によって、1〜2ヶ月で効果を実感できることが多い
パラグラフリーディングは単なるテクニックではなく、英語を論理的に理解するための「実力」です。日々の練習を通じて、このスキルを磨いていくことで、英語長文への苦手意識が解消され、英語学習がより楽しく効果的なものになるでしょう。ぜひこの記事で紹介した方法を実践してみてください。