「kosher」(コーシャー)は英語の形容詞として主に使われ、ユダヤ教の食事規定に従った食品や料理を表します。また、口語では「適切な」「正しい」「合法の」といった意味でも使われる多義的な単語です。
名詞としても使われることがあります。
kosherとは?ユダヤ教の食事規定に基づく概念

kosherはユダヤ教の「カシュルート」と呼ばれる食事規定に従っていることを示す言葉です。「カシュルート」はヘブライ語で「適正」「適切」「合法」という意味で、英語では「kosher」と表現されます。発音は「コーシャー」が一般的です。
ユダヤ教では古くから、食べるものに対して様々な規則が定められてきました。これらの規則に従った食品や料理がkosherと呼ばれ、ユダヤ教徒にとって食べることが許されています。kosherは単に食品そのものだけでなく、その調理方法や調理器具、そして食材の組み合わせにも関わる概念です。
現代では、ユダヤ教の文化背景を持たない人々の間でも「kosher」という言葉が使われるようになり、「適切な」「正しい」「問題ない」という意味で口語的に用いられることも増えています。
kosherの詳細な意味と使い方
kosherには主に宗教的な意味と日常会話での意味があります。それぞれの使い方を見ていきましょう。
ユダヤ教における意味
ユダヤ教では、トーラー(ユダヤ教の聖典)に記された食事規定に従った食品や料理をkosherと呼びます。具体的には、
- 許可された動物(割れた蹄を持ち、反芻する草食動物)の肉
- 鱗とヒレを持つ魚
- 特定の鳥類(主に鶏、七面鳥、アヒルなど)
- 上記の規定に従って適切に処理・調理された食品
これらの食品がkosherであるためには、適切なラビ(ユダヤ教の指導者)の監督のもとで処理されることが重要です。市販の食品では、kosher認証マークがついていることで確認できます。
日常会話での意味と使い方
日常会話では、「kosher」は以下のような意味で使われることがあります。
- 適切な、正しい
- 合法の、問題ない
- 本物の、純粋な
- (米国口語で)素晴らしい、格好いい
例えば、「Is this deal kosher?」(この取引は適法ですか?)というように使われます。ビジネスの世界でも、何かが規則に従っているか、適切かを尋ねる際によく使われる表現です。
kosherの食事規則について
kosherの食事規則は非常に詳細で複雑です。ここでは主な規則を紹介します。
許可された食材と禁止された食材
ユダヤ教の食事規定では、食べることができる動物と禁止されている動物が明確に区別されています。
許可された動物(kosher)
- 割れた蹄を持ち、反芻する草食動物(牛、羊、山羊など)
- 鱗とヒレを持つ魚(サーモン、マス、マグロなど)
- 特定の鳥類(鶏、七面鳥、アヒル、ガチョウなど)
禁止された動物(non-kosher)
- 豚(最も有名な禁止食材)
- 貝類、イカ、タコなど(鱗とヒレがない)
- 肉食動物、猛禽類
- 昆虫(一部の例外を除く)
- 爬虫類、両生類
肉と乳製品の分離
kosherの重要な規則の1つに、肉製品と乳製品を一緒に食べることや調理することの禁止があります。これは「子山羊をその母の乳で煮てはならない」というトーラーの教えに基づいています。
実際の対応として、
- 肉料理と乳製品料理は別々の食事として摂取する
- 肉を食べた後は、一定時間(通常6時間)待ってから乳製品を摂取できる
- 乳製品を摂取した後は、口をすすいだ後に肉を食べることができる
- 魚は肉とも乳製品とも一緒に食べることができる(ただし一部の伝統では魚と肉は同じ皿で提供しない)
調理器具と調理方法
kosherの規則には調理器具と調理方法に関する規定も含まれます。
- 肉用と乳製品用の調理器具、食器、シンクを分ける
- 肉と乳製品が混ざってしまった場合、特別な「コーシャー化」の手順が必要
- 肉の処理には特別な方法(シェヒター)が必要で、動物の苦痛を最小限にする
- 肉から血を抜く特別な処理が必要
これらの規則は家庭だけでなく、レストランやホテル、食品製造業者にも適用され、kosher認証を受けるためには厳格な検査を通過する必要があります。
kosherの食品カテゴリー
kosherの食品は一般的に3つのカテゴリーに分類されます。以下にそれぞれの特徴を説明します。
肉類(フレイシク)
「フレイシク」と呼ばれる肉類のカテゴリーには、kosherとされる動物の肉や、その副産物が含まれます。肉を調理する器具も「肉用」として扱われます。
kosher認証マークの横に「M」(Meatの略)と表示されることがあります。
乳製品(ミルヒク)
「ミルヒク」と呼ばれる乳製品のカテゴリーには、牛乳、チーズ、バター、ヨーグルトなどが含まれます。これらを調理・提供する器具も「乳製品用」として区別されます。
kosher認証マークの横に「D」(Dairyの略)と表示されることがあります。
パレヴェ(中立)
「パレヴェ」は肉類でも乳製品でもない食品カテゴリーで、野菜、果物、穀物、卵、魚などが含まれます。これらの食品は肉料理にも乳製品料理にも組み合わせることができます。
kosher認証マークの横に「P」(Pareveの略)と表示されることがあります。
kosherの例文と使い方
ここでは、kosherの様々な意味と使い方を例文で紹介します。
ユダヤ教の食事規定に関する例文
例文
- Is this restaurant kosher?
(このレストランはコーシャーですか?) - I only eat kosher food because of my religion.
(私は宗教上の理由でコーシャー食品だけを食べています。) - The kosher symbol on the package means the food follows Jewish dietary laws.
(パッケージのコーシャーマークは、その食品がユダヤ教の食事規定に従っていることを意味します。) - My friend keeps a kosher kitchen at home.
(私の友人は家でコーシャーの台所を維持しています。)
日常会話での例文(「適切な」「合法の」などの意味)
例文
- Is this business deal kosher?
(この取引は適法ですか?) - The police checked if the document was kosher.
(警察はその書類が正当なものかチェックしました。) - That excuse does not sound kosher to me.
(その言い訳は私には正当に聞こえません。) - Make sure everything is kosher before we sign the contract.
(契約に署名する前に、すべてが適切であることを確認してください。)
kosherとhalalの違い
kosher(ユダヤ教の食事規定)とhalal(イスラム教の食事規定)は、似ている部分もありますが、いくつかの重要な違いがあります。
共通点
- 豚肉の禁止
- 動物の屠殺方法に関する規定
- 血液を食べることの禁止
相違点
- アルコール:halalではすべてのアルコール飲料が禁止されていますが、kosherでは特定のアルコール飲料(ワインなど)が許可されています
- 肉と乳製品:kosherでは肉と乳製品を一緒に食べることが禁止されていますが、halalにはそのような制限はありません
- 海産物:kosherでは鱗とヒレを持つ魚のみが許可されていますが、halalではほとんどの海産物が許可されています
以下は比較表です。
項目 | Kosher(ユダヤ教) | Halal(イスラム教) |
---|---|---|
豚肉 | 禁止 | 禁止 |
アルコール | 一部許可 | 禁止 |
肉と乳製品の組み合わせ | 禁止 | 制限なし |
魚 | 鱗とヒレを持つもののみ許可 | ほとんど許可 |
動物の屠殺方法 | シェヒター(特別な方法) | ハラール(イスラム式) |
肉からの血抜き | 必要 | 必要 |
kosherのよくある間違いと注意点
kosherに関して、以下のような誤解や間違いがよくあります。
「ラビによって祝福された食品」という誤解
kosherは食品がラビによって「祝福された」という意味ではありません。
実際には、食材自体がkosherの基準を満たし、その処理や調理がkosherの規則に従って行われたことを意味します。
「kosher-style」と「kosher」の混同
「kosher-style」(コーシャースタイル)の食品は、ユダヤ料理の伝統的なレシピで作られているかもしれませんが、必ずしもkosherの規則に従って調理されているわけではありません。
本当のkosher食品は、原材料から製造プロセスまですべてがkosherの規則に従っている必要があります。
部分的なkosher規則の適用
kosherは包括的な規則体系です。
例えば、「豚肉を避ける」だけでkosherになるわけではなく、肉と乳製品の分離や調理器具の使い分けなど、すべての規則に従う必要があります。
非kosher食品との接触
kosher食品が非kosher食品や調理器具に触れると、kosherの資格を失います。
このため、kosherを維持するためには専用の調理器具や食器が必要です。
「natural」や「organic」との混同
「natural」(自然)や「organic」(オーガニック)の食品が必ずしもkosherであるとは限りません。
kosherは独自の宗教的基準を持っており、オーガニックや自然食品とは異なる概念です。
「kosher」と「ユダヤ人のみが食べる食品」との混同
kosher食品はユダヤ教徒以外の人も食べることができます。
実際、健康上の理由や食品の品質に対する信頼から、非ユダヤ教徒もkosher食品を選ぶことがあります。
「kosher」に関するよくある質問
- kosherはどのように発音しますか?
-
kosherは英語では「コーシャー」(kóʊʃər)と発音します。日本語では「コーシャー」や「コーシェル」と表記されることもあります。
- kosher認証マークとは何ですか?
-
kosher認証マークは、その食品がラビの監督の下でkosherの規則に従って生産されたことを示すマークです。U、K、OUなど様々な認証機関のマークがあります。認証マークの横にある「M」は肉製品、「D」は乳製品、「P」はパレヴェ(中立)を示しています。
- ベジタリアン食品やビーガン食品は自動的にkosherですか?
-
いいえ、ベジタリアンやビーガンの食品であっても、自動的にkosherであるわけではありません。kosherの認証を受けるためには、すべての原材料、製造プロセス、使用される機器がkosherの規則に適合している必要があります。
- kosher認証を受けるプロセスはどのようなものですか?
-
kosher認証を受けるには、食品メーカーがkosher認証機関に申請し、厳格な審査を受ける必要があります。審査には、原材料の確認、製造プロセスの検査、定期的な監視などが含まれます。
- なぜ非ユダヤ教徒もkosher食品を選ぶのですか?
-
非ユダヤ教徒がkosher食品を選ぶ理由はさまざまです。品質、衛生、食品アレルギーへの配慮、宗教的な共通点(イスラム教徒など)、または単に新しい味を試してみたいという好奇心などが挙げられます。
- 「kosher」と「halal」は同じですか?
-
いいえ、「kosher」はユダヤ教の食事規定を指し、「halal」はイスラム教の食事規定を指します。いくつかの共通点(豚肉の禁止など)がありますが、アルコール、肉と乳製品の組み合わせ、海産物などに関して違いがあります。
- レストランでkosher食品を注文するにはどうすればいいですか?
-
kosher食品を確実に食べたい場合は、kosher認証を受けたレストランを選ぶことが最も確実です。認証を受けていないレストランでは、厨房での交差汚染や非kosher調理器具の使用などの問題があるため、厳格なkosherを維持することは難しいでしょう。
まとめ

本記事では、英語の単語「kosher」について、その意味、使い方、例文を詳しく解説しました。kosherはユダヤ教の食事規定に基づく概念であり、特定の食材や調理方法、食材の組み合わせなどに関する詳細な規則があります。また、日常会話では「適切な」「合法の」といった意味でも使われる多義的な単語です。
以下が本記事のポイントです。
- kosherはユダヤ教の食事規定に従った食品や料理を表す単語です
- 割れた蹄を持ち反芻する動物の肉、鱗とヒレを持つ魚がkosherです
- 豚肉、貝類、肉食動物などはkosherではありません
- 肉と乳製品を一緒に食べることはkosherの規則で禁止されています
- kosherの調理では、肉用と乳製品用の調理器具を分ける必要があります
- 日常会話では「適切な」「合法の」「正当な」といった意味でも使われます
- kosherとhalalには共通点もありますが、いくつかの重要な違いがあります
- kosherに関してはいくつかの誤解や間違いがよくあります
kosherを理解することは、ユダヤ文化や食事規定を理解するためだけでなく、英語のさまざまな表現を学ぶためにも役立ちます。日常会話でのkosherの使い方も覚えておくと、より自然な英語表現ができるようになるでしょう。