TOEICの勉強をしている方の中には、「自分のスコアは国際的な基準ではどのレベルに相当するのだろう?」と疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、TOEICのスコアを国際的な言語能力指標であるCEFR(セファール)に換算する方法を詳しく解説します。初めて英語学習に取り組む方でも理解できるよう、基本的な内容から丁寧に説明していきますので、ぜひ最後までお読みください。
CEFRとは何か?基本的な概要を理解しよう

CEFRは「Common European Framework of Reference for Languages」の略称で、日本語では「ヨーロッパ言語共通参照枠」と訳されます。外国語の運用能力を評価するための国際的な基準として広く認知されているものです。
元々はヨーロッパで異なる言語間の習熟度を共通の物差しで測るために開発されました。現在では英語を含む40以上の言語に対応しており、世界中で語学力の評価指標として活用されています。
CEFRを知ることで、TOEICだけでなく英検やIELTSなど様々な英語試験の結果を統一的な基準で比較できるようになり、自分の英語力を国際的な文脈で理解することができます。
CEFRの6段階レベル分け
CEFRでは言語能力を大きく次の3つのカテゴリーに分類し、さらにそれぞれを2段階に分けて、合計6つのレベルで評価します。
- 基礎段階の言語使用者:A1(入門)、A2(初級)
- 自立した言語使用者:B1(中級)、B2(中上級)
- 熟練した言語使用者:C1(上級)、C2(最上級)
これらのレベルは単なる言語知識だけでなく、「その言語で実際に何ができるか」という観点から定義されています。例えば、B1レベルであれば「仕事や学校、余暇などの身近な話題について理解し、対応できる」といった具体的な能力が示されています。
なぜCEFRが注目されているのか
日本では長らく英検やTOEICが英語力の指標として重視されてきましたが、近年CEFRが注目されるようになった理由はいくつかあります。
まず、グローバル化の進展により、国際的に通用する英語力の評価基準が必要とされるようになりました。また、多様な英語試験が普及する中で、それらを共通の物差しで比較できる枠組みが求められています。
さらに、文部科学省が大学入試や英語教育の指針としてCEFRを参照していることも、注目度が高まっている要因の一つです。英語教育の現場でも、CEFRを基にした到達目標の設定や教材開発が進められています。
TOEICテストの基本:種類と特徴を理解する

TOEICは「Test of English for International Communication」の略で、国際的なコミュニケーションで使われる英語能力を評価するテストです。特にビジネスシーンでの英語力を測る指標として世界中で広く認知されています。
TOEICテストの種類
TOEICには主に以下の種類があります。
- TOEIC Listening & Reading Test(TOEIC L&R)
- リスニング:約45分間、100問
- リーディング:75分間、100問
- 合計:10~990点(5点刻み)で評価
- TOEIC Speaking & Writing Test(TOEIC S&W)
- スピーキング:約20分間
- ライティング:約60分間
- 各0~200点(10点刻み)で評価
- TOEIC Bridge Test
- 英語学習初級者~中級者向けのテスト
現在、日本で最も一般的に受験されているのはTOEIC L&Rですが、4技能(聞く・読む・話す・書く)をバランスよく評価するにはS&Wも併せて受験することが理想的です。
TOEICスコアの特徴
TOEICのスコアは正答数に基づいて算出されます。TOEIC L&Rでは10~990点の範囲で、5点刻みのスコアが与えられます。また、TOEIC S&Wではスピーキングとライティングがそれぞれ0~200点で評価されます。
TOEICの特徴として、合格・不合格ではなくスコア制を採用している点が挙げられます。これにより、自分の英語力の変化を細かく把握することができます。また、スコアの有効期間は公式には2年間とされていますが、実際には多くの企業や機関がそれ以上経過したスコアも参考値として認めています。
TOEICスコアとCEFRレベルの対照表
それでは、TOEICのスコアがCEFRのどのレベルに相当するのか、詳しく見ていきましょう。以下の対照表は、国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)のデータを基に作成したものです。
TOEIC L&RとCEFRの対応関係
CEFRの各レベルに対応するTOEIC L&Rのスコア範囲は以下の通りです。
CEFRレベル | リスニングスコア | リーディングスコア | TOEIC L&R合計 |
---|---|---|---|
C1 | 490点~ | 455点~ | 945~990点 |
B2 | 400点~ | 385点~ | 785~940点 |
B1 | 275点~ | 275点~ | 550~780点 |
A2 | 110点~ | 115点~ | 225~545点 |
A1 | 60点~ | 60点~ | 120~220点 |
注意すべき点として、TOEICでは最高レベルのC2を測定することができません。C2レベルの英語力は、TOEICの満点(990点)を超える言語能力を指すためです。
TOEIC S&WとCEFRの対応関係
スピーキングとライティング能力に関しては、TOEIC S&Wのスコアが以下のようにCEFRレベルと対応します。
CEFRレベル | スピーキングスコア | ライティングスコア |
---|---|---|
C1 | 180点~ | 180点~ |
B2 | 160点~ | 150点~ |
B1 | 120点~ | 120点~ |
A2 | 90点~ | 70点~ |
A1 | 50点~ | 30点~ |
4技能総合評価のためのスコア換算
CEFRは4技能をバランスよく評価する指標であるため、総合的な英語力を把握するには、TOEIC L&RとS&Wの両方のスコアを考慮する必要があります。
4技能を総合的に評価する場合は、TOEIC L&Rのスコアとともに、S&Wのスコアに2.5を掛けて合算します。この計算方法は、L&R(990点満点)とS&W(400点満点)のスコア比率を調整するためのものです。
CEFRレベル | TOEIC L&R + (S&W×2.5) |
---|---|
C1 | 1845~1990点 |
B2 | 1560~1840点 |
B1 | 1150~1555点 |
A2 | 625~1145点 |
A1 | 320~620点 |
CEFRレベル別の英語力の特徴と具体例
CEFRの各レベルがどのような英語力を示しているのか、実際の例を交えて解説します。
C1レベル(TOEIC L&R: 945~990点)
C1レベルは「熟練した言語使用者」に分類され、専門的な内容や学術的な議論も理解・参加できる高い英語力を持っています。
具体的な能力
- 複雑で長い文章を理解し、言外の意味まで把握できる
- 言葉に詰まることなく、流暢かつ自然に会話ができる
- 学術的・専門的な場面でも適切に言葉を使い分けることができる
- 複雑なトピックについても論理的で構成された文章が書ける
実際の場面例
- 英語での専門的な会議やプレゼンテーションを問題なくこなせる
- 海外の大学院での講義や討論に積極的に参加できる
- 英字新聞や専門誌を辞書なしで読み、内容を十分に理解できる
B2レベル(TOEIC L&R: 785~940点)
B2レベルは「自立した言語使用者」の上位区分で、幅広い状況で自信を持って英語を使えるレベルです。
具体的な能力
- 自分の専門分野の技術的な議論を含め、複雑な文章の要点を理解できる
- 英語ネイティブとも無理なく自然な会話ができる
- 幅広いトピックについて明確かつ詳細に自分の考えを表現できる
- 特定の視点からの長所・短所を示しながら意見を述べられる
実際の場面例
- 英語での業務上のミーティングで自分の意見をしっかり伝えられる
- 海外旅行や留学で日常生活に不自由せず、交渉や主張もできる
- ビジネスメールや報告書を適切な表現で作成できる
B1レベル(TOEIC L&R: 550~780点)
B1レベルは「自立した言語使用者」の下位区分で、日常的な状況で自力でコミュニケーションが取れるレベルです。
具体的な能力
- 仕事、学校、余暇など身近な話題について要点を理解できる
- 旅行先での予期せぬ事態にも対処できる
- 身近な話題について簡単なつながりのある文章が作れる
- 経験や計画について基本的な説明ができる
実際の場面例
- 海外旅行で道案内や注文、簡単な会話ができる
- 外国人との基本的な業務上のやり取りに対応できる
- 簡単な英語のニュースやメールの内容を理解できる
A2レベル(TOEIC L&R: 225~545点)
A2レベルは「基礎段階の言語使用者」の上位区分で、身近な状況で基本的なやり取りができるレベルです。
具体的な能力
- 日常的な事柄に関する簡単な情報交換ができる
- 買い物や食事など基本的な状況で意思疎通ができる
- 自分の背景や日常的な事柄について簡単に説明できる
実際の場面例
- 簡単な自己紹介や挨拶、基本的な質問と応答ができる
- レストランでの注文や買い物など、定型的な場面で会話ができる
- 短い個人的なメッセージを書くことができる
A1レベル(TOEIC L&R: 120~220点)
A1レベルは「基礎段階の言語使用者」の下位区分で、最も基本的な言語活動ができるレベルです。
具体的な能力
- 日常的な挨拶や基本的な表現を理解し使うことができる
- 名前や住所など個人情報に関する質問に答えられる
- 相手がゆっくり話してくれれば簡単なやり取りができる
実際の場面例
- 「こんにちは」「ありがとう」などの挨拶や基本表現が使える
- 自分の名前や出身地を伝えることができる
- 簡単な質問(「何時ですか?」など)を理解し答えられる
TOEICスコアをCEFRに換算するメリット
TOEICのスコアをCEFRレベルに換算することには、様々なメリットがあります。英語初学者の方にとっても、以下のメリットを理解しておくことは重要です。
国際的な基準で英語力を把握できる
CEFRは世界的に認知された指標のため、TOEICのスコアをCEFRに換算することで、自分の英語力を国際的な基準で理解することができます。これは特に海外留学や国際的な職場での評価において非常に有用です。
TOEICはビジネス英語に焦点を当てた試験ですが、CEFRは言語使用全般を評価する枠組みです。そのため、CEFRレベルを把握することで、ビジネス以外の場面でも自分の英語力がどの程度通用するかを知ることができます。
他の英語試験との比較が容易になる
英検、IELTS、TOEFLなど様々な英語試験がありますが、CEFRを介することでこれらの異なる試験間でのスコア比較が可能になります。
例えば、「TOEIC 785点」と「英検2級」がどちらも「B2レベル」に相当することがわかれば、これらの資格の価値を同等と見なすことができます。これにより、自分に合った試験を選択したり、複数の試験に挑戦する際の目標設定がしやすくなります。
学習目標の設定が明確になる
CEFRの各レベルには具体的な「Can-do statements(~ができる)」が設定されています。自分のCEFRレベルを知ることで、「次は何ができるようになればいいのか」という具体的な目標を立てることができます。
例えば、現在A2レベル(TOEIC 225~545点)の方が次のB1レベル(TOEIC 550~780点)を目指すなら、「日常会話で意見を述べられるようになる」「簡単なビジネス文書を読めるようになる」といった具体的な目標を設定できます。
就職・留学時のアピールポイントになる
就職活動や留学申請の際には、単にTOEICのスコアを記載するだけでなく、対応するCEFRレベルも併記することで、より国際的な文脈で自分の英語力をアピールすることができます。
特に海外企業や外資系企業では、CEFRが共通言語として理解されていることが多いため、「TOEIC 850点(CEFRレベルB2相当)」のように記載することで、グローバルな観点から評価してもらいやすくなります。
TOEICスコアをCEFRに換算する際の注意点
TOEICのスコアをCEFRに換算する際には、いくつかの重要な注意点があります。正確な自己評価のためにも、これらの点に留意しましょう。
4技能のバランスが重要
CEFRは「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能をバランスよく評価する指標です。日本で一般的に受験されているTOEIC L&Rだけでは、リスニングとリーディングの2技能しか測定できません。
そのため、総合的な英語力をCEFRレベルで評価するには、TOEIC S&Wも受験することが望ましいでしょう。もし、TOEIC L&Rのみのスコアしか持っていない場合は、スピーキングとライティングのスキルが同レベルであるとは限らないことを理解しておく必要があります。
TOEICで測定できるCEFRレベルの範囲
TOEICで測定できるCEFRレベルはA1からC1までです。最高レベルのC2はTOEICでは測定できません。C2レベルは、ネイティブに近い高度な言語運用能力を指すため、TOEICの満点(990点)を取得しても、それだけでC2レベルとは認められません。
C2レベルの英語力を証明したい場合は、Cambridge英検のCPE(Certificate of Proficiency in English)やIELTS 8.5~9.0など、他の試験の受験を検討する必要があります。
スコア換算の限界
TOEICとCEFRの換算表はあくまで目安であり、完全に一致するものではありません。TOEICはビジネスコミュニケーションに焦点を当てた試験であるため、学術的な英語力や創造的な表現力などは直接測定していません。
また、同じTOEICスコアでも、個人の英語使用経験や学習背景によって、実際のコミュニケーション能力には差がある場合があります。例えば、海外在住経験のある人は、同じスコアでもスピーキング能力が高い傾向にあります。
技能によるレベル差
同じ人でも、「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能で異なるCEFRレベルにあることは珍しくありません。例えば、日本人英語学習者の多くは、リーディングやリスニングのレベルに比べて、スピーキングやライティングのレベルが低い傾向があります。
総合的な英語力を高めるためには、4技能をバランスよく学習することが重要です。特に苦手な技能を集中的に強化することで、CEFRレベル全体の底上げにつながります。
TOEICとCEFRの関係についてよくある質問
TOEICとCEFRの関係について、初学者の方がよく疑問に思う点をQ&A形式でまとめました。
- TOEIC以外の英語試験とCEFRの対応は?
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英検、IELTS、TOEFLなどの主要な英語試験もCEFRとの対応関係が示されています。以下に主な試験とCEFRレベルの対応を示します。
CEFRレベル TOEIC L&R 英検 IELTS TOEFL iBT C2 – 1級 8.5-9.0 95-120 C1 945-990 準1級 7.0-8.0 72-94 B2 785-940 2級 5.5-6.5 42-71 B1 550-780 準2級 4.0-5.0 32-41 A2 225-545 3級 3.0 – A1 120-220 4-5級 2.0 – この表を参考にすれば、例えば英検2級を持っている方は、およそTOEIC 785~940点、IELTS 5.5~6.5に相当する英語力を持っていると考えることができます。
- C2レベルはTOEICでは測れないのはなぜ?
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TOEICはビジネスコミュニケーションのための実用的な英語力を測定することを目的としており、C2レベルのような極めて高度な言語能力(文学的な表現理解や高度な学術議論など)を測る問題は含まれていません。
C2レベルは「熟練した言語使用者」の最上位区分で、ほぼネイティブに近い英語力を示します。TOEICの満点(990点)でもC1レベルまでと位置づけられています。
- TOEICスコアを上げるとCEFRレベルも上がる?
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基本的には、TOEICのスコアが上がれば、それに応じてCEFRレベルも上がる可能性があります。ただし、CEFRは4技能をバランスよく評価する指標なので、TOEIC L&Rのスコアが上がっても、スピーキングやライティング能力が同等に向上しなければ、総合的なCEFRレベルは上がらないこともあります。
例えば、TOEIC L&Rで900点(B2/C1レベル)を取得していても、スピーキングが苦手でTOEIC Speakingのスコアが100点(B1レベル)であれば、総合的なCEFRレベルはB1~B2の間と評価される可能性があります。
- 日本人の平均的なCEFRレベルはどのくらい?
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正確な統計データは限られていますが、一般的に日本人の英語力は以下のような分布と言われています。
- 一般的な社会人:A1~A2レベル(TOEIC 120~545点程度)
- 大学卒業レベル:A2~B1レベル(TOEIC 225~780点程度)
- 英語を日常的に使う職業人:B1~B2レベル(TOEIC 550~940点程度)
- バイリンガルレベルの専門家:B2~C1レベル(TOEIC 785点以上)
文部科学省は、高校卒業時にB1レベル(TOEIC 550~780点相当)を目指すという目標を掲げていますが、実際にはまだ達成できていない状況です。
まとめ

TOEICスコアとCEFRレベルの関係について解説してきました。この記事のポイントをまとめると、
- CEFRは国際的な言語能力評価の枠組みで、A1(入門)からC2(最上級)までの6段階で評価される
- TOEICスコアはCEFRのA1~C1レベルに対応しており、C2レベルはTOEICでは測定できない
- TOEIC L&RとCEFRの対応関係は以下の通り:
- C1:945~990点
- B2:785~940点
- B1:550~780点
- A2:225~545点
- A1:120~220点
- 4技能総合評価のためには、TOEIC L&RとS&Wの両方のスコアを考慮する必要がある
- TOEICスコアをCEFRに換算するメリットには、国際的な基準での英語力把握、他試験との比較、明確な学習目標の設定などがある
- 換算の際には、4技能のバランス、測定可能なレベルの範囲、スコア換算の限界などに注意が必要
CEFRを理解し、自分のTOEICスコアがどのレベルに相当するかを知ることで、より効率的な英語学習が可能になります。単にTOEICのスコアアップを目指すだけでなく、CEFRの各レベルで求められる具体的な能力を意識しながら、バランスの取れた英語力の向上を目指していきましょう。