英語力を客観的に示す指標として広く知られているTOEIC。就職活動や昇進、留学など様々な場面で活用されるこの試験ですが、実際にどのくらいの点数が「すごい」と評価されるのでしょうか。「平均点は何点なの?」「履歴書に書ける点数は?」「自分の年代ではどのくらいの点数を目指すべき?」といった疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、中学生・高校生・大学生・社会人それぞれの観点からTOEICスコアの目安や評価基準を詳しく解説します。英語学習をこれから始める方にもわかりやすく説明していきますので、目標設定の参考にしてください。
TOEICとは何か?基本情報を理解しよう

TOEICとは「Test of English for International Communication」の略称で、英語によるコミュニケーション能力を測定するための国際的な試験です。本記事では特に断りがない限り、最も一般的な「TOEIC® Listening & Reading Test(TOEIC L&R)」について解説します。
TOEICの特徴として、合格・不合格の判定がなく、10〜990点の範囲で5点刻みのスコアで評価される点が挙げられます。試験はリスニング(495点満点)とリーディング(495点満点)の2つのセクションから構成されており、合計で990点満点となります。
全体の平均点は約600〜625点で推移しており、2022年度の正確な平均点は608点でした。セクション別に見ると、リスニングが331点、リーディングが277点となっています。一般的に、リスニングの方がリーディングよりも平均点が高く、得点が伸ばしやすい傾向にあります。
TOEICスコアの一般的な評価基準
TOEICスコアはどのように評価されるのか、一般的な目安について見ていきましょう。スコアによって期待される英語力や評価が大きく変わります。
400点未満:基礎固めが必要なレベル
400点未満のスコアは、英語の基礎力が発展途上の段階と言えます。高校基礎レベルの文法や単語に不安があり、簡単な会話はできても、少し複雑な内容になると理解が難しくなります。このレベルでは、履歴書に記載するとかえって不利になる可能性があるため、まずは基礎力強化を目指しましょう。
400~500点:基本的な英語力がある段階
このレベルでは、基本的な英会話や簡単な文章の読み書きができ始めています。日常的な短い会話は聞き取れますが、意見を述べたり複雑な要求に応えたりすることはまだ難しい段階です。就職活動では、このスコア帯だけでアピールするのは厳しいかもしれません。
500~600点:平均的な英語力
500〜600点は、TOEICの受験者の中では平均的なスコア帯です。基本的な日常会話や業務上の簡単なコミュニケーションはある程度可能なレベルと言えます。一般的な新入社員の平均スコアが545点程度であることを考えると、このスコア帯でも就職活動である程度のアピールポイントになります。
600~700点:ビジネスでも通用し始めるレベル
600点以上のスコアがあれば、TOEICの平均点を上回っており、履歴書に記載してアピールできるレベルです。英語を使用する部署の中途社員の平均が約620点であることからも、この点数があれば一定の評価を得られるでしょう。日常的な会話や基本的なビジネス英語に対応できるレベルとなります。
700~800点:英語を実務で使える段階
700点を超えると「英語が使える」と認められる段階に入ります。ビジネスシーンでの英語使用にも十分対応でき、海外出張や外国人とのミーティングなどでも活躍できるレベルです。多くの企業でも評価される点数帯となります。
800点以上:高度な英語力を持つレベル
800点以上は、実務でも十分通用する高い英語力を持っていると評価されます。ネイティブスピーカーとのスムーズなコミュニケーションや、専門性の高い内容の理解も可能になるレベルです。このスコア帯になると、英語を使う様々な職種で大きなアドバンテージとなります。
中学生にとってのTOEICスコア
中学生の段階でTOEICを受験する例は多くありませんが、早くから英語力を測定したい場合の目安を解説します。
中学生の平均点と目標設定
中学生のTOEIC受験者数は少ないため正確な平均点のデータは限られていますが、小・中学生のスコアは社会人よりも低い傾向にあります。ただ、英語に親しんでいる中学生の場合、早い段階から高いスコアを獲得することも珍しくありません。
中学生の段階では、まずは300〜400点を目指すのが現実的です。英検で言えば3級〜準2級程度の英語力に相当します。この段階では文法や基本的な語彙の習得に重点を置くことが大切です。
中学生がTOEICを受ける意義
中学生がTOEICを受験する主な目的は以下のようなものが考えられます。
- 現在の英語力を客観的に把握する
- 高校受験や将来の進路に向けて早めに準備する
- 英語学習のモチベーション維持・向上
- グローバル社会へ対応する基礎力を培う
ただし、中学生には「TOEIC Bridge®」という初級・中級者向けのテストもあり、こちらの方が適している場合もあります。TOEIC L&Rよりも難易度が低く設定されているため、英語学習を始めたばかりの中学生にはこちらがおすすめです。
高校生にとってのTOEICスコア
高校生になると大学入試や将来の就職を見据えて、TOEICに挑戦する人が増えてきます。高校生にとってのスコア目安を見ていきましょう。
高校生の平均点と目指すべきスコア
高校生の平均スコアは正確なデータがありませんが、学生全体の平均(581点)より低い傾向にあります。しかし、英語に力を入れている高校では平均600点前後というケースも見られます。
高校生の段階では、以下のような目標設定が考えられます。
- 基礎レベル:400〜500点
- 標準レベル:500〜600点
- 上級レベル:600点以上
特に大学受験で英語を使用する学部や、将来英語を活用したい高校生は600点以上を目指すと良いでしょう。
大学入試におけるTOEICスコアの活用
多くの大学では入試の英語試験の代わりにTOEICスコアを利用できる制度(英語外部試験利用)を導入しています。大学や学部によって求められるスコアは異なりますが、一般的に以下のような目安があります。
- 一般的な私立大学:500〜600点程度
- 難関私立大学:650〜750点程度
- 国公立大学(英語外部試験利用):700点以上
TOEICスコアを大学入試に活用したい場合は、志望校の入試要項をよく確認しましょう。
大学生にとってのTOEICスコア
大学生にとって、TOEICスコアは就職活動や留学などで重要な意味を持ちます。大学生のスコア目安について詳しく見ていきましょう。
大学生の平均点と卒業までの目標
大学生のTOEIC平均点は581点程度とされています。ただし、大学や学部によって大きく異なり、英語系の学部では700点以上が平均という大学もあります。
一般的に大学卒業までに目指すべきスコアは以下のような目安があります。
- 一般企業への就職希望:600〜650点以上
- 外資系企業や商社を目指す:700〜800点以上
- 海外留学や国際機関を目指す:800点以上
就職活動でのTOEICスコアの重要性
企業の約60%はTOEICスコアを採用時の参考にしていると言われています。業界や職種によって求められるスコアは異なりますが、一般的には以下のような傾向があります。
- メーカーや一般企業:600点程度
- IT・金融:650〜700点程度
- 外資系企業:700〜800点程度
- 商社・航空業界:750〜850点以上
就職活動では600点以上あれば最低限のアピールポイントになりますが、英語を使う業務が想定される場合はより高いスコアが求められます。大学時代に計画的にスコアアップを目指すことが重要です。
社会人にとってのTOEICスコア
社会人にとってTOEICスコアは、キャリアアップや昇進、転職などで重要な役割を果たします。社会人のスコア目安を詳しく見ていきましょう。
社会人の平均点と職種別の差異
社会人のTOEIC平均点は638点で、学生(581点)より57点高くなっています。これは英語学習期間の長さやビジネスでの英語使用経験が影響していると考えられます。
職種別に見ると、平均スコアには大きな差があります。
- 海外職:731点
- 教育職:713点
- 法務職:692点
技術職や営業職、事務職などでも多くの人がTOEICを受験していますが、平均点は海外職ほど高くはありません。
ビジネスシーンで評価されるスコア
社会人のビジネスシーンでは、以下のようなスコア基準が一般的です。
- 600点以上:基本的なビジネス英語力がある
- 700点以上:英語を使用する業務に対応できる
- 800点以上:英語での交渉や専門的な業務が可能
- 900点以上:ネイティブレベルに近い高度な英語力
多くの企業では昇進・昇格の要件として特定のTOEICスコアを設定しているケースもあります。また、海外赴任や海外出張の基準としてTOEICスコアが参考にされることも少なくありません。
転職市場でのTOEICスコアの価値
転職市場では、TOEICスコアは客観的な英語力の指標として重要視されています。特に以下のような場面で高いスコアが求められます。
- 外資系企業への転職:700〜800点以上
- グローバル展開している日系企業:650〜750点以上
- 英語を使用する専門職:700点以上
社会人としてキャリアアップを目指す場合、自分の業界や目指す職種で求められるスコア基準を把握し、計画的に学習を進めることが大切です。
年代別TOEICスコアを伸ばすための効果的な勉強法
TOEICスコアを効果的に伸ばすためには、年代や現在のレベルに合わせた勉強法が重要です。それぞれの状況に合わせた勉強法を紹介します。
中高生のためのTOEIC勉強法
中高生の段階では、まず英語の基礎をしっかり固めることが重要です。
- 英単語・熟語の習得:中学・高校で学ぶ基本的な単語や熟語を確実に覚えましょう。
- 文法の基礎固め:英文法の基本をしっかり理解しましょう。
- リスニング習慣の確立:毎日少しでも英語を聞く習慣をつけましょう。
- 多読の習慣化:易しい英語の本や記事から読み始め、徐々にレベルを上げていきましょう。
- TOEIC専用問題集の活用:基礎ができてきたら、TOEIC入門用の問題集に取り組みましょう。
特に中高生の時期は、発音やリスニングの感覚を養いやすい時期です。日常的に英語の音に触れる環境を作ることが重要です。
大学生のためのTOEIC勉強法
大学生は就職活動や留学に向けて、より実践的な勉強法が効果的です。
- 目標スコアの設定:就職先や留学先に必要なスコアを明確にしましょう。
- TOEIC頻出単語の習得:TOEICによく出る単語・熟語を重点的に学習しましょう。
- パート別対策:自分が苦手なパートを集中的に強化しましょう。
- 模擬テストの定期的な受験:本番と同じ形式で練習することで、時間配分や集中力を養いましょう。
- 英語を日常に取り入れる:英語のニュースや映画、海外ドラマなどを積極的に取り入れましょう。
大学生は時間の融通が効きやすいので、集中的に学習できる環境を作ることが大切です。サークルやボランティア活動などで英語を使う機会を作るのも効果的です。
社会人のためのTOEIC勉強法
仕事と両立しながらTOEICスコアをアップさせるには、効率的な学習法が鍵となります。
- 隙間時間の活用:通勤時間や昼休みなどを使って短時間でも継続的に学習しましょう。
- 業務関連の英語強化:自分の仕事に関連する英語表現や専門用語を優先的に学びましょう。
- オンライン学習ツールの活用:スマホやタブレットを使って、いつでもどこでも学習できる環境を整えましょう。
- 週末の集中学習:平日は短時間の学習を継続し、週末にまとまった時間で復習や模擬テストに取り組みましょう。
- 英語環境の自主的な創出:社内の英語勉強会への参加や、外国人同僚との積極的な会話など、実践の場を作りましょう。
社会人は時間の制約がある分、質の高い学習教材や効率的な学習方法を選ぶことが重要です。明確な目標設定と計画的な学習が成功の鍵となります。
TOEICスコアアップの具体的なテクニック
どの年代でも共通して活用できるTOEICスコアアップのテクニックを紹介します。
リスニングスコアを伸ばすコツ
リスニングセクションでのスコアアップには以下の対策が効果的です。
- 英語の音に日常的に触れる:英語のニュースやポッドキャスト、映画などで英語を聞く習慣をつけましょう。
- シャドーイング練習:英語の音声を聞きながら、少し遅れて同じように発音する訓練を行いましょう。
- ディクテーション:聞いた英語をそのまま書き取る練習をしましょう。
- 各パートの特徴を理解する:リスニングのパート1~4それぞれの出題パターンを把握しましょう。
- 音のつながりに慣れる:リンキングやリダクションなど、英語特有の音の変化に慣れることが重要です。
リスニングは日々の積み重ねが大切です。毎日少しでも英語を聞く時間を作りましょう。
リーディングスコアを伸ばすコツ
リーディングセクションでのスコアアップには以下の対策が効果的です。
- 語彙力の強化:TOEIC頻出単語を徹底的に覚えましょう。
- 速読トレーニング:英文を素早く読む練習をし、読むスピードを上げましょう。
- 文法の体系的理解:TOEICでよく出題される文法項目を重点的に学習しましょう。
- スキミングとスキャニング:全体を素早く把握する「スキミング」と、必要な情報を探し出す「スキャニング」の技術を磨きましょう。
- 長文読解のコツをつかむ:パート7では特に時間配分が重要です。問題を先に読んでから本文を読む方法も効果的です。
リーディングは語彙力が鍵となります。単語学習を継続的に行うことで、読解スピードと正確性が向上します。
模擬テストの効果的な活用法
定期的に模擬テストを受けることで、実力の伸びを確認し、弱点を把握することができます。
- 本番と同じ条件で受験:時間配分や環境を本番と同じにしましょう。
- 解答の分析:間違えた問題の傾向を分析し、弱点を見つけましょう。
- 定期的な振り返り:1〜2ヶ月に一度は模擬テストを受け、進捗を確認しましょう。
- 苦手パートの集中対策:分析結果をもとに、苦手なパートを重点的に強化しましょう。
- 時間配分の練習:特にリーディングでは時間配分が重要です。効率的に問題を解く練習をしましょう。
模擬テストは単なる評価ツールではなく、学習の指針となる重要な要素です。結果を次の学習に活かしましょう。
TOEICのスコアについてよくある質問
ここでは、TOEICに関してよく寄せられる質問に回答します。
- TOEICスコアはどのくらいの期間で上げられますか?
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スコアアップにかかる期間は、現在のレベルや目標スコア、学習時間などによって大きく異なります。一般的には以下のような目安があります。
- 100点アップ:2〜3ヶ月程度(週10時間程度の学習)
- 200点アップ:4〜6ヶ月程度(週10時間程度の学習)
- 300点以上のアップ:6ヶ月〜1年程度(週10時間以上の継続的な学習)
効率的な学習方法を選び、継続的に取り組むことが重要です。
- TOEICと英検はどちらを優先すべきですか?
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TOEICと英検はそれぞれ特徴が異なります。進路や目的に応じて選ぶと良いでしょう。
- TOEIC:ビジネス英語に強く、就職や昇進に有利。スコア制で細かな英語力の変化が分かる。
- 英検:総合的な英語力を測定し、「話す・書く」能力も評価。大学入試での活用範囲が広い。
中高生は大学入試を視野に入れるなら英検を、大学生や社会人は就職や昇進を考えるならTOEICを優先すると良いでしょう。理想的には両方取得することで、多角的に英語力をアピールできます。
- 海外では通用しないというのは本当ですか?
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TOEICは主に日本や韓国などアジア圏で広く活用されていますが、欧米ではTOEFLやIELTSの方が認知度が高い傾向にあります。ただし、以下の点は誤解です。
- TOEICは国際的な英語試験であり、世界150カ国以上で実施されています。
- グローバル企業の多くはTOEICスコアを英語力の指標として認識しています。
- ビジネス英語の能力評価としては国際的に通用します。
留学や海外就職が目的の場合は、TOEICに加えて現地で求められる英語試験(TOEFLやIELTSなど)も検討した方が良いでしょう。
- スコアの有効期限はありますか?
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公式にはTOEICスコアに有効期限はありません。ただし、実際の活用においては以下の点に注意が必要です。
- 多くの企業や大学では、2年以内のスコアを求めることが一般的です。
- 就職活動や大学入試では、なるべく新しいスコアの方が評価されやすい傾向があります。
- 英語力は使わないと低下するため、定期的な受験でスコアを更新することが望ましいです。
重要な場面で活用する場合は、2年以内の最新スコアを持っていることが理想的です。
まとめ

この記事では、TOEICスコアの評価基準と年代別の目安について詳しく解説しました。重要なポイントをまとめます。
- TOEICの全体平均点は約600〜625点で、リスニングの方がリーディングよりも得点が取りやすい傾向にある
- 社会人の平均点(638点)は学生(581点)よりも高く、職種によって大きな差がある
- 中学生・高校生は基礎力強化を重視し、400〜600点を目指すと良い
- 大学生は就職や留学を見据えて、600〜800点を目標にすると良い
- 社会人は職種や目的に応じて、600〜800点以上を目指すと効果的
- 600点以上で履歴書にアピールできるレベル、700点を超えると「英語が使える」と認められる
- 800点以上あれば、実力・資格としても十分なレベルと評価される
- スコアアップには年代や目的に合わせた効果的な学習法を選ぶことが重要
- リスニングは日常的に英語に触れること、リーディングは語彙力強化が鍵となる
TOEICスコアはあくまで英語力を測る一つの指標にすぎません。大切なのは、自分の目標や状況に合わせた現実的なスコア目標を設定し、継続的に学習を続けることです。
この記事が皆さんの英語学習の目標設定と計画立てに役立てば幸いです。