英語の資格試験としてよく知られるTOEICとTOEFL。就職や留学、キャリアアップなど様々な目的で受験を検討する方が多いですが、それぞれの試験の特徴や違いを正確に理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。どちらを受験すべきか迷っている方も多いでしょう。
本記事では、英語初学者の方にも分かりやすく、TOEICとTOEFLの違いを詳しく比較しながら、目的に合った試験の選び方や点数換算の目安について徹底解説します。
TOEICとTOEFLの基本情報

TOEICとTOEFLはどちらも英語能力を測定する世界的に認知された試験ですが、その特徴や目的は大きく異なります。まずは両試験の基本情報から見ていきましょう。
TOEICは「Test of English for International Communication」の略で、日常生活やグローバルビジネスにおける実践的な英語力を測定するテストです。世界160カ国以上で実施されており、特に日本では企業の採用や昇進の基準として広く活用されています。
一方、TOEFLは「Test of English as a Foreign Language」の略で、英語を母国語としない人のための世界標準の英語テストです。主に英語圏の大学・大学院への留学に必要な英語力証明として、世界160カ国13,000以上の教育機関で採用されています。
TOEICの種類と特徴
TOEICには複数の種類があります。最も一般的なのはTOEIC L&R(Listening & Reading)テストで、リスニングとリーディング能力を評価します。また、スピーキングとライティング能力を測るTOEIC S&W(Speaking & Writing)テストもあります。
TOEIC L&Rテストは990点満点で、リスニングセクション(495点)とリーディングセクション(495点)から構成されています。試験時間は約2時間で、すべてマークシート方式です。公開テストは年間約18回実施され、受験料は7,810円です。また、企業や学校などを対象とした団体向けのIPテスト(4,230円)も提供されています。
TOEFLの種類と特徴
TOEFLには主に「iBT(Internet-Based Test)」と「ITP(Institutional Testing Program)」の2種類があります。iBTはインターネットで個人受験するタイプで、ITPは学校などの団体で受験するものです。
TOEFL iBTは120点満点で、リーディング(30点)、リスニング(30点)、スピーキング(30点)、ライティング(30点)の4セクションから構成されています。試験時間は約2時間で、すべてコンピューター上で実施されます。年間120回以上開催され、全国40カ所以上のテストセンターで受験可能です。受験料は$245(約38,000円)と高額です。
TOEICとTOEFLの主な違い
TOEICとTOEFLの違いは多岐にわたります。目的、試験内容、問題傾向、難易度など様々な観点から詳しく比較してみましょう。
初学者の方にとって、どちらの試験が自分に合っているか判断するために、これらの違いを理解することはとても重要です。自分の英語学習の目標や将来のキャリアプランによって、選ぶべき試験は変わってきます。
目的の違い
TOEICとTOEFLの最も大きな違いは、その目的にあります。
TOEICは主にビジネスシーンでの英語力を証明するために活用されます。日本国内の就職・転職活動、昇進要件、海外赴任の基準など、実務的な場面で評価されることが多いです。また、教員採用試験や公務員試験での加点対象となることもあります。
一方、TOEFLは英語圏の大学・大学院への留学に必要な英語力証明として活用されます。アカデミックな環境で必要とされる英語力を総合的に評価するため、大学での授業や学生生活で必要なスキルが試されます。
試験内容の違い
試験内容にも大きな違いがあります。
TOEICは主にリスニングとリーディングの2技能を評価します(TOEIC L&Rの場合)。実際のビジネスシーンを想定した会話や文書理解、オフィスでのコミュニケーション、電話応対、会議など、実務に即した場面から出題されます。
TOEFLは4技能(リーディング、リスニング、スピーキング、ライティング)を総合的に評価します。大学の講義を聴いて理解する、アカデミックな文章を読む、意見を述べる、論理的な文章を書くなど、大学生活で必要なスキルが試されます。特徴的なのは、「資料を読んだり講義を聞いたりした後で、その内容について意見を述べたり文章を書いたりする」という統合型の問題があることです。
問題傾向の違い
出題される問題の傾向も大きく異なります。
TOEICはビジネス英語が中心で、日常会話やビジネスシーンでの実用的な英語表現が多く出題されます。会社での会話、出張、商談、広告、Eメールなど、ビジネスに関連した内容が中心です。
TOEFLはアカデミックな内容が中心で、大学の講義や学術論文のような専門性の高い題材が出題されます。生物学、天文学、歴史、教育など、様々な学術分野の専門用語を含む内容が出題されるため、幅広い知識と高度な英語理解力が必要です。
難易度の違い
一般的に、TOEFLの方がTOEICよりも難易度が高いとされています。
TOEICは比較的身近な話題やビジネスシーンが出題されるため、取り組みやすい面があります。また、マークシート方式のため解答方法も分かりやすいです。
TOEFLはアカデミックな内容が多く、4技能すべてが評価されるため、より高度な英語力が求められます。特にスピーキングとライティングは、自分の考えを英語で論理的に表現する必要があり、初学者にとってはハードルが高いでしょう。
TOEICからTOEFLへの換算表
TOEICとTOEFLのスコアを直接比較することは難しいですが、目安となる換算表を紹介します。ただし、これはあくまで目安であり、個人の英語力や得意分野によって実際のスコアは異なる場合があります。
TOEICとTOEFLでは測定する英語能力の種類や問題形式が異なるため、単純な換算は難しいのですが、大まかな目安として参考にしてください。
実際の統計データから作成された換算表によると、以下のような関係性があると言われています。
- TOEIC 950〜990点 → TOEFL iBT 88点前後
- TOEIC 900〜949点 → TOEFL iBT 75点前後
- TOEIC 850〜899点 → TOEFL iBT 67点前後
- TOEIC 800〜849点 → TOEFL iBT 62点前後
- TOEIC 750〜799点 → TOEFL iBT 57点前後
- TOEIC 700〜749点 → TOEFL iBT 53点前後
- TOEIC 650〜699点 → TOEFL iBT 52点前後
- TOEIC 600〜649点 → TOEFL iBT 47点前後
注目すべき点として、TOEICで900点台後半の高得点を取得している人でも、TOEFL対策をあまりせずにTOEFLを受験すると、90点台を取ることは難しい場合が多いようです。これは両試験の性質の違いが大きく影響しています。
換算表の注意点
この換算表はあくまで目安であり、以下の点に注意する必要があります。
- 個人の英語力や得意分野によって実際のスコアは大きく異なります。
- TOEICの対策をしっかり行い高得点を取得した人でも、TOEFLの試験形式に慣れていないと期待するスコアが取れないことがあります。
- 特にTOEICで高得点を取得している人でも、TOEFLのスピーキングやライティングセクションで苦戦するケースが多いです。
- 逆に、留学経験がある人などは、TOEICスコアから予測されるよりも高いTOEFLスコアを取得することがあります。
TOEICとTOEFLのどちらを選ぶべきか?
TOEICとTOEFLのどちらを選ぶべきかは、あなたの英語学習の目標やキャリアプランによって異なります。目的別、英語レベル別に適した選択肢を考えてみましょう。
英語初学者の方にとって、最初からどちらかに絞る必要はなく、段階的に取り組むという選択肢もあることをお伝えしておきます。まずは自分の目的を明確にして、それに合った試験を選ぶことが大切です。
キャリア目標別の選び方
キャリア目標に応じた選び方の目安は以下の通りです。
- 日本国内での就職・転職を目指す場合
- TOEICがおすすめです。多くの日本企業はTOEICスコアを採用基準や昇進要件として採用しています。特に総合職や海外取引のある部署を希望する場合は、TOEIC 700点以上を目指すと良いでしょう。
- 海外留学を目指す場合
- TOEFLがおすすめです。特に英語圏の大学・大学院への留学には、TOEFLスコアが必須です。志望校が求めるスコアは大学によって異なりますが、一般的には80点以上が目安となります。
- 外資系企業や国際機関を目指す場合
- TOEFLとTOEICの両方が評価される傾向にあります。外資系企業ではTOEICスコアが採用基準として使われることが多いですが、高度な英語力を証明するためにTOEFLスコアがあると有利です。
- 英語教師を目指す場合
- 教員採用試験ではTOEICスコアが加点対象になることが多いですが、より専門的な英語指導を行う場合はTOEFLスコアも役立ちます。
英語レベル別の選び方
現在の英語レベルに応じた選び方の目安は以下の通りです。
- 英語初学者(基礎レベル)
- まずはTOEICからスタートするのがおすすめです。問題形式がシンプルで、身近な英語表現が多いため、取り組みやすいでしょう。目標は500点前後から始めて徐々に上げていきましょう。
- 中級者(英検準2級~2級レベル)
- TOEICで700点以上を目指しましょう。ビジネス英語の基礎を固めながら、将来的にTOEFLにも挑戦する準備をするのが良いでしょう。
- 上級者(英検準1級レベル以上)
- TOEICで900点以上、TOEFLで80点以上を目指せるでしょう。両方の試験に挑戦して、多角的な英語力をアピールできるようにすると良いでしょう。
効果的な学習方法
TOEICとTOEFLはそれぞれ特徴が異なるため、効果的な学習方法も異なります。ここでは、初学者の方向けに、それぞれの試験対策のポイントをご紹介します。
試験対策においては、まず試験の形式や特徴を理解し、計画的に学習を進めることが重要です。特に初学者の方は、基礎から段階的に学習を進めることをおすすめします。
TOEIC学習のポイント
TOEICで高得点を取るためのポイントは以下の通りです。
- ビジネス英語の語彙力強化
- TOEICでは、ビジネスシーンでよく使われる語彙が頻出します。ビジネス英語の単語帳や問題集を活用して、語彙力を強化しましょう。
- リスニング力の強化
- 日常的に英語のニュースやポッドキャストを聴く習慣をつけましょう。特にビジネス関連のコンテンツが役立ちます。
- TOEICのリスニング問題は速いスピードで進むため、集中力を持続させる練習も大切です。
- 時間配分の管理
- TOEICは時間との勝負です。特にリーディングセクションでは、200問を75分で解く必要があります。効率的な時間配分を練習しましょう。
- 最初は全問解こうとせず、確実に点が取れる問題から解いていく戦略も有効です。
- 模擬試験の活用
- 本番と同じ条件で模擬試験を繰り返し解くことで、時間配分や集中力の維持を練習しましょう。
- 間違えた問題は徹底的に復習し、同じミスを繰り返さないようにしましょう。
TOEFL学習のポイント
TOEFLで高得点を取るためのポイントは以下の通りです。
- アカデミックな英語力の強化
- 学術的な文章や講義を理解するための英語力が必要です。大学レベルの英語教材や、TED Talksなどを活用しましょう。
- 専門用語や学術的な表現に慣れることが重要です。
- スピーキング・ライティング力の強化
- 自分の意見を論理的に英語で表現する練習が必要です。テーマに沿って意見を述べる練習を日常的に行いましょう。
- 特にスピーキングは時間制限があるため、簡潔に要点をまとめる練習が大切です。
- 統合型問題への対応
- リーディングとリスニングの内容を統合して、スピーキングやライティングで表現する問題が特徴的です。情報を要約し、自分の言葉で表現する練習をしましょう。
- 試験形式への慣れ
- コンピューター上での受験に慣れることが重要です。公式サイトの練習問題やサンプルテストを活用しましょう。
- 特にスピーキングセクションでは、マイクに向かって話す環境に慣れておく必要があります。
TOEICとTOEFLに関するよくある質問
- TOEICとTOEFLのスコアは何年間有効ですか?
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TOEICのスコアに公式な有効期限はありません。ただし、企業によっては「〇年以内に取得したスコアのみ」と期限が設けられていることがあります。認定証の再発行は受験日から2年以内までとなっています。
TOEFLのスコアは受験日から2年間有効です。2年を過ぎるとスコアは無効となり、再発行もできなくなりますので注意が必要です。
- 初めて英語試験を受ける場合、どちらから始めるべきでしょうか?
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初めて英語試験を受ける場合は、まずTOEICから始めることをおすすめします。TOEICは問題形式がシンプルで、日常生活やビジネスシーンの英語が中心なので、初学者でも取り組みやすいでしょう。ある程度のスコアを取得してから、TOEFLにチャレンジするのが効果的です。
- TOEICで高得点を取れれば、TOEFLも高得点が取れますか?
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必ずしもそうとは限りません。TOEICで900点以上の高得点を取得している人でも、TOEFLで期待するスコアが取れないことがあります。これは両試験の測定する英語能力や問題形式が異なるためです。特に、TOEICはリスニングとリーディングのみですが、TOEFLはスピーキングとライティングも含まれるため、4技能をバランスよく強化する必要があります。
- 海外就職を目指す場合、どちらの試験が有利ですか?
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海外就職を目指す場合、一般的にはTOEFLの方が有利です。特に英語圏の企業では、TOEFLは世界的に認知された英語力の指標として評価されることが多いです。ただし、日系企業の海外支社などではTOEICスコアが評価されることもあります。可能であれば両方のスコアを持っておくと、より多様な選択肢が広がるでしょう。
- 両方の試験を受ける価値はありますか?
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はい、キャリアの選択肢を広げるためには、両方の試験を受ける価値があります。TOEICはビジネス英語力の証明として、TOEFLはアカデミックな英語力の証明として、それぞれ異なる場面で評価されます。両方のスコアを持っていることで、就職・転職から留学まで、様々な機会に対応できるようになります。
- 試験対策はどのくらいの期間が必要ですか?
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初学者がTOEIC 600点レベルを目指す場合、3〜6ヶ月程度の学習期間が一般的です。TOEFLで70点以上を目指す場合は、6ヶ月〜1年程度の準備期間を見込んだほうが良いでしょう。もちろん、現在の英語力や学習時間、学習効率によって個人差があります。
- オンラインでの自宅受験は可能ですか?
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TOEICの公開テストは基本的に会場でのマークシート方式ですが、一部のIPテストでオンライン方式が提供されています。
TOEFLは自宅でのオンライン受験も可能です。ただし、自宅受験は特定の条件(最寄りのテスト会場が遠い場合など)に限られることがあります。基本的には全国各地にあるテスト会場での受験が一般的です。
まとめ

この記事では、TOEICとTOEFLの違いや点数換算の目安について詳しく解説しました。主なポイントをまとめると、
- TOEICはビジネス英語力を測定する試験で、就職・転職・昇進などに活用される
- TOEFLはアカデミックな英語力を測定する試験で、主に留学に必要
- TOEICはリスニングとリーディングの2技能、TOEFLは4技能すべてを評価する
- TOEICはビジネスシーンの実用的な英語、TOEFLは大学での学習に必要な英語が出題される
- 一般的にTOEFLの方が難易度が高い
- TOEICで高得点を取得していても、TOEFLでは期待するスコアが取れないことがある
- 目的に応じて適切な試験を選ぶことが重要
- 初学者はまずTOEICから始め、段階的にTOEFLにチャレンジするのが効果的
英語の資格試験は、自分の英語力を客観的に測定し、目標に向かって学習するための良い指標となります。自分のキャリア目標や現在の英語レベルに合わせて、適切な試験を選び、計画的に学習を進めていきましょう。両試験の特徴を理解し、効果的な学習方法を実践することで、確実にスコアアップを目指せます。
最後に、英語学習は一朝一夕では成果が出ないこともありますが、継続することが何よりも大切です。小さな目標を設定しながら、着実に英語力を高めていきましょう。TOEICとTOEFLのどちらを選ぶにしても、その過程で身につけた英語力は、将来のキャリアに必ず役立つはずです。