英語学習の世界には様々な練習方法がありますが、その中でも「リピーティング」は効果的でありながら初心者にも取り組みやすい方法として注目されています。発音力の向上やリスニング力の強化に役立つこの学習法について、基本から応用まで詳しく解説していきます。
これから英語学習を始める方もリピーティングに挫折した経験のある方も、この記事を参考にしていただければ新たな気づきが得られるでしょう。
リピーティングとは何か?基本概念を理解しよう

リピーティングは、英語の「repeat(繰り返す)」から派生した学習方法で、簡単に言えば「聞いた英語をそのまま繰り返し発音する」練習方法です。具体的には、英語の音声を聞き、一時停止してから、聞いた内容をできるだけ正確に再現するというシンプルなプロセスです。
英語の音を真似るだけでなく、意味を理解しながら発音することが重要なポイントとなります。ニュージーランドの心理学者クリス・ロンズデール氏のTEDスピーチでも触れられているように、語学学習においては机上の勉強だけでなく、実際に発話を通じた身体的トレーニングが欠かせません。リピーティングはまさにその有効なトレーニング法の一つなのです。
シャドーイングやオーバーラッピングとの違い
リピーティングと混同されやすい学習法に「シャドーイング」と「オーバーラッピング」があります。これらの違いを理解しておくと、自分の目的に合った練習方法を選びやすくなります。
難易度で比較すると、一般的にオーバーラッピングが最も取り組みやすく、次にシャドーイング、そしてリピーティングが最も難易度が高いとされています。リピーティングは聞いた内容を記憶して再現する必要があるため、短期記憶力も同時に鍛えられる特徴があります。
リピーティングの4つの効果とメリット
リピーティングを継続して行うことで得られる効果は多岐にわたります。英語学習における様々な側面を効率的に強化できる点が、この学習法の大きな魅力です。
リスニング力が飛躍的に向上する理由
リピーティングでは、英文を正確に繰り返すために、最初の聞き取りの段階で高い集中力を発揮する必要があります。「何となく聞く」のではなく、「再現するために聞く」という意識が働くため、自然とリスニング力が鍛えられていきます。
特に英語特有の音のつながり(リエゾン)や音の脱落(リダクション)といった現象に慣れることができるのも大きなメリットです。例えば、”What did you do?”という文が実際には「ワッ・ディジュー・ドゥー」のように聞こえる現象なども、繰り返し練習することで耳が慣れていきます。
脱カタコト英語!ネイティブに近い発音の習得法
リピーティングを通じて、ネイティブスピーカーの発音パターンやイントネーションを真似ることで、自然な英語の発音を身につけることができます。日本人特有のカタカナ英語から脱却するには、実際に口を動かして発音練習を重ねることが不可欠です。
文法的に完璧な英語でも、発音やリズムが不自然だと伝わりにくいことがあります。逆に言えば、多少文法が間違っていても、英語らしいリズムで話せば相手に伝わりやすくなるのです。リピーティングはそのような「英語らしさ」を体得するのに最適な練習方法といえるでしょう。
短期記憶力の強化につながる仕組み
リピーティングでは、聞いた英文を一時的に記憶しておいて再現する必要があるため、自然と短期記憶力が鍛えられます。この能力は英会話の際に相手の言葉を覚えておくことや、TOEICなどの英語テストでリスニング問題を解く際にも役立ちます。
特にTOEICのパート3、4のような長めの会話や説明文を聞く問題では、内容を理解できても選択肢を選ぶまでに忘れてしまうことがよくあります。リピーティングで鍛えた短期記憶力はこうした問題解決に大いに貢献します。
英語の文章構成力が向上する効果
リピーティングを続けていくと、英語の自然な文章構造やフレーズの組み立て方が身についていきます。意味を理解しながら文章を声に出して練習することで、英文の構成に対する理解が深まり、ライティングやスピーキングの際にも役立つのです。
また、ネイティブがよく使うフレーズや表現パターンを繰り返し練習することで、それらを自分のものにすることができます。実際の会話の場面でも、練習したフレーズが自然と口から出てくるようになるでしょう。
リピーティングの効果的なやり方を徹底解説
リピーティングは比較的シンプルな学習法ですが、より効果を高めるためにはコツを押さえることが大切です。ここでは初心者でも始めやすいステップバイステップの方法をご紹介します。
リピーティングの基本は「聞いた英語をそのまま繰り返す」ことですが、ただ機械的に繰り返すだけでは効果が半減してしまいます。最大の効果を得るための具体的な手順を見ていきましょう。
ステップ1:適切な教材を選ぶ
リピーティングを始める前に、自分のレベルに合った教材を用意しましょう。初心者の場合は、短い文から構成される簡単な会話文や、ゆっくり話されている教材がおすすめです。文字で読んだときに80%以上理解できる内容が理想的です。
ステップ2:集中して音声を聴く
音声を再生し、集中して聴きます。この際、単に音を聴くだけでなく、意味もしっかりと理解するよう心がけましょう。意味を理解せずに音だけを真似ると、単なる「音マネ」になってしまい、言語習得としての効果が薄れてしまいます。
聞き返しは最大3回程度にして、なるべく少ない回数で内容を把握する訓練をしましょう。
ステップ3:音声を一時停止して発音する
一文または短いフレーズが終わったら音声を止め、聞いた内容をできるだけ同じイントネーションとリズムで発音します。この時、意味を意識しながら発音することが大切です。
特に初心者の場合、2秒以内の短いフレーズから始めると良いでしょう。人間の短期記憶は約2秒間の音声情報を保持できると言われているため、それ以上の長さになると記憶するのが難しくなります。
ステップ4:自分の発音を確認・修正する
自分の発音が正確だったか確認するために、必要に応じてスクリプトを見たり、もう一度音声を聴いたりします。間違いがあれば修正し、再度発音してみましょう。
可能であれば自分の声を録音して聴き比べるのも効果的です。自分では気づかない発音の癖などが見つかることがあります。
ステップ5:繰り返し練習する
同じプロセスを次の文やフレーズでも繰り返し行います。慣れてきたら徐々に長い文章や速い速度の音声にチャレンジしていきましょう。
リピーティングに最適な教材の選び方
効果的なリピーティングを行うためには、適切な教材選びが非常に重要です。自分のレベルや目的に合った教材を使うことで、モチベーションを維持しながら効率よく学習を進めることができます。
初心者におすすめの教材
英語学習を始めたばかりの方は、以下のような教材から始めると良いでしょう。
- 基本的な日常会話を収録した教材:簡単な挨拶や自己紹介など、短くてシンプルな表現から始めましょう。
- ゆっくり話される英語学習者向けポッドキャスト:ナチュラルスピードより遅めに話されているコンテンツは初心者に最適です。
- 子供向けの英語コンテンツ:子供向けのアニメや絵本の音声は、シンプルな言葉で明瞭に発音されていることが多いです。
中級者向けの教材選び
ある程度基礎ができている方は、次のステップとして以下のような教材に挑戦してみましょう。
- 英語ニュースのスロートーク:通常より遅いスピードで話されるニュースは、時事問題を学びながらリピーティングの練習ができます。
- 英語の歌や映画のワンシーン:興味のある音楽や映画のセリフを使うことで、モチベーションを保ちながら練習できます。
- 英語学習者向けの短編ストーリー:やや長めの文章も含まれるため、短期記憶力も同時に鍛えられます。
教材選びで気をつけるべき3つのポイント
- 自分のレベルに合っているか:難しすぎると挫折の原因になり、簡単すぎると成長が見込めません。文字で見て8割程度理解できる内容が理想的です。
- 音声の明瞭さ:特に初心者は、発音がはっきりしていて聞き取りやすい音声を選ぶことが重要です。背景音楽や雑音が多いものは避けましょう。
- 興味を持てる内容か:継続するためには、自分が興味を持てるトピックの教材を選ぶことが大切です。趣味や関心事に関連した内容なら、長く続けやすくなります。
リピーティングが難しい・覚えられない時の対処法
リピーティングに挑戦してみたものの、「思ったより難しい」「覚えられない」と感じることは少なくありません。しかし、原因を理解して適切に対処すれば、多くの場合改善することができます。
原因1:スクリプトレベルが合っていない
リピーティングがうまくいかない最も一般的な原因の一つは、使用している教材のレベルが自分に合っていないことです。文字で見てもすぐに理解できないような内容では、音声を聞いても処理するのが難しくなります。
対処法
- 文字で読んだときにすぐ理解できるレベルの教材に変更する
- 未知の単語や表現が少ない内容を選ぶ
- 必要に応じて、事前にスクリプトを読んで内容を把握しておく
リピーティングは新しい知識を覚えるための方法というよりは、すでに持っている知識を使えるようにするための練習です。まずは自分の知識の範囲内で無理なく取り組める教材から始めましょう。
原因2:リピートする英語の長さが適切でない
一度に長すぎる文をリピートしようとすると、記憶の限界を超えてしまい、うまく再現できなくなります。
対処法
- 2秒以内の短いフレーズから始める
- 文を意味のかたまり(チャンク)に分けて練習する
- 少しずつ長さを増やしていく
人間の短期記憶は約2秒間の音声情報を保持できると言われています。それ以上の長さになると、音として記憶するのが難しくなるため、意味を理解して記憶する必要があります。まずは短いフレーズから始めて、徐々に挑戦する文の長さを増やしていくのが効果的です。
原因3:音声知覚が自動化されていない
音声が速すぎてついていけない場合や、音声が「呪文」のように聞こえる場合は、音声知覚の自動化が不足している可能性があります。音声知覚とは、耳から入ってきた音を聴いて、何を言っているのかを認識する能力のことです。
対処法
- 音声の再生速度を下げて練習する
- シャドーイングなどの関連トレーニングも併用する
- 個々の音素(発音の最小単位)レベルでの聞き分け練習を行う
- 同じ内容を繰り返し聴く
音声知覚を向上させるには時間がかかりますが、継続的な練習によって必ず改善します。焦らず自分のペースで取り組みましょう。
リピーティングを継続するためのモチベーション維持法
どんな学習法も継続しなければ効果は限定的ですが、特にリピーティングは定期的に行うことで効果が現れやすくなります。しかし、モチベーションを保ち続けるのは簡単ではありません。ここでは、リピーティングを長く続けるためのコツをご紹介します。
無理のないスケジュールを設定する
継続のカギは、無理のないスケジュールを立てることです。毎日長時間の練習は続きにくいため、短時間でも毎日行う習慣をつけることをおすすめします。
例えば、「朝の準備中に5分」「通勤・通学の電車の中で10分」など、すでにある日常のルーティンに組み込むと続けやすくなります。最初は1日10分程度から始めて、慣れてきたら徐々に時間を増やしていきましょう。
成果を実感できる工夫をする
継続するためには、自分の成長を実感できることが大切です。以下のような方法を試してみましょう。
- 学習記録をつける:練習した日や内容、時間などを記録することで、自分の努力が目に見えて励みになります。
- 定期的に自分の発音を録音する:1ヶ月前の録音と比較すれば、自分の成長を客観的に確認できます。
- 小さな目標を設定する:「1週間毎日5分練習する」「このダイアログを完璧にリピートできるようになる」など、達成可能な小さな目標を設定しましょう。
- 仲間と一緒に学ぶ:オンラインコミュニティなどで同じ目標を持つ仲間と情報交換すると、モチベーションが維持しやすくなります。
楽しさを取り入れる工夫
学習が苦痛になると続きません。楽しめる要素を取り入れることも継続のコツです。
- 好きな映画やドラマのセリフを使う:お気に入りの作品のセリフをリピーティングすれば、楽しみながら練習できます。
- 好きな歌の歌詞を使う:音楽と一緒に練習することで、リズム感も養われます。
- ゲーム感覚で取り組む:「何日連続でリピーティングができたか」などを記録して、自己ベストを更新する楽しみを作りましょう。
- SNSで共有する:練習の様子や成果をSNSで共有することで、フィードバックをもらえたり応援してもらえたりすると励みになります。
リピーティングに関するよくある質問
- リピーティングとシャドーイングはどちらが効果的ですか?
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両方とも効果的な学習法ですが、目的によって使い分けるとよいでしょう。シャドーイングはリスニングスピードの向上や英語のリズム感を掴むのに効果的で、リピーティングは発音の正確さや短期記憶力を鍛えるのに向いています。初心者は比較的簡単なシャドーイングから始めて、慣れてきたらリピーティングに挑戦するという流れがおすすめです。
- リピーティングをどのくらいの期間続ければ効果が出ますか?
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個人差がありますが、一般的に1〜3ヶ月程度継続すると、リスニング力の向上や発音の改善などの効果を実感できる方が多いようです。ただし、毎日少しずつでも継続することが重要です。週に1回だけでは効果が出にくいため、短時間でも毎日行うことをお勧めします。
- スクリプトを見ながらリピーティングしても効果はありますか?
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本来のリピーティングはスクリプトを見ずに行うことで、リスニング力と短期記憶力を鍛える効果があります。ただ、スクリプトを見ながら行っても発音やイントネーションの練習としては効果があります。ただしその場合は「リピーティング」というよりも「音読」に近い練習になります。初心者はスクリプトを見ながら始めても良いですが、慣れてきたら見ないで挑戦してみましょう。
- 子供の英語学習にもリピーティングは効果的ですか?
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はい、子供の英語学習にもリピーティングは非常に効果的です。子供は模倣能力が高いため、ネイティブの発音を真似する練習は特に効果的です。ただし、大人向けの教材ではなく、子供向けのシンプルで楽しい内容の教材を選ぶことが大切です。また、ゲーム感覚で取り組めるように工夫すると、子供も継続して楽しく練習できるでしょう。
- リピーティングをしていると喉が疲れてしまいます。どうすれば良いですか?
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長時間のリピーティングで喉が疲れるのは自然なことです。以下の点に気をつけましょう。
- こまめに水分補給をする
- 無理に大きな声を出さず、普通の会話レベルの声量で練習する
- 一度に長時間行わず、休憩を挟みながら短時間ずつ練習する
- 喉に違和感を感じたら、その日の練習は中止し休息を取る
まとめ

英語のリピーティングについて基本から応用まで詳しく解説してきました。リピーティングは英語学習において非常に効果的な方法の一つであり、正しく継続することで様々なスキルの向上が期待できます。
ポイントをまとめると、
- リピーティングとは、「聞いた英語をそのまま繰り返し発音する」学習方法で、シャドーイングやオーバーラッピングとは異なる
- 効果としては、リスニング力の向上、ネイティブに近い発音の習得、短期記憶力の強化、文章構成力の向上などがある
- 効果的なやり方は「適切な教材を選ぶ→集中して聴く→一時停止して発音する→確認・修正する→繰り返す」の流れ
- 教材選びでは自分のレベルに合ったもの、音声が明瞭なもの、興味を持てる内容のものを選ぶことが重要
- リピーティングが難しい場合は、教材レベルの見直し、フレーズの長さの調整、音声知覚トレーニングの併用などが有効
- 継続するためには、無理のないスケジュールの設定、成果を実感できる工夫、楽しさを取り入れる工夫が大切
リピーティングは英語初学者から上級者まで、レベルに合わせた教材を選ぶことで誰でも取り組める学習法です。まずは短いフレーズから始めて、徐々にレベルアップしていくことで、英語力の向上を実感できるでしょう。継続は力なりですので、無理のないペースで続けていくことが成功の鍵です。
今日からリピーティングを始めて、あなたの英語学習をより効果的なものにしていきましょう!