「先生、英語の文章で『a』と『the』はどう使い分ければいいですか?」「本は『a book』なのに、なぜ『the book』と言うこともあるの?」このような質問は、英語を学び始めた多くの方が抱く疑問ではないでしょうか。
冠詞「a」と「the」の使い分けは、英語の文法において最も基本的でありながら、日本語にはない概念のため、多くの学習者が戸惑うポイントです。この記事では、英語初学者の方でも理解できるよう、冠詞の基本から使い方、さらに実践的な例文まで、分かりやすく解説していきます。
冠詞とは?「a」と「the」の基本的な違い

英語の冠詞とは、名詞の前に置かれる小さな単語で、その名詞がどの程度特定されているかを示す役割を持ちます。冠詞には「a/an」(不定冠詞)と「the」(定冠詞)の2種類があります。
これらの最も基本的な違いは以下のとおりです。
- 「a/an」(不定冠詞):不特定の、どれでもよい一つのものを指す
- 「the」(定冠詞):特定の、どれか分かっているものを指す
例文
- I saw a dog in the park.(公園で犬を見ました)
ここでの「a dog」は、特定の犬ではなく、「ある一匹の犬」という意味です。 - I saw the dog in the park.(公園でその犬を見ました)
ここでの「the dog」は、話し手と聞き手の間で「どの犬か」が分かっている特定の犬を指します。
この基本的な違いを理解することが、冠詞を正しく使うための第一歩です。
それでは、それぞれの冠詞についてより詳しく見ていきましょう。
不定冠詞「a/an」の使い方
不定冠詞「a/an」は、不特定のものを表す際に使用します。その特徴と使い方を詳しく見ていきましょう。
「a/an」は不特定のものを指す
「a/an」は、多くの同じようなものの中の「どれでもよい一つ」を指すときに使います。
初めて話題に登場するものや、聞き手がまだ特定できないものに使われます。
例文
- I need a pen.(ペンが必要です)
※どのペンでもよく、特定のペンを指していません。 - She bought a new bag yesterday.(彼女は昨日新しいバッグを買いました)
※特定のバッグではなく、新しいバッグを一つ買ったという意味です。 - There is a cat under the table.(テーブルの下に猫がいます)
※初めて言及する猫なので、「a cat」となります。
「a/an」は可算名詞の単数形にのみ使う
重要なポイントとして、「a/an」は数えられる名詞(可算名詞)の単数形にしか使えません。
「a」という語は元々「one(1つの)」という意味から来ています。
例文
- I have a car.(私は車を1台持っています)
※「car」は可算名詞で単数形です。 - ❌ I have a water.(間違い)
ave some water.(私は水を持っています)
※「water」は不可算名詞なので「a」は使えません。 - ❌ I have a books.(間違い)
I have some books.(私は本を数冊持っています)
※「books」は複数形なので「a」は使えません。
「a」と「an」の使い分け
「a」と「an」の使い分けは、後に続く単語の発音の最初の音によって決まります。
- 「a」:子音の音で始まる単語の前で使う
- 「an」:母音の音で始まる単語の前で使う
例文
- a book(本)、a dog(犬)、a university(大学:「ユ」で始まるので子音扱い)
- an apple(りんご)、an egg(卵)、an hour(1時間:「アワー」と発音するので母音扱い)
注意すべきなのは、単語のスペルではなく発音が重要だということです。「university」は「u」で始まりますが、発音は「ユニバーシティ」なので「a」を使います。
反対に「hour」は「h」で始まりますが、発音は「アワー」なので「an」を使います。
定冠詞「the」の使い方
次に、定冠詞「the」の使い方について見ていきましょう。「the」は特定のものを指す際に使われます。
「the」は特定のものを指す
「the」は、話し手と聞き手の両方が「どのものか」を理解している、特定のものを指す場合に使います。
例文
- Please close the door.(ドアを閉めてください)
※部屋の中にあるドア、会話の場にあるドアなど、どのドアか分かっている場合。 - The book on the table is mine.(テーブルの上にある本は私のものです)
※テーブルの上にどの本があるのか分かっている場合。 - I saw a dog in the park. The dog was very friendly.(公園で犬を見ました。その犬はとても友好的でした)
※最初に「a dog」で導入し、次に言及するときは「the dog」となります。
「the」は可算名詞も不可算名詞も使える
「a/an」とは異なり、「the」は可算名詞の単数形・複数形、さらに不可算名詞とも使うことができます。
例文
- The car is new.(その車は新しいです)[可算名詞・単数形]
- The books on the shelf are old.(棚の上の本は古いです)[可算名詞・複数形]
- The water in this bottle is clean.(このボトルの水はきれいです)[不可算名詞]
「the」を使う主なケース
「the」が使われる主な場面は以下の通りです。
- すでに言及されたもの
- I bought a book. The book is interesting.(本を買いました。その本は面白いです)
- 状況から明らかなもの
- Could you pass me the salt, please?(塩を取ってもらえますか)
※テーブルの上に塩が1つだけある場合など。
- Could you pass me the salt, please?(塩を取ってもらえますか)
- 唯一無二のもの
- The sun is very bright today.(今日の太陽はとても明るいです)
- The moon looks beautiful tonight.(今夜の月はきれいです)
- 特定の集団全体
- The Japanese are known for their politeness.(日本人は礼儀正しさで知られています)
- 最上級の前
- This is the best restaurant in town.(これは町で最高のレストランです)
- 楽器名の前
- She plays the piano very well.(彼女はピアノを上手に弾きます)
- 方角・地理的名称の前
- The Pacific Ocean is the largest ocean.(太平洋は最大の海です)
- They live in the south of France.(彼らはフランスの南部に住んでいます)
冠詞を使わないケース
英語では、冠詞を使わないケースもあります。ここでは、冠詞が不要な主な場合を見ていきましょう。
一般的な概念を表す時
物事の一般的な概念を表すときには、複数形または不可算名詞に冠詞をつけません。
例文
- Dogs are loyal animals.(犬は忠実な動物です)
※犬全般について話しているので冠詞なし。 - I like music.(私は音楽が好きです)
※音楽全般について話しているので冠詞なし。 - Life is beautiful.(人生は美しい)
※「life」を一般的な概念として使用。
固有名詞の前
人名、国名、都市名などの固有名詞は、通常冠詞を使いません。
例文
- Tanaka is my friend.(田中さんは私の友達です)
- Japan is an island country.(日本は島国です)
- Tokyo is the capital of Japan.(東京は日本の首都です)
ただし、例外として一部の国名(the United States, the United Kingdom)や、川・山脈・海などの名前(the Nile, the Alps, the Atlantic Ocean)には「the」がつきます。
特定の表現で冠詞を省略する場合
いくつかの表現では慣用的に冠詞を省略します。
例文
- go to school(学校に行く)
- go to bed(寝る)
- at home(家で)
- at work(仕事で)
- by car(車で)
- by bus(バスで)
これらの表現では、その場所や乗り物の一般的な目的や機能を重視しています。
ただし、特定の学校やベッドを指す場合は「the school」「the bed」となります。
冠詞の「a」と「the」の使い分け例
ここでは、様々な状況で「a」と「the」がどのように使い分けられるかを具体的な例文で見ていきましょう。
初めて登場するものと2回目以降の言及
最初に何かを言及するときは「a/an」を使い、2回目以降は「the」を使うというパターンです。
例文
- I saw a cat in the garden. The cat was black.
(庭で猫を見ました。その猫は黒かったです) - She bought a book yesterday. The book is about history.
(彼女は昨日本を買いました。その本は歴史についてのものです) - There is a park near my house. The park is very beautiful.
(私の家の近くに公園があります。その公園はとても美しいです)
同じものでも文脈によって冠詞が変わる
同じ名詞でも、文脈によって「a」「the」「冠詞なし」のどれを使うかが変わります。
例文
- I play the guitar.(私はギターを弾きます)
※楽器として特定のカテゴリーを指すので「the」を使います。 - I need a guitar.(ギターが必要です)
※どのギターでもよいので「a」を使います。 - Guitars are musical instruments.(ギターは楽器です)
※ギター全般を指しているので冠詞を使いません。
学校・病院・教会などの場所
目的に応じて場所を訪れる場合は冠詞を使わず、特定の建物を指す場合は「the」を使います。
例文
- My brother goes to school by bus.(私の兄はバスで学校に行きます)
※学校という機関・目的を指しているので冠詞なし。 - The school my brother goes to is very old.(兄が通っている学校はとても古いです)
※特定の学校を指しているので「the」を使います。 - My grandmother is in hospital.(祖母は入院しています)
※治療を受けるという目的で病院にいるので冠詞なし。 - I visited the hospital to see my grandmother.(祖母に会うために病院を訪れました)
※特定の病院を指しているので「the」を使います。
冠詞の「a」と「the」に関する練習問題
次の問題に取り組んで、冠詞の理解度をチェックしてみましょう。
- I have _____ pen in my bag.
- _____ pen I bought yesterday is blue.
- Please give me _____ apple from the table.
- _____ apples are good for your health.
- My father works at _____ hospital.
- We visited _____ hospital where my father works.
- She plays _____ piano very well.
- I need to buy _____ new piano for my daughter.
- _____ sun rises in the east.
- There is _____ book on the table. _____ book is mine.
- Tokyo is _____ capital of Japan.
- I saw _____ interesting movie last night.
- _____ movie I saw last night was amazing.
- My brother is _____ university student.
- _____ university my brother attends is famous.
- _____ Nile is the longest river in Africa.
- I like to read _____ books in my free time.
- _____ coffee in this cup is hot.
- My sister wants to be _____ doctor.
- She goes to _____ school by bus.
冠詞「a」と「the」に関するよくある質問
ここでは、冠詞「a」と「the」に関するよくある質問にお答えします。
- 複数形には「a」をつけられないのはなぜですか?
-
「a/an」は元々「one(1つの)」という意味から来ているため、複数形には使えません。複数形で不特定のものを指す場合は、「some」や「many」などを使うか、冠詞なしで表現します。
例:I have some books. / I have books.(私は何冊か本を持っています) - 「a」と「an」の使い分けで混乱します。簡単な見分け方はありますか?
-
単語のスペルではなく、発音に注目してください。次の単語の発音が「アイウエオ」のような母音の音で始まるなら「an」、それ以外の子音の音で始まるなら「a」を使います。
例:a university(ユニバーシティ:「ユ」で始まる)、an hour(アワー:「ア」で始まる) - 国名に「the」がつくものとつかないものがあるのはなぜですか?
-
複数の地域や州からなる国(the United States, the United Kingdom)や、「〜共和国」「〜連邦」のような言葉を含む国名(the Republic of Korea, the Russian Federation)には「the」がつきます。単一の国名(Japan, France, Brazil)には通常「the」はつきません。
- 「go to school」と「go to the school」の違いは何ですか?
-
「go to school」は「学生として学校に通う」という一般的な行為を表します。一方、「go to the school」は「特定の学校の建物に行く」ことを意味し、必ずしも学生としてではなく、例えば保護者会や訪問者として行く場合などに使います。
- 不可算名詞には「a」をつけられないとのことですが、「a coffee」という表現を見かけることがあります。これはなぜですか?
-
「a coffee」という場合、「一杯のコーヒー」という意味で使われています。不可算名詞でも、「一単位」「一杯」「一切れ」などを表す場合は可算名詞として扱われることがあります。
例:I’d like a coffee.(コーヒーを一杯ください)、I’d like a glass of water.(水を一杯ください)
まとめ

この記事では、英語の冠詞「a」と「the」の違いと使い分けについて解説しました。
以下が主なポイントです。
- 「a/an」(不定冠詞)
- 不特定の、どれでもよい一つのものを指す
- 可算名詞の単数形にのみ使える
- 母音の音で始まる単語の前では「an」を使う
- 「the」(定冠詞)
- 特定の、どれか分かっているものを指す
- 可算名詞の単数形・複数形、不可算名詞にも使える
- すでに言及されたもの、状況から明らかなもの、唯一無二のものなどに使う
- 冠詞を使わないケース
- 一般的な概念を表す時(複数形または不可算名詞)
- 固有名詞の前(一部例外あり)
- 特定の表現(go to school、at home など)
冠詞の使い方は、英語の文法の中でも基本的でありながら奥深い部分です。この記事で説明したルールを理解し、練習問題に取り組むことで、冠詞の使い分けが徐々に身についていくでしょう。
最初は難しく感じるかもしれませんが、多くの例文に触れ、実際に使ってみることで、次第に自然と使えるようになります。英語学習の道のりで、この記事があなたの助けになれば幸いです。