「これ」「それ」「あれ」「これら」「あれら」など、特定のものを指し示す言葉を日本語では「指示語」と呼びますが、英語にも同様の表現があります。英語では「this」「that」「these」「those」などが代表的な指示代名詞です。
英語の文法を学ぶ上で、指示代名詞の理解は基礎中の基礎といえる重要な要素です。この記事では、英語初学者の方でも分かりやすいように、指示代名詞の基本的な意味から応用的な使い方まで、具体的な例文と共に詳しく解説します。
英語の指示代名詞とは?基本的な意味と種類

指示代名詞とは、人や物や事を特定して指し示すための代名詞です。名前を具体的に言わなくても、「これ」「あれ」などと指し示すことで、話し手と聞き手の間で対象を特定することができます。
英語の指示代名詞の基本は以下の4つです。
- this(これ):話し手に近い単数のもの
- that(それ/あれ):話し手から遠い単数のもの
- these(これら):話し手に近い複数のもの
- those(それら/あれら):話し手から遠い複数のもの
その他にも、such(そのような)、so(そう)、the same(同じもの)なども広い意味では指示代名詞に含まれます。
指示代名詞は単独で使うこともできますし、名詞の前に置いて形容詞的に使うこともできます。指示代名詞は会話の中でとても頻繁に使われる表現なので、正しく使えるようになると英語でのコミュニケーション力が格段に上がります。
「this」と「that」の使い方と違い
「this」と「that」はどちらも単数のものを指し示しますが、使い分けのポイントは「距離」にあります。
物理的距離と心理的距離
「this」は話し手から近いもの、「that」は話し手から遠いものを指すときに使います。
この「距離」には物理的な距離だけでなく、心理的な距離も含まれます。
物理的な距離の例
- This is my pen.(これは私のペンです)※手に持っているペン
- That is my bag.(あれは私のカバンです)※少し離れた場所にあるカバン
心理的な距離の例
- This idea is great!(このアイデアは素晴らしい!)※話し手が気に入っているアイデア
- I don’t like that movie.(あの映画は好きではありません)※話し手が好きでない映画
時間的な距離
「this」は現在や未来(近い時間)、「that」は過去(遠い時間)を指すこともあります。
例文
- This week is very busy.(今週はとても忙しいです)
- I will never forget that day.(あの日のことは決して忘れません)
前の文の内容を受ける用法
「this」と「that」は、前に述べた内容全体を指し示すこともできます。
例文
- She won the first prize. This made her very happy.
(彼女は一等賞を獲った。このことで彼女はとても喜んだ) - He failed the exam. That was very disappointing.
(彼は試験に落ちた。それはとても残念だった)
「these」と「those」の使い方と違い
「these」と「those」は「this」と「that」の複数形で、それぞれ話し手に近い複数のもの、遠い複数のものを指します。
基本的な使い方
例文
- These are my books.(これらは私の本です)※手元にある複数の本
- Those are beautiful flowers.(あれらは美しい花です)※離れた場所にある複数の花
比較の際の使い分け
「these」と「those」は、二つのグループを比較するときにも使われます。
例文
- These apples are sweet, but those are sour.(これらのリンゴは甘いですが、あれらは酸っぱいです)
形容詞的用法
「these」と「those」も名詞の前に置いて形容詞的に使うことができます。
例文
- These shoes are too small for me.(これらの靴は私には小さすぎます)
- Those students are from my school.(あれらの生徒は私の学校の出身です)
指示代名詞の様々な用法
指示代名詞には、基本的な使い方以外にもいくつかの特殊な用法があります。
名詞の繰り返しを避ける用法
「that of」「those of」という形で、すでに出てきた名詞の繰り返しを避けることができます。
例文
- The population of Tokyo is larger than that of Osaka.
(東京の人口は大阪の人口より多い) - The prices of these computers are higher than those of the older models.
(これらのコンピュータの価格は古いモデルの価格より高い)
「those who…」で人々を表す用法
「those」は「those who…」の形で「〜する人々」という意味を表すことができます。
例文
- Those who work hard will succeed.(一生懸命働く人々は成功するでしょう)
- I want to help those who are in need.(私は困っている人々を助けたいです)
電話での使い方
電話で自己紹介する際には「This is…」という表現をよく使います。
例文
- Hello, this is Taro speaking.(もしもし、太郎です)
- Who is that on the phone?(電話の相手はどなたですか?)
指示代名詞の文中での役割
指示代名詞は文の中でさまざまな役割を果たします。
主語としての使い方
指示代名詞は文の主語になることができます。
例文
- This is my house.(これは私の家です)
- That was a good movie.(あれは良い映画でした)
- These are my friends.(これらは私の友達です)
- Those were difficult times.(あれらは困難な時代でした)
目的語としての使い方
指示代名詞は動詞や前置詞の目的語にもなります。
例文
- I like this.(私はこれが好きです)
- Please give me that.(あれをください)
- She bought these yesterday.(彼女は昨日これらを買いました)
- He doesn’t want those.(彼はあれらを欲しがっていません)
形容詞的用法
指示代名詞は名詞の前に置かれると、形容詞のように機能します。
例文
- This book is interesting.(この本は面白いです)
- That car is expensive.(あの車は高価です)
- These flowers are beautiful.(これらの花は美しいです)
- Those buildings are very old.(あれらの建物はとても古いです)
指示代名詞一覧表と例文
ここでは、指示代名詞の種類と基本的な使い方を一覧表にまとめ、それぞれの例文を紹介します。
指示代名詞 | 距離 | 数 | 例文 |
---|---|---|---|
this | 近い | 単数 | This is my new smartphone.(これは私の新しいスマートフォンです) |
that | 遠い | 単数 | That is an old castle.(あれは古い城です) |
these | 近い | 複数 | These are my favorite songs.(これらは私のお気に入りの曲です) |
those | 遠い | 複数 | Those are wild birds.(あれらは野鳥です) |
such | – | – | Such a beautiful day!(なんて美しい日なんだ!) |
the same | – | – | I think the same.(私も同じく思います) |
その他の指示表現
「this」「that」「these」「those」以外にも、次のような表現があります。
- such(そのような):特定の性質や種類を指します。
例:Such behavior is unacceptable.(そのような行動は受け入れられません) - so(そう):特定の方法や程度を指します。
例:I think so.(私もそう思います) - the same(同じもの):同一のものや状況を指します。
例:I want the same as him.(私も彼と同じものが欲しいです)
日常会話での指示代名詞の使い方
日常会話において、指示代名詞は非常によく使われます。ここでは、いくつかの典型的な使用場面を紹介します。
物を指し示す時
買い物や物の受け渡しなど、実際の物を指し示す場面でよく使われます。
例文
- I want this one, please.(これをください)
- Can you hand me that book?(あの本を取ってもらえますか?)
- How much are these apples?(これらのリンゴはいくらですか?)
- Could you move those boxes?(あれらの箱を動かしてもらえますか?)
話の内容を指す時
会話の中で前に出た話題や内容を指し示すときにも使います。
例文
- He said he’s moving to Canada. This surprised everyone.
(彼はカナダに引っ越すと言った。このことは皆を驚かせた) - She lost her job. That must be hard for her.
(彼女は仕事を失った。それは彼女にとって辛いに違いない)
選択肢を示す時
選択肢を示す場面でも指示代名詞はよく使われます。
例文
- Would you like this or that?(これとあれ、どちらがいいですか?)
- I prefer these to those.(私はあれらよりもこれらの方が好きです)
英語の指示代名詞に関する練習問題
以下の問題を解いて、指示代名詞の理解を深めましょう。空欄に適切な指示代名詞を入れて下さい。
- _____ is my pen. (近くにあるペンを指して)
- _____ are my friends. (近くにいる友達を指して)
- _____ book belongs to me. (近くにある本について)
- _____ trees are very tall. (遠くにある木について)
- I like _____ movie better than _____. (手元のDVDと棚のDVDを比べて)
- The weather in Hokkaido is colder than _____ in Okinawa. (天気について比較)
- _____ who study hard will pass the exam. (勉強する人々について)
- Hello, _____ is Yuki speaking. (電話での自己紹介)
- _____ was the best day of my life. (過去の思い出について)
- I want _____ shoes, not _____. (近くの靴と遠くの靴を指して)
- The price of new computers is higher than _____ of old ones. (価格の比較)
- _____ are the keys I was looking for. (見つかった鍵を指して)
- She said she was tired. _____ worried me. (前の文の内容について)
- _____ is a beautiful flower. (手に持っている花について)
- I prefer _____ to _____. (近くのケーキと遠くのケーキについて)
- The population of Tokyo is larger than _____ of Osaka. (人口の比較)
- _____ books are mine, and _____ are yours. (近くの本と遠くの本を区別して)
- Can you see _____ building over there? (遠くの建物について)
- _____ were difficult times. (過去の時代について)
- Is _____ your bag? No, _____ is mine. (遠くのバッグと近くのバッグについて)
指示代名詞に関するよくある質問
指示代名詞に関してよくある質問とその回答をまとめました。
- 「this」と「that」の違いは何ですか?
-
基本的に、「this」は話し手に近いもの、「that」は話し手から遠いものを指します。この距離は物理的な距離だけでなく、心理的・時間的な距離も含みます。例えば、「This book」は手元にある本、「That book」は離れた場所にある本を指します。
- 「this」と「it」の違いは何ですか?
-
「this」は特定のものを指し示す指示代名詞で、「it」は既に言及されたものを指す人称代名詞です。「This is a pen.」(これはペンです)と最初に紹介する時に「this」を使い、その後に「It is blue.」(それは青いです)と「it」で受けることができます。
- 電話で自分のことを「This is Taro」と言うのはなぜですか?
-
電話での自己紹介では、目に見えない相手に対して「こちらは〜です」という意味で「This is…」を使います。これは英語の慣用表現で、日本語の「もしもし、〜です」に相当します。
- 「that of」「those of」はどういう意味ですか?
-
「that of」は単数の名詞の繰り返しを避けるため、「those of」は複数の名詞の繰り返しを避けるために使います。例えば、「The climate of Okinawa is warmer than that of Tokyo.」(沖縄の気候は東京の気候より暖かい)という文では、「that of Tokyo」は「the climate of Tokyo」の代わりになっています。
- 「those who」はどのような意味ですか?
-
「those who」は「〜する人々」という意味で、特定のグループを指します。例えば、「Those who arrived early got good seats.」(早く到着した人々は良い席を得た)のように使います。
まとめ

この記事では、英語の指示代名詞について詳しく解説しました。
主なポイントをまとめると、
- 指示代名詞の基本
- this(これ):話し手に近い単数のもの
- that(それ/あれ):話し手から遠い単数のもの
- these(これら):話し手に近い複数のもの
- those(それら/あれら):話し手から遠い複数のもの
- 距離の概念
- 物理的距離(実際の位置関係)
- 心理的距離(親近感や好悪)
- 時間的距離(現在/未来 vs 過去)
- 主な用法
- 具体的な人やものを指す
- 前の文の内容を受ける
- 名詞の繰り返しを避ける(that of/those of)
- 人々を表す(those who…)
- 電話での自己紹介(This is…)
- 文中での役割
- 主語として
- 目的語として
- 形容詞として
指示代名詞は英語の文法において非常に基本的かつ重要な要素です。日常会話でも頻繁に使われるため、正しく使えるようになると英語でのコミュニケーション力が大きく向上します。
この記事で紹介した基本ルールと例文を参考に、ぜひ実際の会話や文章の中で使ってみてください。