TOEICは就職活動や転職の際に英語力を客観的にアピールできる資格として広く認知されています。しかし、「自分のスコアは履歴書に書くべきなのか」「何点から記載すれば評価されるのか」などの疑問を持つ方も多いでしょう。
本記事では、TOEICスコアの履歴書への記載基準から正しい書き方まで、英語初学者の方にもわかりやすく解説します。応募先企業の種類別に求められるスコアや、記載例も紹介しますので参考にしてください。
TOEICスコアと履歴書への記載の基本

TOEICは多くの企業が採用選考や人事評価の指標として活用している英語能力テストです。履歴書にスコアを記載することで、自分の英語力を具体的な数値としてアピールすることができます。
TOEICとは何か
TOEICは「Test of English for International Communication」の略称で、英語が母国語ではない人を対象とした英語コミュニケーション能力を測るテストです。スコアは10〜990点の間で5点刻みで評価され、合否ではなく点数で評価されるのが特徴です。
このテストを受けることで、自分の英語力を客観的に把握でき、また目指すべき目標スコアを設定しやすいというメリットがあります。多くの企業が応募者の英語力を判断する基準としてTOEICを採用しています。
履歴書に書けるTOEICスコアの目安
TOEICスコアは実際には何点からでも履歴書に記載することができます。明確な「◯点以上から書いてよい」というルールは存在しません。ただし、一般的には600点以上が履歴書に記載する際の目安とされています。
これは公開テストの平均点が約600点であることから、この点数以上であれば「平均以上の英語力がある」ということをアピールできるためです。しかし、実際には応募する企業や業種によって評価されるスコアの基準は異なります。
企業タイプ別に見るTOEICスコアの評価基準
応募先の企業タイプや職種によって、求められるTOEICスコアのレベルは異なります。ここでは企業タイプ別に、履歴書に書いて評価されるスコアの目安を解説します。
一般企業の場合(650点以上)
一般企業に応募する場合、650点以上のスコアがあれば履歴書に記載して評価されることが多いです。一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会のデータによると、公開テストの平均スコアは約600点前後であるため、650点以上あれば平均以上の英語力があると判断されます。
実際のアンケート調査でも、600〜695点のスコア保持者の約60%が履歴書に記載しており、「650点以上だと履歴書に記載できると聞いた」「最低限の英語力があることを証明できる」といった理由が挙げられています。
一方、600点未満の場合は記載する人の割合が半数を下回る傾向にあり、600点を超えると履歴書に記載することが多くなるようです。
外資系・グローバル企業の場合(700点以上)
外資系企業やグローバルに事業展開している企業に応募する場合は、最低でも700点以上のスコアが必要です。なぜならこのレベルがビジネスで通用する英語力の目安とされているからです。
TOEIC700点は国際指標「CEFR」におけるB1レベルに相当し、以下のような英語力があると評価されます。
- 身近な話題について、標準的な話し方であれば要点を理解できる
- 英語圏を訪れた際に、多くの状況に対応できる
- 身近なトピックについて意味の通じる文章を作成できる
- 経験や目標について簡潔に語ることができる
日系のグローバル企業でも、海外取引が多い企業ではTOEIC700点以上を基準にしているケースがあります。例えば、伊藤忠アビエーション株式会社の新卒採用では700点が推奨されていることからも、一定規模の企業では700点以上が求められることがわかります。
就活での評価基準(550点以上)
新卒の就職活動においては、550点以上のスコアがあれば評価につながる可能性が高いです。企業側が新卒採用で選考の要件や参考にしているスコアの平均は545点、新入社員に期待しているスコアも平均535点であるという調査結果があります。
業種別に見ると、マスメディア、鉱業、公共団体などでは新入社員の平均スコアが600点を超えているため、これらの業界では600点以上のスコアがあると選考でより有利になるでしょう。
TOEICの種類と正式名称
TOEICには複数の種類があり、それぞれ測定する能力や試験形式が異なります。履歴書に記載する際は、受験したTOEICの種類を正確に記載することが重要です。
TOEIC Listening & Reading Test
最も一般的なTOEICテストがTOEIC Listening & Reading Test(以下、TOEIC L&R)です。単に「TOEIC」と呼ばれることも多いこのテストは、リスニング(聞く力)とリーディング(読む力)の2つのセクションで構成されています。
スコアは10〜990点の範囲で、個人で申し込んで受験する場合は「公開テスト」と呼ばれます。履歴書に記載する際は「TOEIC Listening & Reading Test」という正式名称を使用するのが望ましいでしょう。
TOEIC Speaking & Writing Tests
TOEIC Speaking & Writing Tests(以下、TOEIC S&W)は、スピーキング(話す力)とライティング(書く力)の能力を測定するテストです。TOEIC L&Rと違って、実際に英語を話したり書いたりする能力が評価されます。
スコアはスピーキングとライティングそれぞれ0〜200点で、合計0〜400点になります。履歴書に記載する際は「TOEIC Speaking & Writing Tests」という正式名称を使い、総合スコアとともに各セクションのスコアも記載するとより詳細に英語力をアピールできます。
TOEIC Program IPテスト
TOEIC Program IPテスト(Institutional Program)は、企業や学校などの団体が実施するTOEICテストです。内容はTOEIC L&Rと同じですが、実施日や会場は団体ごとに設定されます。最近ではオンラインでの受験も可能になりました。
履歴書に記載する場合は「TOEIC Listening & Reading IPテスト」または「TOEIC Listening & Reading IPテスト(オンライン)」と明記します。ただしIPテストでは公式の認定書が発行されないため、応募先企業によっては公開テストのスコアを求められることもあるので注意が必要です。
TOEICスコアの履歴書への正しい書き方
TOEICスコアを履歴書に記載する際は、正確な情報と適切な書式で記入することが重要です。ここでは具体的な記載方法や例文を紹介します。
資格欄への記載方法
TOEICスコアは、履歴書の「資格・免許」欄または「免許・資格」欄に記載します。記入する順序は以下の通りです。
- 取得年月(テスト実施日の年月)
- テストの正式名称
- 獲得したスコア
TOEICの正式名称は「Test of English for International Communication」ですが、履歴書には「TOEIC」と略した形で記載しても問題ありません。ただし、受験したテストの種類(L&RかS&Wか)は明記するようにしましょう。
記載例と注意点
以下に、TOEICスコアの履歴書への記載例を示します。
TOEIC L&Rの場合
2024年2月 TOEIC Listening & Reading Test 700点取得
TOEIC S&Wの場合
2024年3月 TOEIC Speaking & Writing Tests 280点取得
(Speaking: 150点/200点、Writing: 130点/200点)
IPテストの場合
2024年5月 TOEIC Listening & Reading IPテスト(オンライン) 680点取得
記載する際の注意点として、取得年月はテスト結果が発表された日ではなく、実際にテストを受けた日の年月を記入することが挙げられます。また、スコアは正確に記載し、スコア証明書の提出を求められる場合に備えて、記載するスコアと証明書のスコアが一致するようにしましょう。
複数のスコアを持っている場合
複数回TOEICを受験していて、異なるスコアを持っている場合は、最新のスコアか、最も高いスコアを記載するのが一般的です。ただし、応募する職種や企業によって、アピールしたいスコアを選ぶのも一つの方法です。
例えば、スコアが向上していることをアピールしたい場合は、以下のように複数のスコアを記載することも可能です。
- 2023年5月 TOEIC Listening & Reading Test 650点取得
- 2024年2月 TOEIC Listening & Reading Test 710点取得
また、L&RとS&Wの両方のスコアを持っている場合は、両方を記載することで、読み書きだけでなく会話能力もあることをアピールできるでしょう。
TOEICのスコアが低い場合は書くべきか
TOEICのスコアが平均より低い場合、履歴書に記載すべきかどうか迷う方も多いと思います。ここでは低いスコアの記載について考えてみましょう。
低いスコアでもアピールになるケース
TOEICスコアが500点台など平均より低くても、以下のようなケースでは履歴書に記載することでポジティブなアピールになる可能性があります。
- スコアが徐々に上がっている場合
- 同じテストを複数回受けて、スコアが向上しているなら、英語学習への意欲や成長志向をアピールできます。
- 英語が必須でない職種への応募
- 応募する職種で英語をあまり使わないなら、平均以下のスコアでも「英語学習に取り組んでいる」という姿勢を示せます。
- 他の強みがある場合
- 他の資格や経験など、強みとなる要素がある場合は、低いTOEICスコアも補完的な情報として記載できます。
企業調査によると、多くの企業はTOEICの受験歴自体をポジティブに評価する傾向があります。スコアの高低に関わらず、英語学習への意欲が評価されることも少なくありません。
スコアを書かない方が良い場合
一方で、以下のようなケースでは低いTOEICスコアを履歴書に記載しない方が良いこともあります。
- 英語力が重視される職種への応募
- 英語を日常的に使う職種や外資系企業への応募の場合、平均より低いスコアはマイナス評価になる可能性があります。
- 他に強調したい資格がある場合
- 限られた履歴書のスペースの中で、他に強調したい資格や経験がある場合は、アピール度の低いTOEICスコアは省略しても良いでしょう。
- スコアが非常に低い場合
- 450点未満など、平均を大きく下回るスコアは、特に英語力が求められる職種では記載しない方が良い場合があります。
最終的には、応募する企業や職種が求める英語力のレベルと、自分のスコアを比較して判断することが大切です。
TOEICスコアの有効期限について
TOEICスコアには公式な有効期限は設定されていませんが、一般的には2年以内のスコアが好ましいとされています。これは英語力は使わなければ徐々に低下する可能性があるため、最新のスコアの方が現在の英語力を正確に反映していると考えられるからです。
特に企業側が英語力を重視する場合、古いスコアより最新のスコアを求められることが多いです。採用担当者から「最近のスコアはありますか?」と質問されることもあるでしょう。
ただし、過去のスコアでも記載して構いませんが、その場合は取得年月を正確に記載して、いつの時点でのスコアなのかを明確にすることが大切です。また、面接などで「現在も同等の英語力を維持しているか」という質問に答えられるように準備しておくと良いでしょう。
スコアの有効期限は公式にはありませんが、最新の英語力を示すために定期的に受験することをおすすめします。
TOEICスコア以外で英語力をアピールする方法
TOEICスコア以外にも、履歴書で英語力をアピールする方法はいくつかあります。特に実務で英語を使った経験がある場合は、それを積極的にアピールすると効果的です。
- 自己PR欄での記載
- 履歴書の自己PR欄に「英語力:ビジネスレベル」などと記載できます。この場合、具体的にどのような英語力があるのか(例:英語での会議に参加可能、英文メールのやり取りができるなど)を記載するとより説得力が増します。
- 職務経歴書での記載
- 転職の場合、職務経歴書に英語を使った業務経験を詳細に記載することで、実務での英語力をアピールできます。例えば「海外クライアントとの英語でのミーティングを週1回実施」「英文契約書の作成・確認を担当」など、具体的な業務内容を記載するのが効果的です。
- 他の英語資格の記載
- 留学経験の記載
- 海外留学の経験がある場合は、学歴欄や自己PR欄に記載することで、英語力と異文化理解力をアピールできます。
- 英語を使ったボランティアや趣味活動
- 英語を使ったボランティア活動や趣味(英語の読書会、外国人向けガイドなど)があれば、趣味・特技欄や自己PR欄に記載することも一つの方法です。
これらの方法を組み合わせることで、TOEICスコアだけでなく、多角的に英語力をアピールすることができます。
TOEICスコアの履歴書への記載に関するよくある質問
ここでは、TOEICスコアの履歴書への記載に関するよくある質問と回答をまとめました。
- TOEICのスコアを忘れた場合はどうすればいい?
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TOEICのスコアを忘れてしまった場合は、まずスコアレポート(成績表)を確認しましょう。スコアレポートをなくしてしまった場合は、以下の方法でスコアを再確認できます。
- IIBC(国際ビジネスコミュニケーション協会)の公式サイトにログインして確認する
- IIBCに「成績証明書」の再発行を依頼する(有料)
ただし、成績証明書の再発行は最新の2年分のテスト結果に限られています。それ以前のスコアは確認できない場合があるので注意が必要です。不確かなスコアを履歴書に記載すると、後で証明を求められた際に問題になる可能性があるため、必ず正確なスコアを記載するようにしましょう。
- IPテストのスコアも履歴書に書けるの?
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TOEIC IPテストのスコアも履歴書に記載することができます。ただし、IPテストは企業や学校などの団体内で実施されるテストであり、公式の認定書は発行されません。そのため、公開テストのスコアの方が信頼性が高いとされています。
IPテストのスコアを履歴書に記載する場合は、「TOEIC Listening & Reading IPテスト」と明記し、取得年月とスコアを正確に記載しましょう。なお、応募先企業によっては公開テストのスコアを求められることもあるため、可能であれば公開テストも受験しておくと安心です。
- 英検とTOEICはどちらを履歴書に書くべき?
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英検(実用英語技能検定)とTOEICの両方の資格を持っている場合、どちらを履歴書に記載すべきか迷うことがあるかもしれません。基本的には、両方とも記載することをおすすめします。
英検とTOEICは測定している英語力の側面が異なります。英検はスピーキングやライティングも含めた総合的な英語力を測定しているのに対し、TOEIC L&Rはリスニングとリーディングに特化しています。両方の資格を記載することで、幅広い英語力をアピールできます。
また、応募先企業が特定の資格を重視している場合は、それに合わせて記載を工夫しましょう。例えば、外資系企業ではTOEICが重視される傾向があります。
参考までに、英検とTOEICのレベル比較の目安は以下の通りです。
まとめ

本記事では、TOEICスコアの履歴書への記載について詳しく解説しました。最後に、主なポイントをまとめておきます。
- TOEICスコアは何点からでも履歴書に記載できるが、一般的には600点以上が目安
- 一般企業では650点以上、外資系・グローバル企業では700点以上が評価される
- 就活では550点以上のスコアが評価基準となる
- TOEICには主に「TOEIC Listening & Reading Test」と「TOEIC Speaking & Writing Tests」がある
- 履歴書の資格欄に「取得年月」「正式名称」「スコア」の順で記載する
- 低いスコアでも英語学習への意欲をアピールできる場合があるが、英語力が重視される職種では高いスコアが求められる
- TOEICスコアの公式な有効期限はないが、一般的には2年以内のスコアが好ましい
- TOEICスコア以外にも、実務経験や他の英語資格で英語力をアピールできる
TOEICスコアは就職活動や転職の際に自分の英語力を客観的に示す重要な指標です。本記事の情報を参考に、自分のスコアを適切に履歴書に記載し、効果的にアピールしましょう。また、スコアが目標に達していない場合は、継続的な英語学習を通じてスコアアップを目指すことも大切です。
適切なスコアのアピールが、あなたのキャリアを広げるきっかけになることを願っています。

