近年、TOEICテストの難易度が上がっているという声をよく耳にします。長年受験している方々からは「以前より難しくなった」「同じ英語力なのにスコアが伸びにくくなった」という感想が多く聞かれます。特に英語初学者にとって、この「難化」という状況は不安を感じる要因となっています。TOEICは就職、転職、昇進など多くのシーンで活用される重要な資格試験だけに、この難化傾向が本当に不公平なものなのか、そして対策はどうすべきかを知ることは重要です。
この記事では、TOEICの難化傾向とその理由、そして効果的な対策方法について徹底的に解説していきます。
TOEICの難化傾向とは?最近の変化を解説

TOEICテストは実際に難しくなっています。単なる噂ではなく、多くの受験者やTOEIC指導者が認める事実です。特に長期的に見ると、以前は高得点を取りやすかった問題が減少し、より実践的で複雑な問題が増えていることが分かります。
いつから難化が始まったのか
TOEICの難化傾向は、主に2016年5月の大幅な改定から始まりました。この改定では10年ぶりとなる出題形式の変更が行われ、「簡単な問題が減り難しい問題が増えた」「英文全体を理解していないと解けない問題が増えた」という特徴が顕著になりました。
特にこの時期から、単に単語や文法の知識だけでなく、会話の文脈やその場の雰囲気までしっかり理解していなければ解けない問題が増え、使われる英語表現も教科書的なものだけでなく、実際のビジネスシーンで使われるようなフランクな表現が増えました。
2024年の最新難化傾向
2024年に入ってからさらに難化の傾向が強まっているという声も多く聞かれます。特にPart 7(読解問題)では総語数が増加し、時間内に解き切るのが難しくなっているとの報告があります1。また、文章中の単語レベルも全体的に上がっており、英語初学者にとってはより厳しい状況となっています。
リスニングセクションでも使用される語彙のレベルが上がり、Part 3やPart 4では複数箇所の情報を結び付けなければ正解にたどり着けない問題も出るようになってきました。一方で、問題を解く上で必要な単語のレベル自体は大きく変わっていないという特徴もあります。
TOEICが難化している理由とは
なぜTOEICは難しくなっているのでしょうか?その背景には複数の要因があります。
対策情報の増加による影響
TOEICの対策情報は年々増加しています。参考書やYouTube、ブログなど様々なメディアでTOEIC対策のノウハウが広まり、テクニックだけで点数を上げることができるようになってきました。
これにより、試験の質を保つために難易度を上げる必要性が生じています。単なるテクニックだけで高得点が取れるようになると、本来の目的である「英語コミュニケーション能力の測定」という点が薄れてしまうからです。
受験者のスキル向上とリピーターの増加
TOEICのリピーター受験者が増加していることも難化の一因です。同じパターンの問題に何度も取り組むことで慣れてしまい、実際の英語力以上の高得点が出る可能性があります。
特に日本では、TOEICを何度も受験して点数を上げていく人が多いため、単純に問題のパターンに慣れることで点数が上昇するケースも珍しくありません。こうした状況を考慮し、より本質的な英語力を測るための調整が行われている側面があります。
実際の英語力との乖離を減らす意図
「TOEICの点数と実際の英語力とは異なる」という批判に対応するため、より実践的な英語力を測る問題が増えています。特に、文脈を理解する能力や、複数の情報を統合して判断する能力など、実際のビジネスシーンで必要とされるスキルを測る問題が重視されるようになりました。
また、現代のビジネス環境をより反映した内容にするため、専門的な話題や語彙も増加しています。これは実際のビジネスシーンで使われる英語に近づける意図があると考えられます。
TOEICパート別の難化ポイントと対策法
TOEICの難化傾向は各パートで異なります。ここでは、リスニングセクションとリーディングセクションに分けて、具体的な難化ポイントとその対策法を解説します。
Part 1(写真描写問題)
- 変化: 問題数が10問から6問に減少
- 難化ポイント: 間違いの選択肢が紛らわしくなり、正解を選びにくくなっている
- 対策: 選択肢で使われている単語の意味や動作の主体をしっかり確認すること。現在進行形の受け身表現など紛らわしい表現に注意する

Part 2(応答問題)
- 変化: 問題数が30問から25問に減少
- 難化ポイント: 間接的な応答の問題が難しくなっている
- 対策: 疑問詞をしっかり聞き取り、質問の種類(What, Where, When, How, Whyなど)を把握すること。質問に対する直接的な答えではなく、間接的な答えも理解できるようにする

Part 3(会話問題)
- 変化: 問題数が30問から39問に増加。3人会話の導入。イギリス人女性など様々なアクセントの導入
- 難化ポイント: 複数人の会話を追う必要がある。様々なアクセントへの対応が必要
- 対策: 最新の公式問題集で様々なアクセントに慣れること。3人の会話でも「誰が何を言っているか」を意識して聞く訓練をする

Part 4(説明文問題)
- 変化: 図表問題の導入。様々なアクセントの導入
- 難化ポイント: 図表と説明文を関連付ける必要がある。複数箇所の情報を結びつけなければ答えられない問題の増加
- 対策: グラフや図表を素早く読み取る練習をする。複数の情報を関連づける訓練をする

Part 5(単文穴埋め問題)
- 変化: 問題数が減少
- 難化ポイント: 突発的に難しい回がある
- 対策: 基本的な文法知識の強化。特に品詞の区別や時制の使い分けなど、基礎的な部分をしっかり固める

Part 6(長文穴埋め問題)
- 変化: 問題数が増加
- 難化ポイント: 文脈全体を理解する必要性が高まっている
- 対策: 前後の文章をしっかり読み、文脈から適切な答えを選ぶ練習をする

Part 7(読解問題)
- 変化: 問題数が増加。トリプルパッセージの導入。総語数の増加
- 難化ポイント: 時間内に解き切るのが難しくなっている。文章中の単語レベルが上昇
- 対策: 速読能力を磨く。問題を解く上で重要な部分を見極める練習をする。時間配分を工夫し、全問に目を通せるようにする

TOEICの難化は本当に不公平なのか?
TOEICの難化傾向について「不公平ではないか」という声も聞かれますが、この点についてはどう考えるべきでしょうか。
スコア設計の仕組み
TOEICテストは、英語力が変わらなければ同じスコアが出るように設計されています。難しい問題に当たったとしても、その回全体の難易度調整が行われるため、理論上は英語力が同じであれば同等のスコアが返ってくる仕組みになっています。
つまり、「難化」とは問題そのもののレベルが上がったという意味であり、必ずしもスコアが出にくくなったという意味ではありません。問題が難しくなることで正解数は減るかもしれませんが、スコア換算の際に調整されるのです。
難化と英語力の関係
難化の影響を最も受けやすいのは、基礎的な英語力がある程度身についていて、さらにスコアを伸ばしたいと考えている人々です。初学者にとっては、基礎的な問題は引き続き存在しているため、正しい学習方法で基礎を固めれば着実にスコアを伸ばすことは可能です。
一方で、高得点帯(800点以上)を目指す場合は、単なるテクニックだけでなく、実践的な英語力の向上が求められるようになっています。これは実際のビジネスシーンで英語を使う能力を測るという本来の目的に沿った変化とも言えるでしょう。
英語初学者がTOEIC難化に対応するための効果的な学習法
英語初学者が新しいTOEICの形式に対応し、効果的にスコアを伸ばすための学習法を紹介します。
基礎力強化のための学習方法
初学者にとって最も重要なのは、英語の基礎力をしっかり固めることです。
- 文法の基礎を固める: 「TOEIC L&Rテスト 英文法 ゼロからスコアが稼げるドリル」などの初学者向け教材で基礎から学ぶ
- 基本単語の習得: TOEICでよく出る基本単語(約3000語レベル)を優先的に覚える
- リスニングの基礎トレーニング: 毎日少しずつでも英語を聞く習慣をつける。ディクテーション(聞いた英語を書き取る練習)も効果的
初学者の場合、まずは600点を目標にするのが現実的です。600点は高校卒業レベルの英語力があると評価され、簡単な連絡事項の理解やメールでの応答ができるレベルとされています。
新形式に対応するための練習法
TOEIC新形式に対応するためには、以下の点に注意して練習しましょう。
- 最新の公式問題集を活用する: 最新の傾向を反映した公式問題集(特に公式問題集9など)を使用すること
- 時間制限を設けた練習: 実際のテストと同じ条件(リスニング45分、リーディング75分)で練習する
- Part 7の速読練習: 増加した文章量に対応するため、速読のトレーニングを行う
- 複数の情報を結びつける練習: グラフィック問題など、複数の情報から答えを導き出す問題に慣れる
おすすめの学習リソース
初学者におすすめの学習リソースは以下の通りです。
学習を始める前に、まずは自分の現在の英語力を知ることが重要です。公式のTOEICテストを受けるか、公式問題集のTEST1を本番と同じ条件で解いて、現在のレベルを把握しましょう。
TOEICの難化に関するよくある質問
- TOEICの難化は全てのパートで同じように起きているのですか?
-
いいえ、パートによって難化の程度は異なります。特にPart 7(読解問題)で顕著な難化が見られ、総語数の増加や文章中の単語レベルの上昇が報告されています。また、Part 3(会話問題)ではイギリス人女性など様々なアクセントが導入され、3人会話も登場するなど複雑化しています。一方、Part 5(単文穴埋め問題)については有意な難化は報告されていません。
- 英語初心者ですが、難化したTOEICでも点数を取ることはできますか?
-
はい、可能です。TOEICではすべての問題が難しくなったわけではなく、基礎的な問題も引き続き存在しています。しっかりと基礎を勉強すれば、初心者でもスコアを伸ばすことができます。まずは600点を目標にして、基礎的な文法と単語の学習から始めるとよいでしょう。
- 韓国でもTOEICは難化しているのですか?
-
興味深いことに、日本と韓国ではTOEICの難易度の変化が異なる傾向を示しています。韓国では現行形式になった2016年が最も難しく、その後易化傾向を辿っています。一方、日本では2016年が最も易しく、その後難化傾向を見せています。将来的には日本の難易度も韓国で最も難しかった時期の水準まで上がる可能性があるという見方もあります。
- TOEICの難化に対応するために、特に強化すべき能力は何ですか?
-
難化傾向に対応するためには、特に以下の能力を強化することをおすすめします。
- 速読能力:特にPart 7の文章量増加に対応するため
- 聴解力:様々なアクセントや3人会話などの複雑なリスニングに対応するため
- 文脈理解力:文章全体の意味を理解し、複数の情報を関連づける能力
- 語彙力:特に問題と直接関係ない部分でも難しい単語が増えているため
- TOEIC以外の英語試験も検討すべきでしょうか?
-
目的によっては他の試験も検討する価値があります。例えば、スピーキングやライティング能力も測定したい場合は「TOEIC Speaking & Writing Tests」も受験することを検討してもよいでしょう。また、学術英語を重視する場合はTOEFLやIELTS、実用的な英語力を測定したい場合は英検などの選択肢もあります。あなたの目標や用途に合わせて最適な試験を選ぶことをお勧めします。
まとめ

TOEICの難化傾向について詳しく解説してきました。最後に、この記事のポイントをまとめます。
- TOEICは2016年5月の改定以降、難化傾向にあり、2024年にはさらに難化している
- 難化の主な理由は、対策情報の増加、受験者のスキル向上、実際の英語力との乖離を減らす意図がある
- 難化は不公平ではなく、英語力が変わらなければ同じスコアが出るように設計されている
- 特にPart 7(読解問題)での難化が顕著で、総語数の増加や単語レベルの上昇が見られる
- リスニングセクションでは、3人会話の導入や様々なアクセントへの対応が求められるようになっている
- 英語初学者は基礎力を固めることで着実にスコアを伸ばすことができる
- 効果的な対策としては、最新の公式問題集の活用、速読練習、様々なアクセントに慣れる練習などがある
- 初学者はまず600点を目標にし、段階的にスコアアップを目指すのが現実的
TOEICの難化は確かに挑戦的ですが、適切な対策と継続的な学習によって克服可能です。この記事で紹介した情報と戦略を活用して、ぜひTOEICに挑戦してみてください。難しくなったTOEICで高得点を取ることは、実践的な英語力を身につけたという大きな証明になるはずです。