2024年7月に発売された「公式TOEIC Listening & Reading問題集11」を実際に解いてみました。TOEICの公式問題集は、本番の試験と同じプロセスで作られるため、試験対策として最も信頼性の高い教材の一つです。今回の問題集11は、表紙が薄緑色に変わり、音声がCDからabceedのダウンロード形式になるなど、いくつかの変更点があります。
この記事では、実際に解いた経験から各パートの難易度や特徴、初学者の方に向けた効果的な活用法についてご紹介します。
公式TOEIC問題集11の概要と特徴

公式問題集11は、テスト2回分(計400問)を収録しており、本番同様の環境でTOEIC対策ができる貴重な教材です。ETSが作成した公式教材なので、本番のテストを正確に再現しています。
特徴としては、以下の点が挙げられます。
- 本番と同じ公式スピーカーによるリスニング音声
- TEST1とTEST2で色分けされた見やすいレイアウト
- 充実した解説と重要語句の意味の掲載
- スマートフォンやPCにダウンロードして学習できる音声機能
- 参考スコア範囲の換算表で自分のレベルがわかる
今回の問題集11では、従来のCD付属がなくなり、abceedというプラットフォームで音声を聴く形式に変更されています(要会員登録・無料)。これにより、スマートフォンやPCで手軽に音声学習ができるようになりました。
TOEIC公式問題集11のリスニングセクションの難易度分析
リスニングセクションは全般的に「正確な音の聞き取りとスピーディな意味理解」の重要性が増しています。各パートの難易度を詳しく見ていきましょう。
Part1の難易度と特徴
Part1は写真描写問題ですが、全体的に「やや簡単」と感じました。読み上げられる文章にひねった内容はなく、音声をしっかり聞き取れれば全問正解も可能です。
例えば、写真の内容を直接的に表現する選択肢が多く、消去法をあまり使わなくても答えを選びやすいと感じました。ただし、中には聞き慣れない表現もあるので、しっかり音声を聞いて慣れておくことが大切です。
目標スコア別の目安
- スコア600点を目指す方:5問正解
- スコア700点を目指す方:5問正解
- スコア800点以上を目指す方:全問正解が望ましい
初心者の方でも比較的取り組みやすいパートだと言えるでしょう。

Part2の難易度と特徴
Part2は応答問題で、「普通〜やや簡単」という印象でした。ただし、最近のTOEICの傾向にある「想定外の答えが正答になる」問題がいくつかあります。
例えば以下のような問題パターンがあります。
- 「〜時までにxxに到着してください」という質問に「明日は出張です」と答える
- 「会議に出席しますか?」というYes/No質問に「今日は顧客対応があります」と直接的な回答をしない
このような少し捻った問題が複数あったため、油断していたり、正確に聞き取れないと正答できない場合があります。また、豪州英語の「data」の発音(「ダータ」のように聞こえる)や、「supply order(備品の注文)」など、馴染みのない表現への反応力も必要です。
目標スコア別の目安
- スコア700点を目指す方:18問以上正解
- スコア800点以上を目指す方:21問以上正解

Part3の難易度と特徴
Part3は会話問題で、「普通〜やや難しい」という印象でした。特に以下のような点で引っかかる可能性があります。
- 「shelf life(賞味期限)」などの専門用語
- 「fern(シダ)」や「peace lilies(平和のユリ)」など頻出ではない単語
- 文脈が想像しづらい会話
- 「the more, the more構文」などの文法パターンへの反応
- オーストラリア英語と英国英語の組み合わせによる聞き取りづらさ
- 長文での「algae(藻)」などの馴染みのない単語
これらの問題では、単に単語を聞き取るだけでなく、会話の文脈を素早く把握する能力が求められます。特に、問題文の先読みをしっかり行い、何について話されるのかを予測しておくことが重要です。
目標スコア別の目安
- スコア700点を目指す方:29問以上正解
- スコア800点以上を目指す方:35問以上正解

Part4の難易度と特徴
Part4は説明文問題で、こちらも「普通〜やや難しい」と感じました。ビジネス以外の文脈の内容だと、イメージがつきづらい問題もあります。
全体的には問題の先読みができていて、内容がしっかり聞ければ解ける問題が多かったですが、特に初心者の方は説明文の長さと情報量に圧倒されがちです。英語を聞きながら重要情報をピックアップする訓練が必要です。
目標スコア別の目安
- スコア700点を目指す方:21問以上正解
- スコア800点以上を目指す方:24問以上正解
リスニング全体として、単なる「音の聞き取り」ではなく、「意味の理解」と「素早い情報処理能力」が問われる傾向が強くなっています。初学者の方は、まずは音声を何度も聞いて慣れることから始めると良いでしょう。

Part5の難易度と特徴
Part5は短文穴埋め問題で、全体的に「やや簡単」という印象でした。品詞問題が30問中9問と約1/3を占めており、基本的な文法知識があれば解ける問題が多いです。
語彙選択に関しても、キクタン600・キクタン800程度の単語力があれば対応できる問題が多かったです。ただし、一部では空欄前を修飾するのか、空欄後を修飾するのかで悩むポイントもありました。
初学者の方は、まずは品詞問題(名詞、動詞、形容詞、副詞の区別)から対策していくと効率的です。これだけでPart5の約1/3をカバーできます。
目標スコア別の目安
- スコア700点を目指す方:21問以上正解
- スコア800点を目指す方:24問以上正解

Part6の難易度と特徴
Part6は長文穴埋め問題で、こちらも「やや簡単」と感じました。全体的に素直な問題が多く、文の意味と流れが理解できていれば、スムーズに解ける問題が大半でした。
語彙選択問題も、文脈からどの単語が適切かを判断しやすいものが多く、挿入文選択も前後の文とのつながりを理解できれば難しくありません。
ただ、初学者の方は長文に慣れていないことが多いので、まずは文の構造を理解し、文と文のつながりを意識して読む練習が必要です。
目標スコア別の目安
- スコア700点を目指す方:12問正解
- スコア800点を目指す方:14問以上正解

Part7の難易度と特徴
Part7は長文読解問題で、「普通〜やや難しい」という印象でした。読む量が多いことに加え、文章によっては内容が掴みづらく、また答えが文中に明示されていない問題も複数あります。75分の制限時間内で全問正解するのは難しいと感じました。
特にシングルパッセージでは、文章量は普通ですが、語彙レベルが高めで、TOEICの基本的な学習だけでは覚えることが難しい単語もちらほら見られました。この問題集11全体を通じて最も印象的だったのは、語彙のバリエーションの豊富さです。
ダブルパッセージやトリプルパッセージでは、特に記事形式の文章が含まれると難易度が上がります。読むだけでも一苦労ですが、その中から答えを探すのも労力を要します。
初学者の方には特に難しいパートかもしれませんが、段階的に取り組むことをお勧めします。まずは短い文章から始めて、徐々に長文に慣れていくアプローチが効果的です。
目標スコア別の目安
- スコア700点を目指す方:37問以上正解
- スコア800点以上を目指す方:43問以上正解

TOEIC公式問題集11の初心者におすすめの活用法
公式問題集11を初心者の方が効果的に活用するためのおすすめの方法をご紹介します。
リスニング対策の効果的な方法
- 音声の繰り返し視聴:まずは全体の雰囲気をつかむために音声を聴き、次に問題を解きながら聴き、最後に解答・解説を見ながら聴く、という3段階のアプローチが効果的です。
- シャドーイング練習:音声を聴きながら、少し遅れて同じように発音する練習をすると、英語の音やリズムに慣れることができます。
- キーワードをメモする訓練:リスニング中に重要なキーワードをメモする練習をすると、情報処理能力が向上します。
- Part別の対策
- Part1:写真を見て予測してから聴く
- Part2:さまざまな応答パターンを覚える
- Part3・4:問題文を先読みして予測してから聴く
リーディング対策の効果的な方法
- 語彙力強化:Part5・6・7全てにおいて語彙力が重要です。キクタン600から始めて、徐々にレベルを上げていくと良いでしょう。
- Part5の品詞問題対策:品詞問題は約1/3を占めるため、名詞・動詞・形容詞・副詞の基本的な見分け方を押さえておくことが大切です。
- Part7の時間配分:時間が足りなくなる方が多いので、シングル→ダブル→トリプルの順に解く、あるいは問題を先読みしてから本文を読むなどの工夫が必要です。
- 復習方法
- 間違えた問題だけでなく、正解した問題も含めて全ての問題を復習する
- 分からない単語は必ずチェックし、カードなどにまとめておく
- 文法的に理解できなかった文は構造を分析して理解する
全体的な学習サイクル
- 1日目:TEST1を時間を計って解く
- 2日目:TEST1の解答・解説を読みながら復習
- 3日目:特に難しかったパートを集中的に復習
- 4日目:TEST2を時間を計って解く
- 5日目:TEST2の解答・解説を読みながら復習
- 6日目:特に難しかったパートを集中的に復習
- 7日目以降:定期的に音声を聴き直し、苦手な問題に取り組む
このサイクルを繰り返すことで、効率的に実力を伸ばすことができます。
TOEIC公式問題集11に関するよくある質問
- 公式問題集11はどんな人におすすめですか?
-
TOEICの受験を控えている方全員におすすめです。特に初めてTOEICを受ける方や、600〜800点を目指している方にとって、本番の雰囲気や難易度を知る絶好の教材です。ただし、完全な英語初心者の方にはやや難しいかもしれません。その場合は、まず基礎的な文法や語彙の学習から始めることをお勧めします。
- 公式問題集11の音声はどうやって聴けますか?
-
公式問題集11からはCDが付属せず、abceedというプラットフォームで音声を聴く形式に変更されました。会員登録(無料)が必要ですが、スマートフォンやPCに音声をダウンロードして、いつでも繰り返し聴くことができます。
- 何回繰り返し解くべきですか?
-
少なくとも2〜3回は繰り返し解くことをお勧めします。1回目は時間を計って実際のテストのように解き、2回目以降は解説をじっくり読みながら復習することが効果的です。特に間違えた問題や自信がなかった問題は、完全に理解できるまで何度も取り組むと良いでしょう。
- 公式問題集11だけで対策は十分ですか?
-
公式問題集はとても質の高い教材ですが、これだけで対策するのは十分とは言えません。特に初心者の方は、基礎的な文法書や単語帳、リスニング強化のための教材なども併用すると効果的です。公式問題集は、学習の総仕上げや本番の予行演習として活用するのが理想的です。
- 公式問題集と本番のTOEICの難易度差はどのくらいですか?
-
多くの受験者の経験から、公式問題集11は本番のTOEICよりも約50点難しいと言われています。つまり、公式問題集11で770点を取った場合、本番では820点程度が期待できる可能性があります。ただし、これはあくまで目安であり、個人差や試験回によって異なる場合があります。
まとめ

公式TOEIC Listening & Reading問題集11についてのレビューをまとめると、以下のポイントが挙げられます。
- 全体的な難易度:やや難しめ(本試験より約50点低いスコアになる傾向)
- リスニングの特徴:正確な音の聞き取りとスピーディな意味理解が重要
- リーディングの特徴:語彙レベルが高めで、スピーディな読解力が求められる
- Part別の難易度:
- Part1:やや簡単
- Part2:普通〜やや簡単(想定外の応答に注意)
- Part3:普通〜やや難しい
- Part4:普通〜やや難しい
- Part5:やや簡単(品詞問題が約1/3)
- Part6:やや簡単
- Part7:普通〜やや難しい(時間との戦い)
- 初心者向けの活用法:繰り返し音声を聴く、単語力を強化する、時間配分を工夫する
- 復習の重要性:間違えた問題だけでなく、全ての問題を丁寧に復習することが効果的
公式TOEIC問題集11は、2024年7月に発売された最新の公式教材として、現在のTOEIC試験の傾向をよく反映しています。本番さながらの環境で練習できるため、試験対策として非常に価値のある教材です。
初学者の方は難しく感じるかもしれませんが、基礎から段階的に学習し、この教材を繰り返し活用することで、確実にスコアアップを目指すことができるでしょう。