「彼はボールを投げました」を英語で表現するとき、「He threw the ball.」と言いますね。では「ボールが投げられました」というように、動作を受ける側に焦点を当てるとき、英語ではどう表現するのでしょうか?これが「受け身(受動態)」と呼ばれる表現です。
英語の文法の中でも特に重要な受動態について、基本から応用まで、わかりやすく解説していきます。
英語の受け身(受動態)とは?基本概念を理解しよう

受動態(Passive Voice)とは、文の主語が動作を「する」のではなく、動作を「される」という形の文のことです。通常の能動態(Active Voice)では「誰かが〜する」と表現するのに対し、受動態では「〜が誰かによってされる」という形になります。
例えば次の文を見てみましょう。
- 能動態:The boy broke the window.(少年が窓を割った)
- 受動態:The window was broken by the boy.(窓が少年によって割られた)
この二つの文は同じ出来事を表していますが、焦点が異なります。能動態では「少年」に焦点が当たっていますが、受動態では「窓」に焦点が当たっています。英語の受動態は、このように主語と目的語の関係を入れ替えて表現するときに使われます。
受動態を使うと、動作を受ける側や結果に焦点を当てることができ、時には動作主(誰がしたか)を省略することもできるので、様々な状況で便利な表現方法となります。
受動態の作り方:基本のステップ
受動態の文を作るのは、実はとても規則的で簡単です。基本的な作り方を3つのステップで説明します。
ステップ1:能動態の目的語を主語にする
能動態の文の目的語(動作を受けるもの)を取り出し、それを受動態の文の主語にします。
- 能動態:My mother made this cake.(私の母がこのケーキを作った)
- 受動態の主語:This cake(このケーキ)
ステップ2:適切な形のbe動詞を使う
時制に合わせた適切な形のbe動詞(am, is, are, was, were, been)を使います。
ステップ3:動詞を過去分詞にする
能動態で使われていた動詞を過去分詞の形にします。
- 動詞 make(作る)の過去分詞はmade
- 完成した受動態:This cake was made by my mother.(このケーキは私の母によって作られた)
日本語の「〜される」に当たる部分は、英語では「be動詞 + 過去分詞」という形で表します。
またbの後ろに「by + 動作主」を加えると、誰によって行われたかを示すことができます。
例文
- The letter was written by Tom.(その手紙はトムによって書かれました)
- English is spoken in many countries.(英語は多くの国で話されています)
- The room is cleaned every day.(その部屋は毎日掃除されています)
- These computers were made in Japan.(これらのコンピュータは日本で作られました)
能動態と受動態の違いと使い分け
能動態と受動態、どちらを使うべきか迷うことがあるかもしれません。
両者の主な違いと使い分けのポイントを見ていきましょう。
違い1:焦点の当て方
能動態は「誰が何をしたか」に焦点を当て、受動態は「何が(誰によって)されたか」に焦点を当てます。
- 能動態:The teacher gave me a book.(先生は私に本をくれました)
- 受動態:I was given a book by the teacher.(私は先生に本をもらいました)
違い2:文の構造
能動態は「主語 + 動詞 + 目的語」の構造ですが、受動態は「主語(元の目的語) + be動詞 + 過去分詞 + by + 動作主(元の主語)」という構造になります。
違い3:動作主の扱い
能動態では動作主が主語となり、文中で重要な位置を占めます。
一方、受動態では動作主はbyの後に置かれるか、完全に省略されることもあります。
- 能動態:Someone stole my bike.(誰かが私の自転車を盗みました)
- 受動態:My bike was stolen.(私の自転車は盗まれました)
受動態を使うべき場面
以下のような場面では、受動態を使うとより自然な表現になります。
動作を受けるものを強調したいとき
- The Mona Lisa was painted by Leonardo da Vinci.
(モナリザはレオナルド・ダビンチによって描かれました)
動作主が不明、または重要でないとき
- My wallet was stolen yesterday.
(私の財布は昨日盗まれました)
科学的な文書や客観的な報告書など、公式な文書で
- The experiment was conducted under strict conditions.
(実験は厳格な条件下で行われました)
動作主を明示したくないとき
- Mistakes were made during the project.
(プロジェクト中にミスが発生しました)
能動態と受動態の選択は、何に焦点を当てたいかによって決まることが多いです。
英語の自然な表現のためには、両方をうまく使い分けることが大切です。
受動態が特に使われる場面と理由
受動態は英語で頻繁に使われる表現ですが、特に以下のような場面でよく使われます。
その理由と共に見ていきましょう。
新聞記事やニュース報道
ニュースでは事件や出来事自体に焦点を当てることが多く、受動態がよく使われます。
例文
- A new shopping mall was opened in our city yesterday.
(昨日、私たちの街に新しいショッピングモールがオープンしました) - Five people were injured in the accident.
(事故で5人が負傷しました)
科学的な記述や手順の説明
科学的な文章や実験の手順などでは、客観性を保つために受動態がよく使われます。
例文
- Water is boiled at 100 degrees Celsius.(水は摂氏100度で沸騰します)
- The samples were collected from various locations.(サンプルは様々な場所から収集されました)
フォーマルな文書や公式な文章
ビジネス文書や学術論文などのフォーマルな文章では、受動態を使うことで客観的で丁寧な印象を与えることができます。
例文
- Applications must be submitted by Friday.(申込書は金曜日までに提出されなければなりません)
- The meeting was postponed due to bad weather.(会議は悪天候のため延期されました)
動作主が不明または重要でない場合
誰が行ったかわからない、あるいは誰が行ったかを明示する必要がない場合に受動態が使われます。
例文
- My bicycle was stolen last night.(私の自転車は昨夜盗まれました)
- The window was broken during the storm.(窓は嵐の間に壊れました)
責任の所在をぼかしたい場合
誰が行ったかを明確にしたくない場合、受動態を使うことでその情報を省略できます。
例文
- Mistakes were made in the calculation.(計算にミスがありました)
- The deadline was missed.(締め切りに間に合いませんでした)
このように、受動態は単なる文法的な選択肢ではなく、コミュニケーション上の戦略として使われることも多いのです。
状況に応じて能動態と受動態を適切に使い分けることで、より効果的な英語表現ができるようになります。
様々な時制における受動態の形
受動態は様々な時制で使うことができます。ここでは主な時制における受動態の形を見ていきましょう。
現在形の受動態
現在形の受動態は「am/is/are + 過去分詞」の形で表します。
例文
- This book is read by many students.(この本は多くの学生に読まれています)
- These shoes are made in Italy.(これらの靴はイタリアで作られています)
- I am invited to parties every month.(私は毎月パーティーに招待されます)
過去形の受動態
過去形の受動態は「was/were + 過去分詞」の形で表します。
例文
- The letter was sent last week.(その手紙は先週送られました)
- They were asked many questions.(彼らは多くの質問をされました)
- The house was built in 1990.(その家は1990年に建てられました)
現在進行形の受動態
現在進行形の受動態は「am/is/are + being + 過去分詞」の形で表します。
例文
- The car is being repaired now.(その車は今修理されています)
- The roads are being cleaned by workers.(道路は作業員によって掃除されています)
- New houses are being built in our neighborhood.(私たちの近所で新しい家が建てられています)
過去進行形の受動態
過去進行形の受動態は「was/were + being + 過去分詞」の形で表します。
例文
- When I arrived, dinner was being prepared.(私が到着したとき、夕食が準備されていました)
- The children were being taught English.(子供たちは英語を教えられていました)
現在完了形の受動態
現在完了形の受動態は「have/has + been + 過去分詞」の形で表します。
例文
- The window has been broken since yesterday.(窓は昨日から壊れたままです)
- These letters have been written by my grandmother.(これらの手紙は私の祖母によって書かれました)
- I have been invited to the party.(私はそのパーティーに招待されています)
過去完了形の受動態
過去完了形の受動態は「had + been + 過去分詞」の形で表します。
例文
- The work had been finished before I arrived.(私が到着する前に仕事は終えられていました)
- She found that her bag had been stolen.(彼女は自分のバッグが盗まれていたことに気づきました)
未来形の受動態
未来形の受動態は「will + be + 過去分詞」の形で表します。
例文
- The concert will be held next Sunday.(コンサートは来週の日曜日に開催されます)
- You will be informed of the results soon.(結果はすぐにあなたに通知されるでしょう)
これらの様々な時制の受動態をマスターすることで、英語での表現の幅が広がります。
状況に応じて適切な時制の受動態を使い分けることが大切です。
受動態を使った重要表現と慣用句
受動態は単に文の構造を変えるだけでなく、特定の表現や慣用句でもよく使われます。
ここでは、受動態を使った重要な表現をいくつか紹介します。
「〜と言われている」: be said to
何かについての一般的な意見や評判を表すときに使われます。
例文
- He is said to be very rich.(彼はとても裕福だと言われています)
- This mountain is said to be haunted.(この山は幽霊が出ると言われています)
「〜することになっている」: be supposed to
義務や予定、一般的な期待を表すときに使われます。
例文
- Students are supposed to wear uniforms.(生徒は制服を着ることになっています)
- The train is supposed to arrive at 7:00.(電車は7時に到着することになっています)
「〜に興味がある」: be interested in
何かに対する興味や関心を表します。
例文
- I am interested in learning English.(私は英語を学ぶことに興味があります)
- She is interested in old movies.(彼女は古い映画に興味があります)
「〜で知られている」: be known for/as
ある特徴や特性で有名であることを表します。
例文
- Japan is known for its technology.(日本はその技術で知られています)
- He is known as a great teacher.(彼は素晴らしい教師として知られています)
「〜で作られている」: be made of/from
物の材料や構成要素を表します。
例文
- This table is made of wood.(このテーブルは木で作られています)
- Cheese is made from milk.(チーズは牛乳から作られています)
「〜で覆われている」: be covered with/in
何かで覆われている状態を表します。
例文
- The mountains are covered with snow.(山々は雪で覆われています)
- His hands were covered in paint.(彼の手はペンキで覆われていました)
「〜で満たされている」: be filled with
何かがいっぱい詰まっている状態を表します。
例文
- The room was filled with people.(部屋は人でいっぱいでした)
- Her eyes were filled with tears.(彼女の目は涙でいっぱいでした)
これらの表現は日常会話やライティングでよく使われるものです。
受動態を使った慣用表現をマスターすることで、より自然で豊かな英語表現ができるようになります。
英語の受け身(受動態)に関する練習問題20選
英語の受動態をマスターするために、以下の問題を解いてみましょう。
様々なレベルの問題を用意しましたので、ぜひチャレンジしてください。
- 次の文を受動態に書き換えなさい
They clean this room every day. - 次の文を能動態に書き換えなさい
This book was written by my father. - 次の文の空欄に適切な形の動詞を入れなさい
The letter _____ (send) yesterday. - 次の文の空欄に適切な形の動詞を入れなさい
These computers _____ (make) in Japan. - 次の文を受動態に書き換えなさい
Someone stole my bicycle last night. - 次の文の誤りを訂正しなさい
The window broken by the strong wind. - 次の文を受動態に書き換えなさい
The teacher is explaining the problem now. - 次の文を現在完了形の受動態に書き換えなさい
They have cleaned the room. - 次の文の空欄に適切な前置詞を入れなさい
The book was written _____ a famous author. - 次の文を受動態に書き換えなさい
People speak English in many countries. - 次の文の空欄に適切な形の動詞を入れなさい
A new school _____ (build) in our town next year. - 次の文を受動態に書き換えなさい
You must submit the report by Friday. - 次の文の空欄に適切な受動態の形を入れなさい
The children _____ (take) to the zoo yesterday. - 次の文を過去進行形の受動態に書き換えなさい
They were repairing the car when I arrived. - 次の文の空欄に適切な形の動詞を入れなさい
I believe that the problem _____ (solve) soon. - 次の2つの文をつなげて、1つの受動態の文にしなさい
Someone invited me to the party. It surprised me. - 次の文を受動態に書き換えなさい
We have not finished the work yet. - 次の文の空欄に適切な形の動詞を入れなさい
The grass _____ (cut) every week during summer. - 次の文の主語を変えずに受動態に書き換えなさい
They gave him a present. - 次の日本語を英語の受動態で表現しなさい
「この橋は100年前に建てられました」
受け身(受動態)に関するよくある質問
英語の受動態について、よく質問される内容をQ&A形式でまとめました。
- 受動態と能動態、どちらを使うべきですか?
-
どちらが「正しい」というわけではなく、状況や伝えたい内容によって使い分けます。動作を行う人(動作主)を強調したい場合は能動態を、動作を受ける人やものを強調したい場合や、動作主が不明・重要でない場合は受動態を使うとよいでしょう。
- 受動態で動作主を省略してもいいですか?
-
はい、受動態では動作主(by以下の部分)を省略することがよくあります。特に動作主が不明であったり、明らかであったり、または重要でない場合に省略します。
例えば、「My bike was stolen.(私の自転車は盗まれました)」のように、誰が盗んだかわからない場合は動作主を省略します。 - すべての動詞を受動態にできますか?
-
すべての他動詞(目的語を取る動詞)は基本的に受動態にできますが、自動詞(目的語を取らない動詞)は受動態にできません。また、状態を表す動詞(be, seem, belong, など)も通常は受動態にしません。
- 「by」以外の前置詞が使われることはありますか?
-
はい、動詞によっては他の前置詞が使われることがあります。例えば「be known for(〜で知られている)」「be interested in(〜に興味がある)」「be covered with(〜で覆われている)」など、特定の前置詞とセットで使われる表現があります。
- 受動態は日常会話でよく使われますか?
-
フォーマルな文書や学術的な文章に比べると、カジュアルな日常会話では受動態の使用頻度は低くなります。しかし、状況によっては会話でも自然に受動態が使われます。特に動作主が不明な場合(「My wallet was stolen.」など)や、一般的な事実を述べる場合(「English is spoken in many countries.」など)には会話でも使われます。
- 三人称単数現在形の受動態はどうなりますか?
-
三人称単数現在形の受動態は「is + 過去分詞」となります。例えば、「He writes a letter.」(彼は手紙を書きます)の受動態は「A letter is written by him.」(手紙は彼によって書かれます)となります。受動態では主語が変わるため、be動詞は新しい主語に合わせた形になります。
まとめ

英語の受動態(受け身)は、動作を受ける側に焦点を当てるための重要な文法表現です。この記事では、受動態の基本概念から様々な時制での使い方、特殊な表現まで幅広く解説しました。
受動態の基本形は「be動詞 + 過去分詞(+ by + 動作主)」です。時制によってbe動詞の形が変わり、現在形、過去形、進行形、完了形など、様々な時制で受動態を使うことができます。
受動態を使うべき主な場面は以下の通りです。
- 動作を受けるものを強調したいとき
- 動作主が不明または重要でないとき
- フォーマルな文書や客観的な記述
- 責任の所在をぼかしたいとき
また、「be said to」「be known for」「be interested in」など、受動態を使った重要な表現も多くあります。これらは日常会話やライティングでよく使われるものです。
受動態と能動態は、どちらが正しいというわけではなく、状況や伝えたい内容によって使い分けることが大切です。両方の形をマスターして、適切に使い分けられるようになりましょう。
英語の文法の中でも特に重要な受動態をしっかり理解して、より豊かな英語表現ができるようになりましょう。練習問題を通じて理解を深め、実際の会話やライティングで積極的に使ってみてください。
受動態を使いこなせるようになれば、英語での表現の幅が大きく広がります。この記事がみなさんの英語学習の助けになれば幸いです。